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大崎玄蕃と名を変え生き延びた武田勝頼の末裔の咆哮  作者: 吉良山猫
第3章甲斐動乱篇
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小田原城の戦い9

自分のことをわからないものほど人の悪口を言います。

時はさかのぼり山県昌景率いる別働隊は古河御所をとり囲んでいた。


しかし古河御所は辺りを水で囲まれた御所というより城である。


守る兵は千名程度だが、山県昌景の降伏勧告に対し鎧で身を包んだ簗田高助の娘であり、足利晴氏の妻である175センチはあろうかと思える大女が叫ぶ。


「甲斐の山猿が何を言うか!?しかもその醜い姿はなんじゃ。気持ち悪い気持ち悪い」


山県昌景を見下し、醜いだの気持ち悪いだの好き勝手に言っている。


山県昌景やその配下達は怒りを忘れて首を捻った。


古河には鏡は無いのだろうか?中肉中背の巨体に、化け物のような細い横長の目に口裂け女のようなでかい口に下品な叫び声にでかい声…まるで化け物ではないか?


奥方様の言う通りじゃ。などと周りの者は同調している。


山県昌景は馬鹿なのか?と真剣に思った。


人の悪口を言う者にろくな者はいないが…あれはないだろう。


誰がどう見ても、相手は不細工な人間以外の何かの化け物だ。


自分の顔を見たことがないのか?それとも本気で自分が美しく、自分達が正しいと周りもそう思っているのか?


「きもい!きもいのう!甲斐の山猿が!」


山県昌景はまだ言うかと思った…勿論山県昌景だけでなく武田勢1万もそう思っていた。


しかも頭も弱いらしい。此方がわざわざ降伏を進めてやったにもかかわらず堅固な城とは言え僅か千の軍勢が1万の軍勢に喧嘩を売っているのである。


勿論売られた喧嘩は買うが、城攻めは3倍の兵力があれば良いと言うことを知らないらしい。


この時代の女だから計算もできないのはわかるが、武田勢は、城攻めに必要な人数の3倍以上の兵力なのである。


しかもこちらは、武田家最強の赤備えを中心とした軍勢である。


「ああきもい、きもい、気持ち悪いのう!」


山県昌景も最初は城兵は降伏すれば助けようと思っていたが…汚い言葉をでかい声で浴びせ続ける下品な女に流石に堪忍袋の尾が切れた。


「よいか皆の者。敵は皆殺しとする。一兵たりとも生かすことはないと心得よ!」


「そしてあの化け物を討ち取った者には恩賞は思うがままぞ。できるだけ惨たらしく殺せ!」


うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


武田勢の叫びが地面を揺らす。


「かかれぃ!」


散々馬鹿にされ怒りを堪えていたことと、恩賞のこともあり、武田勢は殺気立って古河御所へ押し寄せる!


あっというまに正面の門を破り武田勢が突入する。周りが水に囲まれていると守るのにも有効だが逆を言えば逃げ場がない。


あっというまに各所から火の手が上がる。赤備えを中心とした武田勢は雪崩れ込み次々と城兵を討ち取っていく。


「よいか!女、子供も残らずに皆殺しにするのだ!」あの化け物配下の者は山県昌景は1人も生かしておくつもりは無かった。


城からは次々と断末魔の叫びが聞こえてくる。そして追い詰められた化け物は両手足を切り落とされ、身体中を切り刻まれた後に首を刎ねられたのだった。


こうして古河御所は落城したのである。


上杉勢の別働隊に攻められた宇都宮城とこの後、山県昌景に攻められた小田城は降伏して開城した為、犠牲者は出なかった。


勘違いして武田勢を侮辱した足利勢のみ皆殺しにされたのであった。


しかし武田の赤備えと山県昌景の恐ろしさは周辺にその名が轟くことになったのであった。


自身の城が落ちたことを知った宇都宮広綱と小田氏治は降伏した。


そして、佐竹勢と里見勢もやっとの思いで逃げ帰ったのである。


こうして小田原城の戦いにおける戦闘は終結したのであった。


時として見せしめは必要悪です。

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