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大崎玄蕃と名を変え生き延びた武田勝頼の末裔の咆哮  作者: 吉良山猫
第2章海津城編
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永禄三年

永禄三年(1560)武田勝頼にとって一生のうちで一番長いと感じる試練の年が始まります。

永禄二年の年末12月24日に勝頼は上杉政虎と風魔葵に贈り物をした。


勝頼が助五郎に命じて南蛮からサファイアとルビーを手に入れていた。金や銀に比べて宝石は場所によっては安く手に入る。勝頼はそれを髪飾りに加工して金の髪飾りにルビーをあしらった物を上杉政虎に、金の髪飾りにサファイアをあしらった物を風魔葵に贈った。


上杉政虎も風魔葵もこの贈り物の意味がわからなかった。


勝頼は伴天連の神の大切な日で南蛮では贈り物を送る習慣がある事を伝えた。


そして一緒にドライフルーツを挟んだケーキを贈ったのだがこれは二人の腰を砕くのに十分な効果があったようだ。


今も昔も女子はスイーツに弱いのだ!


勝頼は令和の時代ラーメンや吉野家の牛丼が好きで、それを一緒に食べるのが好きだった為、お洒落な食べ物を食べたい女子からは全くモテなかったが、女子が甘い物が好きなことだけは知っていた。


婚約者の上杉政虎に贈り物はわかるが何故、風魔葵に?と思うかもしれないが、その本心は勝頼のみぞ知る…


年末になり勝頼は重臣である、筆頭家老の山県昌景、次席家老の馬場信春、上泉信綱、前田慶次郎、雑賀孫市、真田昌幸、霧隠才蔵、北条千代丸を呼んで12月28日には餅つき大会を行った。武闘派が多い勝頼家臣団は凄い勢いで餅をつきあげていく。


意外な才能を発揮したのは風魔葵だ!つき手に関して手水を入れて餅をこねるのが美味い!


勝頼は思った…葵は餅肌だし、これだけ餅をこねるのが上手いのは余程餅が好きなのであろうと…こじつけた!


そして正月の供えの餅は大量に用意できたがその場で味わうのも忘れてはいない。


勝頼が一番好物の辛味餅!この為に銅で特注のおろし金を職人に作らせたほどだ!?そして餡子餅にきな粉餅をこしらえて皆で食べる!美味い!美味すぎる!そこにいる誰もが幸せであった。そしてこんな幸せがいつまでも続いて欲しいと切に願うのであった。


年末にお歳暮に最上家には鮭をまとめて贈った。日本で流通している鮭は主に白鮭なので、銀鮭を贈った。いつかは約束通りキングサーモンを贈ろうと思っているが、キングサーモンは最後の最後の予定だ。


蝦夷を抑えたからこそできることである。銀鮭は養殖を考えており明智光秀に色々指示をだしている。


最上家でもその身の柔らかさと油の乗った美味さに大好評だったようだ。


いよいよ年末になり各自が里帰りすることになった。風魔早苗と北条千代丸には北条領は今年は大飢饉であったはずだからと餅を沢山持たせてやった。


葵はいつも通り風呂敷姿なのだが勝頼はそれが好きだった。なんか和むのである。こないだの狼の毛皮を使ってチャームポイントに尻尾をつけた葵専用のリュックサックを既に作らせてあるのだが、この何とも言えない風呂敷を背負う姿が好きで渡せないでいた。


各自がそれぞれ故郷に散って言ったのを確認すると勝頼は崩れ落ちた…


「勝頼様!?」家来が駆け寄るが勝頼は言った。


「良い!ただの風邪だ!私が体調が悪い所を見せたら皆が楽しく故郷に帰れなかろう?私はそれが嫌だったのだ!」


勝頼が倒れたのは内密であったがまだ領内に残っていた山県昌景と馬場信春が駆けつける。


「勝頼様!」


「すまんな昌景、筆頭家老として献上品を持って私の名代として躑躅ヶ崎に挨拶に行って欲しい…頼めるか?」


「御意!挨拶のことはこの昌景にお任せくだされ!」


「すまない昌景、そして信春…」


「はっ!勝頼様」


「信春には私の代わりに春日山への献上品と挨拶に行ってもらえぬか?躑躅ヶ崎に行けなくなってしまうが…」


「ハハッ!水臭いことをおっしゃられますな、某に任せて勝頼様は療養致してくだされ!」


「二人ともすまないな!里帰りしている者達にはくれぐれも内密に致せ!皆の邪魔になりたくないのでな!」


山県昌景と馬場信春はクッと涙を流す…この方は自身のことよりも我々家臣達のことを心配して下さると…


「山県よ!」


「なんじゃ馬場?」


「我等は本当に良き主君に仕えたな!」


「全く同感よ!」


重臣二人は勝頼の気配りに驚くと共に、体調が悪いのに自分達の心配をする若い主君が何より愛おしく、誇りに思うのだった!


そして、勝頼の為にも自分達の役割をしっかり果たそうと!


そして運命の永禄三年が始まった。勝頼は熱が下がらない為、一人海津城で寝込んでいたが、皆が家族の元や故郷で楽しくやっていることを思うと笑みさえ漏れた。


勝頼は行くあてがない者以外の全ての者に休みを与えた。


自身は体調は良くなった!大丈夫だと強がり空元気で誤魔化したのだ。


「ゴホゴホ…これでいい…これでいいのだ。私は一人が何とかすれば全ての者が笑顔になれる…」


勝頼はその強面の外見から周りを威圧していると良く誤解されるが実は自己犠牲の精神の持ち主であった。


正月も3日目になったころ勝頼は茂作に作らせた抗生物質を飲み症状は安定していたが、まだ食欲がなく、熱が出たり下がったりしていた為意識が朦朧としていた…


そんな中で冷んやりして気持ちいい…そして温かい…勝頼はその後3日ほど意識を失い目を覚まさなかった。


勝頼が目を覚ました時はもう正月も半ばを過ぎていた頃だった。


勝頼の横には涙の跡がある葵が寝ていた…


勝頼は周りの者達に尋ねると、勝頼が意識を失った直後、越後から単騎で上杉政虎が駆けつけてきて、看病しながら添い寝をして温めて、葵が風魔の里から帰ってくると、葵に事情を話して後のことを葵に任せて越後に帰っていったとのこと…


その後葵は泣きながら寝ずに看病してくれていたらしい。


「すまなかったな葵、そしてありがとう政虎!もう私は大丈夫だ!」


意識を取り戻した勝頼の胸に葵は泣きながら飛び込んだのであった」


越後で勝頼回復の報を聞いた上杉政虎は胸を撫で下ろし…良かった…本当に良かった…毘沙門天よ感謝致しますと目頭が熱くなるのであった。


勝頼は自身が二人の女性に救われたことを知り、私の為に…なんて感謝したら良い…なんて愛おしいのだ…


胸が熱くて苦しいと思うのであったが…


「勝頼様、まだ痛みますか?」


葵がすっとんできたので…「ありがとう…大丈夫だ!」


と無言で抱きしめるのであった…

今年は戦もありそうです。ただ恋愛やほっこりやギャグも大切にしたいと思います。

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