表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大崎玄蕃と名を変え生き延びた武田勝頼の末裔の咆哮  作者: 吉良山猫
第2章海津城編
61/169

山の中の死闘

山を舐めると恐ろしいことになります。皆さん山には気をつけましょう。

季節は秋になっていた。海津城の庭も紅葉や楓、銀杏など木々の紅葉が美しい。


村々では収穫祭が行われ大地の恵みに感謝している。治水や井戸、用水路などしっかりと整備管理された勝頼の領地は今年も大豊作であった。


葵達は冬の前の食料確保に毎日収穫や木の実拾い、キノコ採りなど大忙しであった。


そしてその日の晩に勝頼は家臣達に指示を出す。明日秋の収穫を祝うと共に皆の者の日々の働きを労い宴を開こうと思う。


うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?


家臣達から大歓声が起こる。


領主たる者、家臣達の為に時々息抜きや娯楽、慰安を提案して団結を高める事が必要だ!


特に葵と前田慶次郎の歓声が大きい。


「よってだ、各自に食材調達の手伝いを頼みたい!」


おう!!!家臣団は力強く答える。領内の財務や管理は真田昌幸に任せているので昌幸には会場内の差配を命じた。


千代女には勝頼が指示を出し料理の手伝いをするように命じ、千代丸には野菜類の調達を命じた。


「昌景は海の幸を手配して貰いたい!信春は秋鮭をなんとかして欲しい。」


承知致した!と両名供笑顔でこたえる。


「葵は風魔衆を使いきのこ類や山菜、木の実などを頼む。」


松茸は特に多めにと話しておいた。この時代は現在と比べて椎茸などの方が高く松茸はそこまで価値はないが沢山採れたのだ。


「勝頼様、美味いものが食べれるのですか?」


椎茸や舞茸ではなく松茸を特に多めにと言ったことにより葵は不安そうな顔をしているが…


「無論だ!私が今まで不味いものを食べさせた事があったか?」


勝頼が胸を叩いて自信たっぷりに答えると葵の表情はパァァァと明るくなり目の奥がギランと光った。美味い物を食う為には頑張るしかないと!


「重秀と慶次郎は私と共に山に獣を仕留めに行くぞ!」


重秀も慶次郎も豪胆な武闘派である。自分達の配置に満足して豪快に承知した!と答える。


上泉信綱は言うまでもなく勝頼と一緒だ。


葵も勝頼と一緒がいいとほっぺをフグの様に膨らませてぶーぶー抗議するが…因みに網丸もぶーぶー抗議するがぶーぶーの音…口じゃないほうからでてない?と一同が鼻をつまみ大爆笑となった。


「きのこや山菜は葵が1番詳しい。今回の主役は松茸なのだ!1番大切なことを信頼する葵に任せたいのだ」


その言葉を聞いた葵の鼻はピノキオの様に天を貫くのだった。


やれやれと勝頼は苦笑いをする。


網丸と2人で並んでえっへんのポーズをとっているので皆は笑いを堪えながらも和むのであった。


昌景と信春は優しい目で笑みを浮かべている。信綱も珍しくニコニコしている。


隣同士だった慶次郎と重秀はお互いに話をしている。


「まるで主従と言うより大きな家族の様だな!本当にここに来てよかった」とニカリと慶次郎が笑えば、重秀も「まっこと私等は幸せ者だ!」と豪快に笑うのであった。


翌日各自は其々の持ち場に散っていった。


勝頼達狩猟チームは鉄砲に槍を持ち配下には槍と弓を持たせて50名ほどで山に入った。


熊、鹿、猪、狸、うさぎ、狐、穴熊、野鳥辺りが獲れれば上出来だと思っていたが行く途中で大鷹のルミ号がうさぎや鴨などを捕獲していたので狙うは大物だと皆が山深くへ入っていった。


前田慶次郎は根っからの勝負や博打好きで皆に提案してくる。


「どうだ?誰が1番大物を仕留めるか勝負せぬか?」


悪戯っぽい笑顔で話すが目は笑っていない。本気だ!


鈴木重秀は「鉄砲で某に挑むとは笑止!受けてたつわ!」


と豪快に叫ぶと…「致し方ない。勝負とあれば受けますが後で泣き言を言っても知りませんぞ!」と上泉信綱は不敵に笑う。


勝頼は「よし!勿論私も参加するが3名の中で1番大物を仕留めた物には私から銅銭2000枚の賞金を出すぞ!」


これがますます火に油を注ぐ形となり皆目をぎらぎらさせながら別れていく。


勝頼は小物には目をくれず森の奥に入っていくのだが中々獲物が見つからない。沢で水を飲み獲物を探す為に小高い場所に登ろうとしたが、急にルミ号が大声で泣き勝頼に危険を知らせる。


なんだ!?熊でも出たか?勝頼は咄嗟に鉄砲の火縄に火をつけるが…不味いな、囲まれた!


そう勝頼はいつのまにか30頭程の日本狼の群れに囲まれてしまっていた。


馬鹿な!?狼は夜行性だろうと思いながらも薄暗い森な奥で多分彼等の縄張りに入ってしまったのだろう!


