05 始まりと困惑
目を覚ました俺は森の中にいた。
「ここどこだよ、ついに追い出されたか?」
俺はニートだ、仕事をしない親が家から追い出すのは分かる。
「…」
右手にはベースケース、左手にはリュックサックとウエストポーチ。
そして少し遠くに壁で囲われた何かが見える。それに動いてるあれは人だろうか。
「とりあえずカバンを見てみるか」
俺はカバンを確認した。
入っていたものは、ベースケースに銃、リュックサックに大量の弾薬と少しのマガジン、ウエストポーチにはマガジンと少量の弾薬。
ウエストポーチのポケット部にテーピングと小銭、入浴剤が入っていた。
「そのまま入ってるな。入浴剤…あ、昔商店街のおばちゃんがくれたやつだ」
「俺が抱えて寝たものは全部揃ってると…でも携帯は無し。」
枕元で充電していた携帯はポケットの中、カバンの中ともに無かった。
「携帯縛りはハードすぎるって…」
俺は親に追い出された、あるいは捨てられたと言う仮説を強く推した。だが不可解な要素もある。
俺が寝てから起きるまで、今の時間は分からないが太陽が昇っているのは確認できる。少なくとも夜ではないだろう。とりあえず昼と仮定しようか。
この時間で俺を動かせる人間は母親、ただ一人だ。兄弟はおらず親父は出張でほとんど家にいない。
母親の腕力だが米袋を運ぶのがしんどいと前言っていたな。
そんな非力な母親が弾薬はおろか、俺まで運ぶとなると相当時間がかかるはずだ。
「と言っても想像でしかないし、もしかしたら誰かを雇ってそいつに消された説もある。考えても仕方ない、探索するか」
俺の横に転がる荷物を持ち俺は遠めに見える壁の方向へ歩いた。
とりあえず壁の方向に歩いていると少し森ゾーンを抜け開けた場所に出た。
「あれは道か?」
その道はアスファルトではなく土なのだ。まるで舗装されていない河川敷の道を連想させる。
そこに驚きは連鎖する。
目の前を話でしか聞いたことのないものが通り過ぎたからだ。
「あれって馬車だよな?ここは車を使わんのか?」
そう呟いた。
その馬車は荷台に大量の荷物を積んでいる。
俺は馬車の荷台を操作しているおじさんの場所へ駆け寄った。
「すみません。ここの地名教えて貰ってもいいですか?」
「……」
2度ある事は3度あるとよく言ったものだ。驚きは連鎖する。
「え?す、すみません、日本語で。キャンユースピークジャパニーズ?」
「……」
壊滅している英語力を脳から絞って何とかちぐはぐな英語でコンタクトをとってみたがやはり言葉が通じてない。
「……」
おじさんが荷台に乗れと言ったジャスチャーをしながら俺に話かける。
馬の向いている方向的に向かうのはあの壁方向だろう。そう自分の中で結論付け
「ありが…。恩に着る、おじさん。」
恥ずかしい。人生で一度は使ってみたかった言葉だ。どうせ相手に伝わらないのなら使ってしまえと言ってみたが。恥ずかしかった。
そうして俺を乗せた馬車は壁の方向に向かい進んで行く。
壁、いや、あれは壁で囲われた街なのだろう。
壁のある方角からは馬車や馬に乗った人が出てくる。
そして俺たちの後ろにも馬車がいる。
これは何かを輸送している。そうに違いない。
だが何故みんな馬を使っている?映画のセットにしてもやりすぎている感じがある。俺を困らせるテレビの企画だとしても日本の規模ではない。
俺は馬車に乗っている時自分の置かれた状況を考え続けた。
バイブスあげてこ!!
うえーいおシェい!!