12 リーベル大国
「あなたも貴族でしょうに」
そうエーテルが少し笑いながら言った。
「日本にはそう言った身分が無くてな。まぁ、上級って言う皮肉は存在するが。」
エーテルとシーレミアが顔を見合わせて微笑む。
「本当に変わった人ね」
俺たちは宿を出て街を歩き出した。
「さて、どこから行きましょうか。」
そうエーテルが言うと
「ハルさんはここの街、初めてですよね?」
とシーレミアに尋ねられた。
「ああ。」
そう言うとこの街について説明してくれた。
「この街、実は一つの国なんです。」
「え?そうなの?」
「あれ、見て下さい。」
シーレミアの目線を追っていくと少し高い位置に大きな建物が見えた。
「あれがこの国、リーベル大国の城です。」
この国、リーベル大国は城を中心に4つの地区に分かれている。
貴族地区、平民地区、商業地区、開発地区。
正式名称は、貴族地区から第一地区、第二、第三、第四
と数字が割り当てられている。
エーテルが続けて言う。
「数字が小さければ小さいほど身分が高いの。」
「なるほどな」
「そして身分が低い人は身分の高い地区には入れないのよ。」
貴族なら第一地区から第四地区まで入る事が可能だが、平民は第一地区には入れないとの事だ。
「そう言っても第二地区に入れない人なんてそういないと思うわ。」
と付け足した。
「そうですね。冒険者の人も第二地区に入れますからね。」
俺はシーレミアが言った事を聞き逃さなかった。
「冒険者って?」
「個人で依頼を受けてそれをこなす人たちですね。」
「ああ、民間軍事会社の個人版みたいなニュアンスかな」
「ミンカン…えっと…聞き取れなかったわ。」
エーテルが少し困った顔をしていた。
「すまん、こっちの言葉だ。」
「冒険者は基本的に個人での国防と言った形になってます。壁の外で魔族の大本を探したり、軍に加勢して戦ったりと色々…ですかね」
「なるほど、なんとなくわかったよ。ありがとう。」
説明してくれたシーレミアに礼を言った。
「そうだ、冒険者への依頼は基本的に誰でもできますので困った事があったら試してみてもいいかもしれません。」
「ゲームでも受ける側はやったことあるけど依頼する側はしたこと無いな。今度やってみるか。」
そう言うとエーテルは、
「げーむ?」
「すまん、こっちの言葉だ。」
悩むエーテルが可愛く見えたのはここだけの話。
「そういえば今いる場所の事を話して無かったわね」
エーテルがそう切り出すと、
「ここは第二地区かな?」
「正解。昨日言った中央噴水って覚えているかしら?」
「ああ、酒場で言ってたやつだな?」
「そう、その中央噴水があれね。」
目線の先には大きな噴水があった。
話をしながら歩いているうちに近くまで来ていたみたいだ。
「これ、ホントに中央か?」
そう問うと、
「ええ、第二地区の中央ね。」
「なるほど、てっきり国の中央だと勘違いしてた」
「国単位で言ってしまうと城が中心ですからね。実際は少し中心からずれていますが。」
少し笑いながらシーレミアが言った。