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アラン戦記  作者: 夢物語草子


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同盟暦512年・三姉妹の拵え編1

ロブホークの町を出発して冰剣砦を東に迂回して進むと山岳地帯が広がる。

"北の尖り槍"と呼ばれる山岳地帯は、氷柱は長い年月をかけて磨かれ、芸術作品のように壮麗だ。

この氷柱は不純物がとても少なく、溶かせば透明感のあるまろやかな喉越しの水となる。

昔から酒造りに利用され、王侯貴族がこぞって買いたがる最高級の蒸留酒(ウイスキー)が製造されている。

四年前に起きた問題も、この氷柱の使用を巡っての争いだ。

冬の獅子のガレス隊にとっては災難でしかなかったが。

旅を続けて十一日目、御者台に座るポーの膝の上に座るクーリーが歓声を上げた。

「見えたー!」

指差した先には巨大な石門。

牛の頭をした二足歩行の像が両脇に置かれている。

「うわー…すごい」

「あれは"牛頭の息子神(アステリオス)"です。牙の牛部族が奉じる守り神ですよ」

「あーあーあー…もう二度と来ないって誓ったのに…」

レオリックスは荷台の奥に身を潜めて頭を抱えていた。

「クー。勝手に門を通って平気?」

「駄目。門の前で止まる。鈴鳴らす。これ」

クーリーは耳飾りに付いている銀製の鈴を外すと、馬車から飛び降り、石門の手前で鈴を振って鳴らした。

鈴は力強い音を響かせて一帯に広がっていく。

そしてしばらくすると、石門から二人の男が歩いて現れた。

一人は青年、一人は壮年の男だ。

「石門を叩いたのは誰だ?」

ユーリー・ユー(男・19歳)は警戒心を露わにポー達を睨んだ。

「クーだよ」

「なに?……お前、クーリー・クーか?」

ユーリーはクーリーの顔を見て、頭から爪先まで見下ろして困惑の表情を浮かべた。

「本当にクーか?」

「クーだ」

「ちび過ぎる。いくらなんでも成長しなさ過ぎだろう。お前、悪いものでも食わされたか?」

腰の短剣を引き抜いて斬り掛かったクーリーに、ユーリーは弓のような形をした柄の戦斧で受け止める。

「クー 立派なレディ」

「共通語が変だぞ。北部語で話せ」

「ーーーーーー(ユーリーのくせにいばるな。泣き虫ユーリーのへたれユーリー!あたしより弱いくせにいばるな!あほんだら!ばかんだら!タマ無し男めー!)」

「ーーーーーー(お前…口悪くなったな)」

二人は北部語で罵り合い戦いは激しくなった

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