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大崎玄蕃と名を変え生き延びた武田勝頼の末裔の咆哮  作者: 吉良山猫
第2章海津城編
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前田慶次郎対上泉信綱

山梨のワインは有名ですが実は長野県のワインもかなりレベルが高いです。

百物語の次の日、朝早くにほっかむりをした葵と網丸が城から出て行った。


そして森の中へと消えていくのだった…


しかし葵はあるミスを犯していた。


尾行されていたのだ!?


それに気がつかない葵は森を入って行くと少し開けた場所にたどり着いた際に胸を撫で下ろす。


「良かった。昨日話しに出てたからここのことがばれたかと思ったよ」


葵は畑を耕し、雑草を引き抜き近くの沢から水を汲んできては水を撒いている。


しかし葵は気づかなかった!見られている事に!?


そう、葵が手入れをしていたのは自らの秘密の西瓜畑だったのだ!


そして尾行してきたのは武田勝頼である。


勝頼は毎日上泉信綱に稽古と言う名で血が出るまで可愛がって貰っている為、剣の達人は気配を消せると言うが、新陰流の一番弟子と呼べる程に成長していた勝頼は忍びでも気がつかない程に気配を消せるようになっていた。


しかし、そんな勝頼もミスを犯していた。勝頼も尾行されていたのだ!


勝頼の背後には笑顔の上泉信綱が立っていた!


「ヒッ!」


勝頼が声を上げそうになった際、上泉信綱に口を塞がれた。


「声を出したらばれてしまいますぞ」


そして師弟は、気配を消したまま森を抜けたのである。


「尾行に気づかないとはまだまだですな!これが某でなければその首は飛んでいましたぞ!」


「これはより厳しく鍛錬をせねばならぬようですな?」


「ヒィー!嫌だ、誰か助けてくれー!!」


畑仕事をしている葵は遠くで勝頼の悲鳴が聞こえた気がしたが気のせいかとせっせと働いていた。


その日の勝頼はなぜかボロ雑巾のように身体中あざだらけになっておりだ…だめだ温泉だ!と松代温泉で傷を癒すのだが先客がいた。


打ち解けて酒を飲み明かした山県昌景と馬場信春と前田慶次郎であった。


「いやあ、これはこれは勝頼様。また今日は男前が上がりましたなあ!」


「………」


勝頼は悶絶している。傷がしみるのだ!


「おのれぃ化け物め!」


「何か言いましたかな?」


勝頼の背後には上泉信綱が笑顔で立っている!


「いやあれだ信綱!ここにいる3人も是非とも手合わせ願いたいそうだ!」


「ほう、それはそれは!お手合わせ願いましょう」


昌景と信春は互いに槍の手合わせの鍛錬をするので槍の大会で優勝した慶次郎殿とお手合わせなさってくだされ!と上手く慶次郎にふる


慶次郎は「剣聖と呼ばれているようですが槍なら拙者も負けませぬぞ!」と豪快に笑う。


慶次郎は我流だがその凄まじい腕力と野生の勘で槍では誰にも負けたことが無かった。


「面白い、槍で手合わせ致そう」


上泉信綱が不敵に笑う。


面白そうな手合わせなので場所を海津城下の上泉信綱の屋敷にある道場へと変える。


こうして上泉信綱対前田慶次郎の試合が始まった。


慶次郎は豪快な槍裁きでぐいぐいと押し込んでいくが上泉信綱は無駄の無い最小限の動きでそれをぎりぎりで全てかわす。そう、達人の見切りと言うやつだ!一刻程休まずに野獣のように攻撃を繰り出している前田慶次郎は流石に達人相手では集中力の消耗が半端でない為、ぜいぜいと肩で息をしている。勝頼達は息を呑みながら試合を見守る。

上泉信綱は、相変わらず涼しげな表情をしている。そして決着の時が来た。前田慶次郎が突きを繰り出した瞬間に上泉信綱はそれを脇で挟み慶次郎の槍を絡め取ると次の瞬間慶次郎の胸に槍の石突の一撃が入る。


「そこまで!勝負ありだ!」勝頼が叫ぶ。


上泉信綱は槍に関しても超一流だったのである。


負けた前田慶次郎は目を閉じてその場に座り込んで何か考えこんでいる。


「2人とも素晴らしい試合だった!この勝頼感服した!褒美をとらす!何でも好きな物を言うが良い!」


上泉信綱は「では某は勝頼様秘蔵の葡萄酒を所望致す」


勝頼は以前は甲斐が葡萄の産地で有名だった為ワイン造りを始めたのだが甲斐は遠く手が回らない為、信濃で葡萄酒造りを行なっていた。


「あいわかった!慶次郎も酒か?」


前田慶次郎は神妙な顔つきで平伏すると、勝頼の目を見る。


「某の望みは願わくば勝頼様の家臣にして頂きたい」


「それは願ったり叶ったり急に如何致した?」


「某は自惚れておりました。もはや自身より強い者はおるまいと思いながらも武者修行の為全国を回っており信濃に麒麟児や神童などと呼ばれる面白そうな若者がいると聞き、更には槍の大会があると聞いたので見物がてら腕試しにきたのですが、そこにいる山県昌景殿や馬場信春殿も他国のものでは相手にならぬ程強かったのですが、槍の大会は優勝してしまった為、暫く滞在したらまた旅に出ようと思っておりました」


