表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アラン戦記  作者: 夢物語草子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/84

同盟暦512年・旅立ち、ロブホーク編10

「奪われた?」

「ですから家族だなんてありえません。あの人は憎い仇です」

フロレンティナは木杯をギュッと握り締めた。

「母さん!」

シデが少年、アルバート(八歳・男)を連れて戻ってきた。

フロレンティナは穏やかな表情をキッと鋭く変え、息子の右頬をパンッと叩いた。

「ここに来ては駄目と言ったでしょう!どうして言うことを聞かないの⁉」

「ご…ごめんなさい…」

「婆が悪いんだよ。この子を怒らないでくれ」

「あなたが口出ししないで!」

シデにも手を振るいそうになり、そうなる前にポーが手首を摑んだ。

「もういいでしょう」

「…………」

フロレンティナは黙り込み、ため息をつくと腕を下ろした。

アルバートは怯え、シデもどうしたものかという表情を浮かべていた。

「……帰ります。アルバート、行きますよ」

「……はい……母さん……」

ちらりとポーとシデに目を向けたアルバートは、先を歩くフロレンティナの後ろを追い掛けていった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「妙なもん見せちまったね」

椅子に腰掛けたポーとシデ。

木杯に赤葡萄酒を注いで、お互いに軽く口に流し込んだ。

「気になるかい?婆とあの娘がどういう因縁なのか?」

「正直に言えば、気になります。聞いたら教えてくれるんですか?」

「教えてやるよ。別に隠してる事じゃない。あの子は、断頭台国(リヒトシュヴェーアト)王族の生き残りだよ」

断頭台国(リヒトシュヴェーアト)⁉。シデ殿が滅亡に追い込んだ大国では…」

「そうだよ。あの国を滅ぼす手助けをしたのに、雄牛国(ファラリス)に疑われて身を隠す羽目になった。報復して自滅に追い込んでやった後、しばらく放浪してた。そして、ある町で会ったのさ。最期の王妃とその子供、小さな兄とまだ幼過ぎる妹に」

赤ら顔でシデは苦いものを吐き出すように呟く。

「奴隷より下の言葉なんてあるのかね?そう思わずにいられないぐらい酷い有様と暮らしだったよ。

王妃は婆の顔を覚えていてね、神を呪うように呪詛を吐き続けたよ。兄は婆を睨んでいた。妹は訳がわからず泣いたよ」

なんて残酷な運命だとポーは思う。

それはベアトリスにも言える。

彼女は運命に愛されこそすれ弄ばれるべきでは無かった。

「婆はすぐにでも逃げ出したかった。けど足が動かなくてね。婆は自分の為たことの大きさに今さら恐れ戦いたのさ」

「だから、婆はどれだけ罵られようがぶたれようが構わず三人を連れ歩いた。どこに行っても安住の地はなくてね…散々彷徨った挙げ句、啖呵切って飛び出した師匠のところに転がり込んで、世話になった。そしてこの村で暮らせるようにしてくれた」

酔いが深くなり、シデは遂にはテーブルに突っ伏した。

「この婆には…なにもない……師匠も死んじまった……。教えてくれよ……「やることがあるだろう」ってなんだよ……なんでそんな遺言……残したんだよ……意味……わこらんよ……馬鹿師匠が…………」

そしてシデは寝息を立て始めた。

ポーは立ち上がり、シデに毛布をかけると、窓から外に目を向けた。

「…………フロレンティナさんは…もしかしたら…」

フロレンティナは自分と違うと感じたポーだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