訂正
「それじゃソラさん、お元気で」
「キミもな。ああ、そういえばさ」
モービルに乗り込み、モーターを起動させた青年に、私は言葉を掛けた。
「私さ、こう見えて割と厚顔なんだよ」
「割と……?」
「いちいち細かいなキミは! ん、ともかく、そこそこ厚かましいんだ。だから、キミやその子孫を束縛したくなくて、“別に来なくてもいいから”なんて……殊勝なことは言わない」
「ええ」
「大いに楽しみにして、待ってる。ぜひ来てくれ」
「もちろんです。今度こそ……一緒に行きましょう」
「ああ……あ、それともう一つ」
大事なことを言い忘れるところだった。
「先祖の過ちはキミが正してくれ」
「と、言いますと?」
「コーヒーショップにいるのは、可憐な美少女だと、そう子々孫々には伝えてくれ」
青年は破顔したあと、答えた。
「承りました。伝えておきますよ。気が遠くなるほどの長生きなくせに、キザなセリフを口にすると顔を赤らめてしまうような、意外と可愛げのある可憐な美少女、って」
「……!!」
声にならない私の抗議を受け流し、青年はモービルを浮上させる。私は諦めて、数歩後ずさった。
あっという間に空に消えていくモービルを見送って、私は店へと入った。
さて、2000年後が楽しみだ。