「しかし今日、上泉信綱殿と手合わせをし、人生で初めての敗北を知り申した。ただ、負けたのに何故か清々しかった。こんな楽しい試合は上泉殿以外出来ぬと思ったのと、海津城下は人で溢れて民百姓が皆良い顔をしております。今まで他の国では見られない光景でござった」


「これも領主たる勝頼様の有能さがなせる業だと思いまする!それに勝頼様について行けば毎日退屈せずに済みそうなのと何より酒や食い物が美味い!」


「これが勝頼様にお仕えしたいと思った理由でございまする」


勝頼は嬉しかった。令和の世でも名高い前田慶次郎が家臣に加わればより家臣団が強くなる。


「あいわかった!前田慶次郎利益!これからは我が家臣として歓迎する!今晩は歓迎の宴だ!」


宴!?上機嫌な勝頼の横でいつのまにか現れた葵が目を輝かせていたのだった。


上機嫌な勝頼は葵に手伝わせて調理の指示を出しながら自らも包丁を握る。


「葵!鶏をしめて来て欲しいのと鶉や鴨や雉など風魔衆に鳥を仕留めて来てもらえないか?」


「はい!勝頼様!何か美味い物が食べられるんですね!?」


葵はよだれを拭いながらサッと居なくなる。そして鳥を抱えて戻ってきた。


葵が下処理をした鳥肉を、細かく刻んだ生姜や唐辛子、にんにく、醤油で漬け込む。そう鳥の唐揚げだ!じゃがいもを棒状に切ってあげたフライドポテト!勝頼が造らせた現在風の土鍋を使った茶碗蒸し、鹿肉を使ったすき焼きなど現在の男子や若い女子が喜びそうなメニューを作り出す。


葵が時々つまみ食いをしているが、料理を一生懸命手伝ってくれたり、美味しそうにハフハフしながら幸せそうな顔をしているのをみて不問にした。勝頼は葵の笑顔をみると何故か心が温かくなり自身も笑顔になるのであった。


そして料理の準備が出来た後に葵や風魔衆を呼んである踊りを教えた。現在の宴会の出し物である。


前田慶次郎の紹介をした後に宴が始まった!


「今宵は無礼講だ!酒は浴びるほど用意した!皆の者!飲み、食い、歌い、踊り、笑え!大いに楽しもうぞ!」


うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


大歓声の中で皆の者が酒を流し込み料理に箸をつける。


慶次郎は「な…なんて美味い酒と料理じゃ!?ここは誠に現世か?極楽ではないのか?」


昌景は笑顔で慶次郎に話す。


「実はな、これはみな勝頼様が考え出した料理でな、勝頼様自らも調理をして下さっているのだ!」


「な…なんと!?領主自ら!?」


前田慶次郎は思った。武田勝頼と言えば嫡男武田義信がいるものの、次男は盲目、三男は早死にをして実質的にあの名門清和源氏の武田家の次男であり嫡男義信に何かあった際には家督を継げる可能性がある存在である。慶次郎が見る限り武田勝頼は今まで見てきた大名の子息で誰よりも優秀であり天下も狙える人物だと思っていた。


昌景は「勝頼様はな、我等家臣を誰よりも大切にして下さる。最初勝頼様がお館様に某を部下に欲しいと言われた時はとんだ貧乏くじを引いたと内心思ったが、とんでもない話だった。勝頼様はお館様以上の才気を持ったお方じゃ。某は勝頼様ならこの日本、いや世界を変えられるお方だと思っている」


「しかし嫡男でなければ自由がないのでは?」


「それも色々と手を打ってある。徐々に説明致そう。勝頼様は家督や日本だけでなくもっと大きな視野で物事を考えており、既に行動も移している!」


慶次郎は色々と驚いたが、勝頼の作った料理が美味すぎる以上に慶次郎の心に染みた。


「こんな御仁に出逢えるとはなんたる人生の幸運よ!」


前田慶次郎は深く勝頼に忠誠を誓うのであった。


そんな時、勝頼より声が上がった。


「これより余興を行う!食事を楽しみながら見物してくれ!」


勝頼の掛け声と共に浴衣を来た葵と風魔衆と何故か網丸が入ってくる。


勝頼は琉球の蛇三線を弾きだす。


アイヤ!イヤササ!


そう琉球の踊りカチャーシーだ!


勝頼は叫ぶ!「カチャーシーとはかき回すと言う意味だ!喜びも悲しみもかき回し分け合いましょう。と言う意味を持つ琉球の踊りだ!」


勝頼の蛇三線の演奏と共に風魔衆がカチャーシーを踊る。皆笑顔だ!その中でも格段と上手いのは葵だ!


葵と網丸はシンクロするように見事に踊っている。その見事さに演奏している勝頼も葵だけをみてしまう。


家臣団はたまらなくなり、まず前田慶次郎が真似をして踊りの輪に加わると他の者達も次々と踊りに参加した。


その夜、海津城では朝まで笑顔と笑いが絶える事はなかったと言う。



勝頼は沖縄県が好きです。また音楽が好きでありピアノとかを聞きながらワインを飲みたいところですが戦国時代ピアノは日本では厳しい為蛇三線で楽しみます。

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