同盟暦512年・脱出行10
「これはこれは」
ゴドルドは笑いながらポー達を見ていた。
「反逆者の臣下共だけでなく悪名高い魔女まで勢揃いとは…神は私に手柄を立てる機会を与えたようだ」
ゴドルドが右手を上げた。
兵が一斉に剣を抜き、また弓を構えた。
「命乞いは無駄だぞ。特に魔女には莫大な報奨金がかけられているからな」
「……やってみろよ」
ポーは"焔の拵え"を鞘に収めて、自分の腰の剣を抜いたり
「鉄王冠国の騎士に負けるような奴は白雪国にはいない!」
「よく言った!まさしくその通り!」
最年長の騎士、アランドロン(48歳・男)が豪快に笑い、ポーの背中を叩く。
「北の壁を守り続けた白雪国の騎士の力、奴らの血で思い知らせてやれ!」
それが戦いの合図となった。
鉄王冠国と白雪国の騎士達が激突した。
弓を射合い、剣を振るい合い、戦う。
人数の差は歴然だが、アランドロンの言葉通り、歴戦揃いの北の騎士達は巧みに果敢に敵を打ち倒していく。
余裕を見せていたゴドルドの顔に焦りが生じる。
「何をしている!相手は寡兵だぞ!」
怒号を発するゴドルド。
ポーは二人を斬り捨て、走り出す。
「小僧がっ!」
ポーの振り下ろした剣をゴドルドが切り払う。
間合いを計りながら、ポーは攻め立てる。
ゴドルドも怒りで表情を歪ませつつも、動きは冷静で、ポーの身体を浅く斬りつける。
剣の腕に差があった。
ポーはまだ若く経験も少ない。
何より肉体が成長しきっていない。
ゴドルドはすでに成年の肉体であり、騎士として経験も重ねている。
ポーがゴドルドに押されるのは突然だった。
だが、北の騎士と中央の騎士には決定的な違いがある。
「死ね!小僧!」
ゴドルドはポーを突き殺そうとした寸前、レオリックスの放った矢がゴドルドの右目に突き刺さった。
「ぐっ!」
激痛に呻いたゴドルド。
隙を見逃さずにポーは踏み込んで剣を振り抜いてゴドルドの胴体を切り裂いた。
血飛沫が飛び、ゴドルドは仰向けに倒れた。
「ひ……ひきょうもの……め……」
「あんたらお高い騎士と一緒にすんなよ。北の騎士は誇り高い決闘より、仲間の命を何より重んじるんだよ。……覚えとけ」
レオリックスは冷淡に言い捨てた。
「……ク……クク……田舎者らしい……言い訳だ……」
ゴドルドは嘲笑した。
「…………だから……王は無様に死に……姫は……舞台で……あのような…………」
ゴドルドが言いかけた途中で、ポーが彼の首を刎ねた。
「………黙れ……」
ポーの声には憎しみがこもっていた。




