同盟暦512年・三姉妹の拵え編2
どうしたものかと馬車から事の成り行きを見ていたポー達に、オーリー・フー(男・46歳)が歩み寄る。
「クーリーの客人よ。よく来られた」
「あなたは?」
「儂はオーリー・フー。石門の番人をしておる。あちらの若いのは戦士ユーリー・ユーだ」
穏やかに挨拶するオーリーにポー達も馬車を下りて礼を返した。
「白雪国の方よ。ここには…」
「「クシュン!」」
とベアトリスとアーネストがくしゃみをした。
山岳地帯の強烈な寒風は、寒さに慣れているベアトリスとアーネストにとっても辛かった。
「これはいかん。里に案内しましょう。まずは身体を休めてから長に挨拶してもらうとしましょう」
未だに戦い続けるクーリーとユーリーに「先に行くぞ」と声をかけてポー達を里へ案内した。
断崖絶壁に立つ里の村。
氷霧に包まれる天空の村は独特の神秘的な雰囲気だった。
クーリーと同様の部族の衣装を着た人々は入り組んだ建築物の中を身軽に自由に動き回っている。
「ひ…お嬢様、あたしに掴まって下さい」
「ご…ごめんなさい…」
狭く細く迷路のように入り組んだ道は実に歩きづらく難しい。
「そこを曲がれば旅人用の家です」
独特な道に悪戦苦闘しながらポー達は宿舎に辿り着いた。
扉を開け中に入ると、すでに室内は暖められていた。
中央に暖炉があり、炭がくべられ爆ぜていた。
ポー達は絨毯の上に倒れ込むように座る。
「食い物と飲み物を用意させます。それじゃ私は石門に戻ります」
「ありがとうございます」
「長のところにはクーリーが案内するでしょう。……気を付けて」
オーリーが出て行き、ポー達はようやくくつろぐ事ができた。
「ひ…お嬢様、もっと火の近くに。手が冷えています」
「アーネストの手も冷たいですよ」
「あたしはへっちゃらです」
「皆、これを」
雪で濡れた外套を脱いで壁に干し、ポーは手拭いと着替えを配った。。
ベアトリスとアーネストは別室に移動して、ポーとレオリックスはその部屋で濡れた服を脱いで、別の服に着替える。
辺境の地では些細な風邪でも命に関わる危険がある。
そのため、家に帰れば服はすぐに脱いで着替えて風邪の予防とするのだ。




