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アラン戦記  作者: 夢物語草子


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同盟暦512年・旅立ち、ロブホーク編12

「フロレンティナさん?」

「フロレンティナ様…!」

地面を蹴るようにハリファックスに歩み寄ると、フロレンティナは力一杯、彼の顔を引っ叩いた。

「息子を連れ去るなんて!」

「……貴方が決断しないからです」

「私は言ったはずよ。そのつもりはないと」

「ならばアルバート様にその役目を果たして頂きます。我等が忠誠を捧げる為に」

「平穏に暮らしていた私達を無理矢理引きずり出して嵐の中に投げ込むつもりね」

「御母上は我等に賛同しました」

「母上は死んだわ!」

フロレンティナはもう喋りたくないと顔を逸らし、アルバートを抱き寄せる。

「もう…ほっておいて…お願いだから…」

ただアルバートを強く抱き締めたまま、涙声で訴える。

その様子にハリファックスも黙り込む。

「……行くぞ」

「奴らは?」

「捨て置け」

馬に跨がり、ハリファックス達は駆け去って行った。

「クーリー!怪我は?」

「勝てなかった。悔しい」

「あぁもう。怪我してるじゃない。ほら、見せて」

クーリーをアーネストに任せ、ポーはフロレンティナを見た。

「は、母上…」

「アルバート…お願いだから心配させないで。私には貴方しかいないの……私の支えは貴方だけなの」

ガタガタと身体を震わせる姿はまるで怒られた幼子のような姿だ。

「あの人と知り合いなの?」

「シデ殿のところで会った」

「ふーん」

アーネストは何か気になるのかフロレンティナを何度もチラチラと見ている。

「どうしたの?」

「あの人…貴族でしょ?」

「え?」

「ううん、もしかしたらどこかの王族に連なる家系の出かも」

アーネストは優れた洞察力からフロレンティナの素性を予想してポーは驚いた。

「……あたし達には関係ないわね。家まで送りましょう。あいつらまた攫いに来るかもしれないし」

ポーは同意して親子を家に送っていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

夜。

暗い寝室のベッドで眠るアルバートを確認したフロレンティナは音を立てないように用心しながら天井に隠した鍵を手に外に出る。

すぐ傍にある物置小屋に入り、大きな棚を動かしマットをどけると地下への入口となる扉が現れた。

ガチャリと錠を開け、燭台を手に地下へと下りる。

闇の中、階段を下りていくと、小さな部屋。

簡素な寝台があるだけ。

その寝台には痩せ細り年老いた老婆、ピアレジーナ(58歳・女)が横たわっている。

フロレンティナが死んだと叫んだ彼女の実母だ。

傍らには同じような歳の老婆の召使いアニ(65歳・女)が椅子に腰掛けている。

「…………おぉ……わらわのきぼうよ……」

ピアレジーナは猛禽類のような双眸でフロレンティナを食い入るように見た。

「…………母上のご様子は?」

「変わりありません。アルバート様の事だけを呟いております」

「外に出た?」

「いいえ」

「誰かと会った?」

「私の見ている限りありえません」

「そう」

フロレンティナは寝台に寄り添うと、ピアレジーナの手を握った。

「母上…あなたにとってアルバートは希望なのでしょう」

握り締めた両手に力を込める。

細く衰えたピアレジーナ握られた手の骨が悲鳴の音を上げた。

ポキンポキンと手の骨が折れる音がした。

ピアレジーナは絶叫の悲鳴を上げた。

「けど…私にとってアルバートは…絶望です…!」

「私は…あなたがしたことを絶対に許さない…!」

「私から"人を愛する心"を奪ったあなただけは!」

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