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アラン戦記  作者: 夢物語草子


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同盟暦512年・白雪国5

評議会に足を踏み入れたテュルパンとポー。

「な…なんですか…これ…」

「ポーはこれを見るのは初めてですか?なに、驚くことはありません。いつものことです」

評議会が開かれれば大小の差はあれど、いつもこうなることを知っているテュルパンは、荒れに荒れた室内を全く気にしていない。

「いよう!大司祭!遅かったな!」

「お久しぶりです。筆頭家老殿」

膝を折り挨拶するテュルパンとポー。

イスマイルは柔和な表情を浮かべている。

しかしポーはその両目に底知れないものを混じて萎縮した。

「報告は聞いた。ダミートリアス王は処刑された。そして、処刑人がそこにいる真新しい鎧兜の騎士だとな。間違いないか?」

「ございません。ダミートリアス様のご遺体は持ち帰ること叶わず、ここにいる騎士ポー・アラン・フェニックスが主君を斬りました」

その瞬間、主に武官達から敵意と殺意がポーに向けられた。

「王殺しに加えて主君殺しか。大罪中の大罪だぞ」

「八つ裂きの刑に値する!」

文官の一人が怒りの声を上げた。

「裏切り者め!よくも王を手に掛けながら顔を出せたものだ!恥を知れ!」

「鉄王冠国の前にこいつを殺すべきだ!」

「「「賛成だ!」」」

ぶつかり合っていた文武官が意見を同じとして声高に叫ぶ。

「やかましいっ!」

「静かにせんかっ!」

レイモンドと彼に逆エビ固めをされたカルロスが武官、文官達を叱りつけた。

「我々は野盗か?それとも暴徒と化した群衆か?。何のために法が定められた?一時の感情に振り回され、私情で刑に処すなど論外だ!そんなこともわからんのならもう一度、母親の胎から生まれ直してこい!」

文官達は恥じ入り、顔を伏せた。

レイモンドは何も言わない代わりに武官全員を一人一人睨みつけて有無を言わさず下がらせた。

「騎士ポー・アラン・フェニックス」

「はい」

「釈明はあるか?」

「……ありません。全て真実です」

ポーは覚悟を決めた顔だ。

「お前はフェニックス家の生き残りだ。消息不明の叔父上殿が存命なら違うが、実質、最期の一人だ。古き者に連なる血筋を断絶する判断を私はしかねる」

「何より、私は事件の詳細をまだ知らない」

「だから話せ。全容ではなく"ダミートリアス王に何があったのか?"、事実だけを報告しろ。全てを聞くのはまた後だ」

ポーは深く頭を下げた。

「(姫様のことを避けている?……よかった。こんな大勢の前で姫様の名誉を傷つける話しなんて死んでも出来なかった…)」

そしてポーは語り始めた。

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