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アラン戦記  作者: 夢物語草子


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同盟暦512年・白雪国4

スノークイーン城評議会。

緊急招集された白雪国の文武官が勢揃いしていた。

その空気は張り詰め、怒れる者、嘆く者、企む者など多様な表情を浮かべていた。

「報復だ!」

レイモンド・ガーラーン(63歳・男)は凄まじい怒号を上げた。

白雪国の軍部を統括する騎士総長。

王に対する忠誠心は鋼に勝る故の憤激だ。

「報復以外に何がある!奴らの血で大河を染め尽くしてやるわ!」

「何を言うか!頭を冷やせ!戦争がしたいのか!」

評議員にして一等文官のカルロス・バウル(53歳・男)は青ざめながら反論した。

「非は鉄王冠国にある!それは明白だ!だが相手は上国であり盟主国だ!国力も埋めようのない差がある!忘れたか!」

「貴様は忠誠心をどこにやった!忘れたか!それともここに辿り着く前に糞と一緒にたれ流したか!」

「この上ない侮辱だ!」

二人の言い争いをきっかけに文官と武官の勢力が罵倒の応酬を開始した。

その有様をイスマイル(45歳・男)はぼんやりと眺めていた。

「右の番犬。左の飼い猫」

武官と文官を犬と猫に例える。

「犬は吠えて猫は殴る。さてどちらが勝つ?」

喧々囂々の評議会は収まりどころを失い始めていた。

イスマイルは王が座る席に目を向けた。

「(……酒を飲みたい気分だ)」

ダミートリアスとは無類の酒飲み友だった。

「(あんたのいない酒はまずくなりそうだよ)」

一際、大きい怒号が轟く。

レイモンドが椅子をぶん投げた。

投げられた文官達は悲鳴を上げ身を隠す。

「この野蛮人め!」

「やかましい!この腰抜けども!一度ぐらいは剣を抜いて戦って見せい!」

「貴様らには理解できん戦場があるのだ!だいたい!軍が余計な戦争ばかりするからわしらにしわ寄せがくるんだ!」

「そうだ!尻拭いしてやっているのは誰だと思っている!」

「この野郎!言いやがったな!」

遂に武官達がいきり立ち、文官達に殴りかかる。

評議会は乱闘の場と化した。

「やめなさい!やめないか!」

ガートニー(68歳・男)評議員長が必死に制止する。

少数の冷静な者達は評議会の端っこに避難すると、

「さて賭けの内容はどうするね?」

「ガーラーン卿がバウル卿を殴り倒すのに500フール」

「バウル卿が見事に逃げるのに800フール」

各々、提示された賭け事にチップを差し出した。

評議会は暴動同然に紛糾した。

イスマイルは評議員達を静観している。

「(イスマイルめ…何か言え。このままではどうにもならんぞ)」

カルロスはレイモンド追われ逃げ回りながら悪態をついた。

その時、扉が開かれて警備兵が声を上げた。

「失礼します!ただいま、テュルパン卿とポー・アラン・フェニックス卿が到着されました!」

「来たか」

イスマイルは立ち上がる。

「諸君!そこまでだ!」

騒ぎを一喝して鎮めると、警備兵を見た。

「二人を通せ」

イスマイルはようやく重い腰を上げた。

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