川中島の戦い2
風林火山の旗は武田家臣団にとって特別なものです。そして武田勝頼は武田信玄に容姿がそっくりなのです!武田信玄の鎧をきてるので遠目で見たら武田信玄だと錯覚するでしょうし、この時代噂の効果は絶大です。
川中島の戦いにおいて武田勝頼は持てる全戦力を投入していた。
武田勝頼は数で劣る為、短期決戦により敵を打ち破り、別働隊が来るまでに勝負をつける以外に勝利はなかったのである。
幸い今川方の主戦力は甲斐兵達であり、誰もがそれを拠り所として戦ってきた風林火山の旗が敵陣にひらめいており、目の前には死んだはずのお館様…即ち武田信玄が攻め寄せてきているのである。
本陣の前線への突撃は一国の大名としては軽率であり愚策であったが、今回ばかりは事情が違った!風林火山の旗を見慣れていた甲斐兵達にはそれが武田信玄の本物の旗である事はわからない筈はなかったからだ!
しかも武田信玄の甲冑を着た武田勝頼を武田信玄と勘違いしてしまったのである!
人間は興奮時に一度それと信じてしまうと、冷静な時はあり得ないと思うことも信じてしまう。
お許しをと戦意を喪失して逃げ出してしまう甲斐兵達が続出したのだ!
史実において武田勝頼は強すぎる大将と呼ばれ、家臣達からは武田信玄と言うよりは、その戦い方は軍神上杉謙信に似ていると言われた程である!
織田信忠により滅ぼされ、優秀すぎる父武田信玄と比べられ、織田信長を主人公にした作品ではやられ役の愚将に書かれることが多いが、実際の武田勝頼は優秀なのである!
そして元々強かった武田勝頼であるが、転生前の能力に加えて、毎日上泉信綱に死ぬほどしごかれてきた為にもはや修羅と化していた!
甲斐兵達の士気は下がったが、三河勢の士気は高かった為、勝頼は松平元信に襲いかかったのだ!
武田勝頼率いる本陣は山県昌景率いる武田の赤備えを追い抜き三河勢の横腹を突く!
「皆の者!命を惜しむな!名を惜しめ!勝負所は今と心得よ!疾きこと風の如く!静かなること林の如く!侵掠すること火の如くだ!」
本陣の横腹を突かれた三河勢は大混乱に陥る!右翼と左翼の石川数正と服部半蔵は動揺した!殿を守らねばと!
少し先に松平元信と思われる若武者とそれに付き従う鹿角の兜の若武者が見えてくる!
「信綱!やれるか?生け捕りにするぞ?」
「御意に!」
武田勝頼は松平元信の右肩を槍で貫く!そして落馬した松平元信に対し馬廻に「今だ!捕らえよ!」と命じ捕らえさせる!
鹿角の兜の若武者は主君を助けようとするが、上泉信綱が目の前に立ち塞がる!
「某を前にして他人の心配か?随分と侮られたものだな?」
若武者は家康に過ぎたるものと史実で武田信玄に言わしめた、本多平八郎忠勝であったが、いかんせん彼は初陣で若過ぎた!
上泉信綱の実力を見誤っていたのである。
本多忠勝は名槍蜻蛉切りを振るうが、上泉信綱に全て紙一重でかわされてしまう…そう、達人による見切りであった!
「筋は良いがまだまだ青いのう!では今度はこちらから馳走しよう!」
上泉信綱が槍を繰り出すと本多忠勝は防戦一方になる…
本多忠勝の額の汗が目に入った瞬間に、上泉信綱の槍の石突きが本多忠勝の眉間に打ち込まれていた…本多忠勝は白目を剥き馬上から崩れ落ちる!
「勝負ありだな!まだ死んではいない筈だ!捕らえよ!」
こうして松平元信率いる三河勢4000は壊滅したのである!?
次は太原雪斎の本陣だと思っていた際に敵兵から歓声が上がる!
背後から別働隊が迫って来ていたのである!
武田勝頼は目の前が暗くなった気がした…しかし様子がおかしい?何かに追われているようであったのだ!?
「これはどうしたことか?」
勝頼は疑問に思ったが理由はすぐにわかった!
別働隊を追い立てる軍勢が、別働隊の背後から迫っていたからである!
それは白地に毘の旗を掲げる軍勢だったからだ!
「まさか!?」
そう上杉政虎率いる越後勢が武田勝頼を助けるべく駆けつけたのだ!
上杉政虎は蘆名勢へは新発田重家に援軍を送り、自らは何とか八千の兵をかき集め武田勝頼を…自らの旦那を死なせてなるものかと川中島に駆けつけたのだ!
戦国史上最強と言われる越後の龍、毘沙門天の化身、軍神上杉政虎である!その強さと上杉軍の強さは折り紙つきである!
怒れる龍の強さは凄まじかった!別働隊は次々と屍を増やす結果となった!
飯富虎昌が武田義信を逃がす為に自らが殿となったのだが…自ら先頭に立ち突撃してくる上杉政虎によってその首を討たれたのであった…
「敵将飯富虎昌はこの上杉政虎が討ち取ったり!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
上杉軍の士気は高く、実質別働隊の大将とも言える飯富虎昌を討ち取られたことにより、別働隊は軍勢として機能しなくなっていた!
武田義信はケシにより精神を蝕まれていた為、虚ろな目で家臣に守られて逃げる事しか出来なかったのである。
上杉政虎が援軍に駆けつけたことにより、完全に武田勝頼と武田義信の優位差は逆転したのである!
そして決着の時は近づくのであった…
武田信玄もそうですが、この時代上杉謙信の強さは知らぬ者がいないほどです!戦力がととのった長篠の戦いの頃の織田軍は手強いですが、全盛期の武田信玄(勝頼)と武田4名臣に雑賀衆、剣聖、前田慶次郎、上杉謙信を一度に相手にしたらどうなるかを考えれば恐ろしさが分かると思います。