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アラン戦記  作者: 夢物語草子


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同盟暦512年・三姉妹の拵え編4

ポーとレオリックス、クーリーの三人は腹を満たし、薬草茶を啜りながら話し合う。

「母様会うの明日になる」

「"牙の牛部族(クサリク)"の女巨人に会うのかぁ~……マジで怖いんだけど……」

「レオがそこまで怖がるなんて初めての見た」

「そりゃトラウマにもなるさ。棍棒を振り回して騎士を薙ぎ倒すわ、二メートル以上ある巨躯は迫力満点。伝説の怪物と遭遇した気分だったぜ」

「母様は最強の戦士。里でも勝てる奴いない。クーも里にいたとき毎日ボコボコにされた。おかげでクー強くなった」

「だとさ。頑張れよポー」

「お前も付き合うんだよ」

ポーは乾し葡萄を口に放り込む。

「クー」

「なに?」

「牙の牛部族は白雪国をどう思ってる?」

「んー…。好き、嫌い、どうでもいい、色んな人いる」

「もし、他国が攻めてきた時どっちに味方すると思う?」

「お、おいポー」

ポーの危うい問い掛けにレオリックスが止めに入るも、クーリーは気にした様子はない。

牙の牛部族と白雪国の関係は、休戦協定である。

ハッキリ言って友好関係とは言い難い。

それは幾度となく武力衝突が起きている事実が証明している。

今は亡きダミートリアス王は平和路線を選び、外国特使を派遣して友好関係の構築に尽力してきた。

しかし先代の王の時代は武力による征服の道を選び、七年にも及ぶ戦争を続けた。

そのため、牙の牛の部族を含めた多くの北部部族は白雪国に遺恨を抱く者が少なからずいる。

「クーたちは戦士。家族のために戦う。仲間のために戦う。友のために戦う」

「僕もクーと戦いたくない」

「ポーは戦士クーの友」

あざらしの頭の骨をしゃぶりながらクーリーははっきり答え、ポーは微笑んだ。

「それにポー、クーの嫁」

ブホっとポーとレオリックスは薬草茶を吹き出した。

「よ、嫁?」

「いやなんでだよ!普通は婿だろ?というかお前ら、いつの間にそんな仲に…」

「誤解だ!」

「結婚前に戦う。勝ったやつ婿、負けたやつ嫁になる。勝つ威張れる。負ける従う決まり」

「ていうか僕は負けるの?」

「おめでとう!親友!アーネストと姫様に刺されんなよ」

「冗談でも笑えない…」

アーネストもベアトリスも意外と嫉妬深く独占欲が強い面があることをポーは理解していた。

そこにクーリーがいつの間にか火酒を持ってきており、カイピロスカ(ライムと砂糖を混ぜ、氷と火酒を注いだもの)を作り始めた。

「お!」

「飲む。うるさいのいない」

元々は暖かい南の飲み方だが、ここに蜂蜜とオレンジを加えたものを北の部族は好んで飲む。

大部族軍時代に南北に分かれた時の名残ともいわれている。

「それじゃ遠慮なく」

「おう」

「乾杯する!」

三人は出来上がったカイピロスカを遅くまで楽しんだのだった。

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