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僕と姫様の対地球戦争  作者: new_well
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Invasion_3

分割後半。最後までスクロールしてくれると嬉しいな(にっこり)

 姫様は迎撃に成功したのか、それとも───いや、今の僕には姫様の作ったこの好機を逃してはいけない。



 AF-25の操縦士は、僕が接近していることも、どうやら把握していたようだ。



 退避行動に移り、機首を地面へと向け、機体の重量を利用した急加速を開始。それを僕は追撃にかかる。高速で空を落下するナグルファルの制御尾を振り、敵機の後ろへと必死に食らいつく。



 収束砲の有効射程に敵機をとらえた。



 僕は収束砲の引き金を引く………初弾、外す。次弾………命中せず。敵機を追いながら地面へと加速する僕は、体を潰される感覚を味わいながらそれでも、懸命に攻撃を続ける。



 落ち着け、チャンスはまだある。このまま降下し続ければ、敵機は地面への激突を避けるために機首を上げるはず、そこが狙い目だ。



 まだ、まだ、高度計が凄まじい勢いで動き、魔術儀の降下を知らせている。



 そして、その時が来た。



 AF-25が機首を上げ機体を水平に戻した。



 ここだ!相手の進路を予測し、その先を目掛けて収束砲を僕は放つ。だが、放たれた砲撃はAF-25が減速したことで躱され……いや、減速しすぎだ。あれでは失速してしまう。



 僕の攻撃が外れただけではない。敵機は更に減速を続け、空中で機体を縦回転させた。



 クルビット!?

 戦闘機をギリギリまで減速させ、高度を変えないままの宙返り。曲芸じみた戦闘機動だ、実戦で行うなど正気の沙汰ではない!敵は高度な技術を持つパイロット───



 僕のナグルファルも、当然だがAF-25の後ろから追撃していたため、地面に衝突するのを避けるために減速するしかなかった。気づけば、敵機は反転し、機首をこちらへと向けている。



 血の気が引く。



 不味い。嵌められたのは僕自身だと気づいたときには全てが遅かった。



 内部に響き渡る敵機のロックオンアラート。こんな至近距離でミサイルを打たれたら対応など出来るわけ、が、ない。収束砲の再装填にはまだ時間がかかる。



 死。の瞬間、思ったのは情けなさだった。まだ、あの方に何の恩返しも出来なかった悔しさがこみ上げる。姫様、僕はあなたに………




「よく頑張った」




 敵機左翼を貫く収束砲の翠光。



 突然の攻撃に、煙と火を上げながら、眼下の森へと、敵戦闘機は落ちていく。呆然とする僕の前に上空から降りてきたのは、ナグルファルの左腕を破損し盾を喪失したものの、敵機を撃ち落とした姫様の姿だった。



「無事か?ケンジ銅等兵。全く無茶をして、だが見事な戦いだった」



 自分の方が無事ではないだろうに、こちらを気にかけてくださる姫様。無事生きていてくれたことに安堵しつつも、僕は先程まで落とされそうになっていたことから申し訳なさを感じてしまう。

 


だから、ふと、自虐的に、昔、助けられた時と変わらないですね。とそんな言葉を口にしてしまった。



「何を言うか、君の攻撃が無ければ敵の隙を作れてはいない。私達二人の勝利だ。……それに昔も私は君に助けられているさ」



───それはどういう意味なのだろうか?姫様を、僕が助けた?そんな記憶はないはずだが?尋ねようとしたが、タイミング悪く基地から通信が入り、僕は聞きそびれてしまう。


 

≪シンファへ、所属不明機の墜落をこちらでも確認した。君たちの状況を伝えてくれ≫


「私の魔術儀は損傷がありますが、飛行は可能。ケンジ銅等兵は損傷なし。基地へと帰還したいのですが、よろしいですか?」


≪勿論だとも、送った増援部隊に交代して警戒体勢をとらせる。君達二人でよくやってくれた≫



 管制官からも無事に生き残ったことへの喜びが伝わってくる。



 損傷がある姫様のナグルファルの右肩を担ぐようにして、僕の魔術儀が抱え、上昇していく。大丈夫だとは思うが、損傷があるため、念の為肩を組む形にして、基地へと進路をとる。



「そういえば、先程は私に何を言いたかったのだ?」



 突然、姫様からそんなことを聞かれて、僕は何のことか分からなかった。



「私が助けに入る直前、通信で言っていたであろう?姫様、僕はあなたに……と、最後はよく聞こえなかったからな」


 

 え゛まさか、聞こえてしまっているとは。あー、それは、えっと、非常に個人的な内容というか。姫様が気にされるようなことではないというか、死の直前の気の迷いというか。



「そう言われると余計気になる、ほら、白状するが良い」



 姫様がこちらをいじってニヤニヤ笑っている様子が伝わってくる。きっと、彼女には僕の気持ちは分かってないのだろうな、と思いつつ。この新しく訪れた危機をどう乗り越えようか、考えを巡らせながら、魔術儀を飛ばせた。



 天球世界の翠の空に、寄り添う二つの魔術儀。

 それは、これから訪れる争いの始まり。次第に崩れていく、二つの世界の均衡。



 僕たちはその予感を感じながら、大きな戦いの中に、その身を投げていく。どんな困難であろうとも、僕は隣にいる彼女と、共に乗り越えていこう。姫様のナグルファルの頭部が弾け飛んだ。



















 え?

 









 衝撃。


 魔術儀内部で損傷を示す警告が鳴り響き、遅れて外部から凄まじい轟音が響く。



 なんだ?何が起きている!?姫様の魔術儀は頭部と、残った右腕すら失い、彼女は意識を失ったのか、地面へと落ちようとしていた。同様に、僕の魔術儀も姫様を担いでいた左腕を失い、落下していた。



 なんとか体勢を立て直し、落下する姫様のナグルファルに向けて加速する。



 じわりと、額から血が流れ片目の視界がにじむ。



 破損した右腕側も体が痛む。どこか自身の体が負傷しているようだが、今はそれよりも目の前の彼女を助けなければ!



 姫様へと追いつき、魔術儀の残った右腕で姫様を掴むことに成功した。



 一瞬の安堵。



 制動を試みようとして、僕は冷静になる。───先ほど、何が起きた?明白だ。敵の攻撃を受けたのだ。けれども、それはおかしい。魔術儀の探査魔術に反応はなかった。そもそも、敵がいたとしても攻撃前に気づくはず。



 確証はないまま、僕はその最悪な状況を想定する。



 探査魔術を再度展開……!?微弱だが反応がある。先程までは何もいなかったはずの空域に、何かがいる。



 魔術儀の望遠を最大近くまで伸ばす。



 反応があった地点までは、かなり距離があった。が、辛うじて敵の姿を捉えた───見たこともない戦闘機だ。



 黒鳥のような機体は、極めて暗い銀色に、長い水平翼。

 まるで鉤爪の如く、機体の下部に二門の砲口が見えた。



 二門?───それを見た瞬間、僕は自身のナグルファル脚部の推進機関を最大、制御尾を振り抜き、一転して、姫様を抱きしめたまま、地上へと逃れようとした。



 二度目の魔術儀への衝撃。



 激しい振動の中、僕は自分の行動が間違っていなかったことを確信する。動かなければ、今度こそやられていた。僕のナグルファルの右足が破壊されたが、間違いない。あの不明戦闘機に攻撃されたのだ………


 

 煙を上げ、推力を失い、僕たちは地上へと落ちていく。



 僕たちの初陣は終わる。一時の勝利と、敗北。

 空に残ったのは、ただ一機の黒鳥の戦闘機だけだった。




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