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大崎玄蕃と名を変え生き延びた武田勝頼の末裔の咆哮  作者: 吉良山猫
第3章甲斐動乱篇
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涙の再会

流石の武田、上杉連合軍も無理な進軍をしてきた為、暫く甲斐で休息が必要です。

武田勝頼と上杉政虎が府中に入ってからも抵抗らしい抵抗もなく躑躅ヶ崎館に辿り着いた。


武田、上杉連合軍1万は部隊を展開させずに様子を伺う。


勝頼は「妙だな?今川家家臣と太原雪斎はもしや駿河に逃げてしまった後かもしれんとは思ったが、兄上や家臣達が誰もいないのはおかしい?」


政虎が「うむ、何か罠があるやもしれぬな!」


葵が風魔衆を使い、人間ピラミッドを作りだし1番上の二人の手を踏み台にしてピョンと空に跳ねる!


「勝頼様、罠はなさそうですが入り口の奥に誰か平伏してますよ!?」


忍者の次期棟梁と言うこともあり、葵は運動神経が良く、視力、動体視力共に常人のそれを圧倒していた為、こんな芸当が出来るのである!


そしてさりげなく着地に失敗したふりをして勝頼の胸に飛び込み抱き抱えられる!


あっちゃー失敗しちゃったテヘペロみたいな顔と仕草をしている葵だが勝頼は思った…「こいつ絶対にわざとだな!」


上杉政虎もジト目をしている「絶対わざとね」


それを羨ましく思ったのか網丸が馬場信春の胸に飛び込んで抱っこしてもらおうとセィッ!と跳ねるが信春はさっとかわす…キャイン


哀れ網丸よ…ただ自分でもかわすかなと苦笑いする勝頼なのであった。


一応警戒しながらも屋敷の門をくぐるとそこには2名の人物が平伏している。


勝頼が口を開く「何者だ?」


上杉政虎や葵、家臣達は皆刀に手をかけ警戒する。


「お待ちしておりました勝頼様。我が名は武田信友、父より伝言を預かっております!」


「父だと?顔を上げよ!」


両名が顔を上げた際、ある者が悲鳴の様な声を上げ涙で目を潤ませている!?「あ、姉上!?」


そう門の中で平伏して待っていたのは、武田信虎の子である武田信友と信虎が駿河で命を助けた早川殿であった!


涙を流していたのは、勿論北条千代丸であった!


姉上だと?早川殿を知らない周囲の者達は怪訝そうな顔で千代丸と早川殿を眺める。千代丸が早川殿に駆け寄ろうとするのを周囲に止められそうになったが、勝頼が良い!行かせろ!と目で合図する!


北条千代丸と早川殿がお互い涙を流して抱き合っている!


風魔葵はつられて涙を流している。そして勝頼の袖で涙を拭う…おい!だって…グスン…


武田信友が口を開く「詳しい話は中でよろしいでしょうか?」


「ああそうだな!」


武田勝頼を中心に上座の左右には上杉政虎と風魔葵が控えている。


主だった者が集まった中で武田信友が詳しいことを話し始める。駿河での今川義元による北条氏政、松田憲秀の暗殺について、早川殿は北条氏康の娘で今川氏真に嫁いでいたが、氏真が織田から姫を貰い同盟した為、邪魔になった早川殿を殺そうとしたところを武田信虎達が救った事などを話した。


武田勝頼は忍びの報告によりある程度は知っていたが、武田信虎に早川殿が助けられたことや、織田家との婚姻など詳細は初耳であった!


「今川義元め、汚い事をする!」上杉政虎が怒りに震えている!


「しかし千代丸よ?早川殿のことを姉上と言わなかったか?」


「はい勝頼様、父氏康より口止めをされておりましたが、某は北条氏康の五男千代丸にございます。今まで黙っており申し訳ごさいませぬ」


「良い!お主が間者でないことは勿論信じているし、私によく尽くしてくれているのは紛れも無い事実だ!」


勝頼は北条千代丸の正体を聞き全てを察した。千代丸が自分に仕えたかったのは事実だが、北条氏康より正体がばれれば仕えさせてもらえぬ可能性や他の家臣によく思われないと思っての行動だろう。


早川殿も今までの経緯を詳しく勝頼に話す。


そして武田信友は、武田義信が枯骨と言う僧に化けた何年も前に死んでいるはずの太原雪斎によりケシ漬けの廃人にされ、操り人形として躑躅ヶ崎館の変を起こしたことを報告した。


武田義信が太原雪斎にケシ漬けにされていたのは誰もが知らないことであり、その場にいた全員が怒りに震えるのであった!


皆が誓った!絶対に!絶対に今川義元や今川氏真、太原雪斎は地獄に堕とすと!


川中島の戦い前まで今川方だった本多忠勝でさえその汚い所業に怒り心頭であった!


いくら何でもありの戦国時代であったとしても人として許せる行為と許せない行為があるからだ!


「して兄上はどうなったのだ?」


武田信友は武田義信が武田信虎により斬られ、今川夫人も首を討たれたことと、その経緯を詳しく語った。


「そうか…兄上は逝かれたか…」


皆黙っており沈黙が続くが、武田信友が襖の奥より武田義信と今川夫人の首を勝頼の前に差し出す。


勝頼は本来ならばすぐにでも手厚く葬ってやりたかったが、大名として私情を挟む訳にはいかない。今川夫人の首も今川義元に塩漬けにして送ってやっても良かったのだが勝頼はそこは甘かった。


「逆賊武田義信の首は府中に晒せ!今川夫人の首は手厚く葬ってやれ!」


勝頼は兄に同情と申し訳ない気持ちがあったが、上に立つ人間は時として非情にならねば人はついてこないし舐められる。今川夫人の首を晒さないのはせめてもの温情だ!


今川夫人には直接的に罪はない、そしてどんな女でも醜い顔は他人には見られたくないものだろう!晒され朽ちていくなら尚更であろうと!


「してお爺様はどちらにおられる?」


「はは!これを!」武田信友は懐より書状を取り出す。


文には武田信虎と武田信玄の関係、勝頼に手を下させるのは酷だと思い今迄祖父らしい事を何一つできなかった為、代わりに武田義信を斬ったこと!


芝居とは言え家臣団や領民に良く思われていない自分がここに居ると家中が乱れる恐れがある為、自身は京都へ向かい上方の情報を探るので武田信友と早川殿の面倒を勝頼に見て欲しいこと!


そして成長した孫である武田勝頼を誇りに思うとともに武田家を頼むが祖父はいつでも勝頼の味方であり困ったことが起きればいつでも協力するとの事が書かれていた。


勝頼は馬場信春に手紙を渡し、皆の前で読ませた。


これにより勝頼に近しい者達の中で武田信虎を悪く言う者はいなくなった。


勝頼は北条千代丸には兄弟水入らずで過ごすことを命じ、武田信友には武田信虎に路銀を送るように命じた。


そして家臣達や兵を休める為にも夜まで一時解散とした。


皆が去る中で勝頼は馬場信春を呼び止めた。暫く晒した後になるが、その後兄上の首も今川夫人と同じ場所に内密に手厚く葬ってほしいと頼んだのだ。


すぐ背後にいた政虎や葵は勿論のこと、聞こえてないふりをしながらも聞こえていた家臣達は勝頼の心情と優しさを思い涙するのであった…

小田原城の戦いや木曽福島城での戦いも同時に進行しています。

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