06 まるで別の世界
「ありがとうございます。」
街についた俺は馬車のおじさんにお礼を言い馬車を降りた。
「お金請求されなくて良かった。」
街についた俺はまるで別の世界に来たような世界観に引き込まれた。
「すげぇ。ゲームとかアニメの世界じゃん。」
どうやらこの町は一周壁で囲われているらしい。
「遠目から見た時も相当だったけど、近くで見ると圧巻だなぁ」
目の前にそびえ立つ壁はまるで天空まで届いているような感じさえする。
口を開け壁を見ていた俺は
「こんなことしてる場合じゃねぇな」
そう気持ちを切り替え街の探索を始めた。
「これケルト調の音楽かけたらバッチリ合いそうだな」
まるで世界は中世のヨーロッパ。街並みも人の服装もそうだ。
そこで俺は視線が少し集まっているように感じた。
じっと見られている訳だはない。少し見て視線を外す。そう言った動作を街のほとんどの人にされている気がする。
「これは昔体験したなぁ」
俺がいじめに遭っていた昔、「なんだこいつ」みたいな目で見られすぐに視線を外すと共に距離も取られる。
「だけど、距離は取らないか」
俺は経験から嫌悪されている訳ではないと確信した。
「まさか、あんなクソみたいな経験が生きるとはな。まぁ嫌われてないっぽいし街の探索続行だな」
そう呟き俺は足を動かした。
「重てぇわ!」
俺は一人でキレながら荷物をそっと地面に置き休憩していた。
「とりあえず街の探索で分かった事をまとめるか」
分かった事は大きく分けて2つ
一つ目はこの世界では言葉はおろか文字すら読めないこと。
「これ、どこかで見たことあるとかそういうレベルじゃないんだよな。少なくとも今使われている文字ではない事は理解した」
二つ目は俺に視線が集まる理由。
「これは単純に服装と荷物が珍しいからだろうな。」
家にいる際は常に寝間着だった。今着ているのは少し大きいの半袖のTシャツと前にファスナーのついているスウェットパーカーとスエットの長ズボン。
そりゃ気になるわな。さっきの視線は嫌悪の視線ではなかった事から多分これだと思っている。
「しかもTシャツに南極なうって書いてるもんな。相手が日本語わかるエキストラだったら気になるか」
Tシャツのデザインはホッキョクグマとペンギンが並んで正面を見ているTシャツだ。俗にいうダサTと言うやつであろうか。
そして話題が変わるかのように俺は別の事を考えていた。
俺は一つここに来た頃から引っかかっている事があった。それは今いる世界がドッキリ番組では無いと言う可能性だ。
この世界に来た時は捨てられたと思った。だが大量の馬や荷物。街の規模や住んでいる人の数、家の作りや服装、文字や言葉使い、そして圧巻の壁。
細かく言えばもっとある。
「流石に規模が大きすぎる…」
そして
「すべてが完璧すぎる。」
こういったものはどこかがパネルであったり商品には生産国が書いてあったりとどこかに穴があるはずだ。
これだけ大掛かりなのであればなおの事。
だが、それすら見つけられない。触れるものは触り、商品は手に取って見てみたものの全く手掛かりがつかめないのだ。
もちろん始めに乗った馬車の荷物にも何も書いてなった。
俺は全くつかめない手掛かりを少しでも掴むため街の探索を再開しようとしたその時
ーードンッ
轟音が響いた。音が大きかったおかげ大体の方角は分かった。
「逃がさん」
俺は音がした方向へ重い荷物を背負い走った。