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大崎玄蕃と名を変え生き延びた武田勝頼の末裔の咆哮  作者: 吉良山猫
第3章甲斐動乱篇
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御旗楯無も御照覧あれ!

武田勝頼が正式な当主になります!甲斐は占領され武田勝頼の領地は信濃一国と越中半国ですが加賀で…

甲斐国甲府にて躑躅ヶ崎館の変が起こり、駿河国駿府館にて北条家への騙し討ちによる虐殺が行われていた際に霧隠才蔵は甲斐に残した配下と駿府に放った自身の配下からの伝書鳩経由の報告により、躑躅ヶ崎館がその後どうなったか、駿府館がどうなったかを把握していた。


真田忍軍は信濃各地に駅のように鳩のリレー地点を設置しており、そこに配下を置くことで素早い情報の伝達が可能になっており状況の把握が可能になっていた。


霧隠才蔵は歯ぎしりしながら馬を走らせる。真田忍軍は信濃に鳩の駅だけではなく、独自の厩も作っていた為、馬が疲れる頃には新しい馬に交換してまた全力で走れる伝馬制を用いていた為、情報の伝達が早かった。


そして躑躅ヶ崎館で、早朝、日が明るくなる前に謀叛が起きてから必死に駆けて夜には海津城に辿りついていた。


勝頼の寝所にて「勝頼様!火急の要件にございます!」


「くせ者!?」葵がクナイを投げる!何故葵がいるのかと言えばいつものごとく勝頼の布団にこっそり潜り込み添い寝をしてたからだ!


そして相手が霧隠才蔵だと分かると「護衛です。内密に」とコソコソと畳の下に潜ってしまう…


葵の大義名分は勝頼の護衛と夜這い防止だとかそうでないとか?


勝頼は目を覚まし「こんな夜分に如何した!?才蔵?」と問いかける。


「今朝早朝に武田義信様御謀反!」


「なんだと!?」


「背後には今川義元がいるようでござる。そして武田信玄様、高坂弾正様行方不明、山本勘助様騙し討ちにて落命、武田信廉様、降伏後に斬首!」


勝頼は絶句した…まさかこんな事態が起きるとは…史実では桶狭間の合戦後に今川義元が討ち死にし、弱体化した今川家を攻め滅ぼすのに反対した今川家の姫を妻に持つ武田義信が謀反を計画したが、飯富昌景の密告によりそれが明るみになり武田信玄により主犯の武田義信は軟禁、傅役の飯富虎昌が打ち首になり、その後武田義信も暗殺されたのは勿論知っている…


しかし今は桶狭間の合戦前である!?一瞬山県昌景を引き抜いたのが歴史を狂わせたかと思ったがそれはない!時期が早すぎるからである!


勝頼は直ぐに重臣達を海津城に集め霧隠才蔵に事の次第を報告させた。


家臣達は驚き絶句した…そして誰もが思った…何と愚かな事をと…


家臣が集まる前に同時進行で勝頼は書状をしたため信濃各地に早馬を飛ばし海津城に集まるように手配していた。書状を受け取った者は海津城目指してすぐさま駆けつける事になる。


そして霧隠才蔵は山本勘助や武田信廉の最後に関しても詳しく説明した!


「勝頼様、申し訳ありませぬ!我が兄が…まさかこのような事に加担するとは!?」


山県昌景が涙を流しながら額を床にこすりつける…


「昌景が謝る事はない…愚かな兄とそれを見抜けなかった父の失態だ!」


「しかし山本勘助殿までが…」


山本勘助と仲の良かった馬場信春が悔しがる…「その上お館様と高坂殿が行方不明とは…」


「父上や高坂弾正に関しては無事を祈るしかあるまい!」疲れた顔で勝頼が呟く…


「しかし降伏した親族であり叔父である武田信廉殿の首を刎ねるとは何たる外道よ!」上泉信綱が殺気を放ちながら話す。


武田義信の行為は謀叛だけでも許せないのだが、騙し討ちに、降伏した親族までの皆殺し…これでは誰もついていかないだろうと普通の者なら思うはずだ!?


