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毒狩りの魔女  作者: 亜逸


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エピローグ

 その後、パレアはフィーリの墓へ向かい、どうにか生き残れたことを、どうにか仇を討てたことを報告した。

 もう悪意をもった誰かに墓を荒らされる心配はなくなったので、木棒を綺麗に削って十字に組んだを墓を、フィーリのために建ててあげた。


 心ゆくまでフィーリとの会話を楽しんだところで、ようやく自分の家へ戻り、ベッドに倒れ込んだパレアは丸一日眠りこけた。

 起きた直後は全身が鉛のように重く、まともに動けるような状態ではなかったので、もう一日だけ休養にあてた。


 翌朝。

 パレアは(くわ)を片手に、ギリアムの遺体のもとへ向かった。

 疲労はまだ抜けきっていないが、これ以上遺体をそのままにしておくのは忍びなかったし、全てが終わったらお墓くらいは建ててあげると約束した以上、泣き言はいっていられなかった。


 大森林から程近い場所で、パレアが殺した時のままの状態で地に伏すギリアムの遺体を発見すると、鍬で掘った穴に埋め、その上にフィーリと同じ木組みの十字墓を建ててあげた。


 これで約束は果たした。が、やはりというべきか、他の子供たちにしろ、イルルナにしろ、ヴェルエにしろ、遺体をそのまま放置できるほど、パレアの心は冷たくできていなかった。

 結局、多大な労力をかけて、確認できる全ての遺体を地面に埋めて墓を建てた。



 それから一週間後――



 パレアはフィーリの墓の前で、()()()の挨拶をしていた。


「これからどうしようか色々考えてみたんだけど……あたし、〝外〟の世界に行くことにしたわ。ここに留まってても、ろくなことにはならなさそうだしね。それに……」


 外套で隠れていた、ローブの左胸に付けている、手作りブローチを作った本人に見せる。


「あんたが言ってた、あたしと二人で同じブローチをつけて一緒に町を回るって話……こんな形じゃあんたは不服かもしれないけど……叶えてあげたいって思ったから……」


 などと、ガラにもなく素直な気持ちを言葉にしたせいか、急に恥ずかしさが込み上げてきて「ああもう!」と、乱雑に頭を掻く。

 墓の上で、ニヤニヤ笑いを浮かべているフィーリが透けて見えた気がした。


「とにかく! そういうわけだから、あたしは〝外〟に行くわ! たまには顔出して、〝外〟の話を聞かせてあげるから、せいぜい首を長くして待ってなさいよ!」


 墓に向かって宣言したところで、地面に置いていた雑嚢を肩に担ぐ。

 中には、着替えやナイフの予備の他に、山を越えるために用意した非常食の数々や、〝外〟での買い物に備えてヴェルエの館から掻っ払ってきた金貨が詰め込まれていた。


「名残惜しいけど、そろそろ行くわ。時期的にいつ定期便が来てもおかしくないし、下手に接触することになったら面倒くさいことになりそうだし」


 定期便の際、ヴェルエが誰とどういったやり取りを交わしていたのかは、パレアは勿論、他の子供たちも与り知らない。

 だから定期便の相手が、ヴェルエとどの程度懇意にしていたのかもわからず、その度合によっては、最悪、彼女を殺したパレアのことを殺そうとする可能性もないとは言い切れない。

 ここに留まっていても、ろくなことにはならなさそうだと言ったのも、下手に接触したら面倒くさいと言ったのも、それゆえだった。


「それじゃあまたね。フィーリ」


 その言葉を最後に、踵を返して歩き出す。が、やっぱり名残惜しさが顔を出してしまい、もう一度で振り返り、フィーリの墓に向かって小さく手を振ってから、今度こそ振り返ることなく歩き出した。


 明るいとは限らない。


 むしろ、闇に包まれているかもしれない。


 それでも、希望を抱かずにはいられない。


みらい〟に向かって――

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― 新着の感想 ―
[良い点] パレアが才能が無いながらも工夫して逞しく生き抜く姿が恰好よかったです。 相棒キャラと思われたフィーリが早々に退場してしまいますが、 (いい子だから逆にラスボスかも、とも思ってました。すまん…
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