勝頼は背中に汗をかく…不味いな、重秀や慶次郎達は逆方向だ!しかも狼の数が多い!リボルバーが完成してればともかく今勝頼が持っているのは将用に富山城から取り寄せているライフリングされた改造火縄銃だ!威力はあり威嚇には最適だが連射が効かないので1発しか撃てない。逃げるか?しかし狩のプロである日本狼は獲物を逃す様な囲みはしてないだろう…


万事休すだ!自身が上泉信綱に鍛えられてより強くなった為、慢心して一人で森の奥の狼の縄張りに来てしまったことを勝頼は後悔した。


くそ、調子に乗りすぎた。しかも狩りの格好なので勝頼は鷹狩りの様な軽装で鎧はつけてない。


あるのは改良火縄銃一丁に槍1本、刀の大小だけだ!


「是非に及ばず!」


勝頼は改良火縄銃を構える!噛まれると不味いな!狂犬病になったら流石のチートの勝頼もあの世行きだ!しかしこの数ではどうやら無傷ではすみそうもない。


じりじりと狼達は低い唸り声をあげながら牙を剥き出し勝頼に近づいて来る。


ガゥ!次の瞬間一頭が勝頼に飛びかかったので眉間に改良火縄銃の一撃を撃ち込む!


ドゥンと言う轟音と共に狼が吹き飛ぶ!勝頼は槍に持ち替え円を描く様に振り回すことで狼との間合いをとる。しかし槍は懐に入られると弱い!一匹でも内側に入られたら槍は使えない!勝頼は殺気を放ち威嚇するが狼達は縄張り意識が強くたとえ相手が強敵であっても向かってくるだろう。


勝頼の殺気と覇気に中々近づけないでいる狼達だが群れのリーダーであろう一際目立つ大きめの狼が吠えると一斉に襲いかかってきた。勝頼は槍で薙ぎ払い吹き飛ばすが、死んだのは数頭のみで打たれた狼も再び襲いかかってくる。


間合いに2匹ほど入られたのでちぃ!と舌打ちをしながら槍を捨て正宗を抜き斬り捨てる。


勝頼の周りには10頭程の狼の死骸が転がっておりルミ号も上空からの攻撃で援護してくれているがいかんせん数が多く敵は連携が取れている。


じりじりとこちらの体力を奪い嬲り殺すつもりか

?流石の勝頼も大勢の狼相手に苦戦している。しかも足場が悪い。狼の攻撃をかわし斬った際足元を取られてしまう!


「しまった!」勝頼は転びながらも避けるが狼の爪で右腕に傷を負う!


これを見逃す狼達ではない。噛まれると勝頼が思った時だった。


上空から無数のクナイが降り注ぎ勝頼を襲おうとした狼達に降り注ぐ!


「勝頼様!」


「あ!葵なのか!?」


「何故ここに!?」


「そんなことは後です!」


葵は虫の知らせ(女の勘)で何か嫌な予感がしてきのこ採りを部下に任せ抜け出して網丸に勝頼の匂いを辿らせて追ってきたら勝頼が狼に囲まれ手傷を負い危ないところだったのだ!


青は腰に下げた特製の目眩ませ(唐辛子など危ない物を調合した忍者の武器)を投げつけ勝頼を抱え起こす!


「葵!助かったぞ!恩にきる!」


嗅覚の鋭い狼達はその目眩ませによって悶え苦しんでいる。そこを勝頼は踏み込んで数頭斬り捨てる!葵は逆方向の狼達にチャクラムを投げ狼の首が2つ飛ぶ。そして小太刀二刀流で網丸と共に奮戦する。いつもより葵の技の切れが良い!何故ならば、そう勝頼を傷つけられて激怒していたからだ!


目眩ませの方の敵を全て始末した勝頼は改良型火縄銃を拾い弾を込めて火をつける。


「葵!伏せろ!」


葵がさっと伏せた瞬間狼の群れのリーダーの眉間に弾が食い込む!?


「よし!今だ!」


数を10頭以下に減らしていた狼達は群れのリーダーがやられた事により統制が取れなくなっているが、それを見逃すほど勝頼も葵もお人好しではない。


勝頼は槍を抜き投げつけ一頭を串刺しにすると葵が勝頼の肩を踏み台にして飛び、クナイを投げ数頭仕留める。


その間に弾を込め勝頼が改良火縄銃を放つ!網丸は敵の足をかぎ爪で引き裂き機動力を殺してくれる。


「やれやれ片付いたな…」


勝頼はその場に座り込み肩で呼吸をしているが葵がいない!?


沢で水を汲んできてくれたのだ!さっと勝頼に差し出す!


「何から何まですまないな!本当に助かった!」


葵は笑顔で「勝頼様が無事で良かった!」と瞳をうるうるさせながら手当をしてくれる。


「そこまで私のことを」と勝頼は目尻に熱いものがこみ上げたが…


「勝頼様にもしもの事があればもう美味いものが永遠に食べられなくなってしまいます」


おいそっちかよ!と思わず突っ込みたくなる勝頼だったが、その言葉でさっきまでの緊張が緩み大笑いしたのだった。


葵は本当に食べ物も大切だが勝頼のことはそれ以上に大切であり照れ隠しでもあった。


勝頼と葵は部下に狼の回収を命じ城に向かって引き揚げるのだった。


下で待たせていた白馬の白子で勝頼が葵を背中に乗せて海津城に向かう途中勝頼は思った…背中に何か柔らかいものが当たる気がするけどまさかな…


そして、背後の葵の目に光るものがあったのを勝頼は知らなかった。


「本当に無事で良かった…」





次回は宴です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