そして今川家の騙し討ちによる北条氏政、松田憲秀、早川殿の処刑に関しても嫌悪感以外の何物でもでもなかった…


普通の者なら逃げ出したくなるようなものだが勝頼は違った!


「皆の者!ここに父上からの書状がある!各自読まれよ!」


書状には謀叛のこと、武田家の家督は武田勝頼に譲ること、弟武田信繁は勝頼の後見人になること、真の武田武士なら勝頼に従い憎き敵を滅ぼし、武田の旗を必ず京に立てることという内容が書かれていた…


そして各自が勝頼と共に武田家を守り、必ずこの苦境を乗り越えいつの日か京に武田の旗をと誓うのであった。


勝頼の書状と呼びかけに関して直ぐに海津城に武田信繁、秋山虎繁、仁科信盛、原昌胤が集まった。


彼等は既に全ての事情は飲み込めていた。


海津城広間の上座に座る武田勝頼の背後には御旗楯無が置かれている。


躑躅ヶ崎館の変の際に武田信玄が霧隠才蔵に託したのは直筆の書状とこの御旗楯無だったのである!


御旗は源頼義が後冷泉天皇から賜わったもので、その子の源頼光(新羅三郎義光)が1056年頃に受け継いだ甲斐源氏の棟梁の証であり、楯無は源為義から代々伝わる武田家の正式な後継者の証なのである!


武田信繁は兄が武田勝頼に家督を継がせる為に御旗楯無を託し、手紙を残し自身に後見人を託した事を重く受け止め勝頼への忠誠を誓う!


「皆の者!今、目の前にいる武田勝頼様こそ兄武田信玄が認めた真の武田家の後継者よ!御旗楯無もここにある!それでも謀叛人武田義信に従いたい者は今すぐここから去られよ!」


「兄武田信玄より武田勝頼様の後見人として指名されたこの武田典厩信繁!喜んでこの役目お受けいたす!」


「無念ながら甲斐は謀叛人により敵の手に落ちた!しかしここにおられる武田勝頼様こそ甲斐源氏武田宗家二十代目と心得よ!?」


ハハーッ!


こうして武田勝頼は武田典厩信繁を後見人に正式に甲斐源氏武田宗家に二十代目として家督を継承したのである!


勝頼が叫ぶ!「御旗楯無も御照覧あれ!」


この勝頼にとっての絶対的不利の中での家督継承だったのだが、山県昌景と馬場信春は涙が溢れ出していた…


取り立ててくれた武田信玄に謀叛を起こした者は許せない…しかし、勝頼が幼き頃より抜擢され寄り添い家族のように大切な時間を歩んで来た彼らは武田勝頼に兼ねてから家督を継がせたいと思っていた…この方こそ天下を治める人物だと信じて疑わなかった!だからこそ勝頼の産まれた順番や身分を呪った…


今は絶対的不利な状況であるが武田勝頼が武田家の正式な当主になったことにより自分達が命を投げ出して支えればきっとこの日本を救う事が出来る存在だと信じて疑っていない!!


「山県よ!我等のやる事は決まったな!?」


「おう馬場よ!これから幾多の苦難の連続だろうよ!しかし我等でお支えし武田の天下を築く好機よ!」


武田勝頼の家臣団は誰もが勝頼の能力、人柄に惚れ込み天下統一を夢見ていた。今、目の前は地獄しかないが…その先の未来に期待していた!


皮肉な事に今川義元が企み甲斐を奪われたこの陰謀により、信濃にいる武田家は武田勝頼を中心に団結したのである!


この後で、細かい今後の対策が海津城で話し合われた…


その後に勝頼は「皆すまない!今年は今までのように楽しい宴を催すことは無理やもしれぬ…」


その言葉を聞いた葵はワナワナと怒りに震え血の涙を流すのだった…許すまじ…許すまじ…私の食い物の恨みぃいいい!?今川義元は狸の尻尾を踏んだのである!

遂に武田勝頼が独立です!ただ今川まだ罠をはっています。枯骨が…

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