巨星堕ちる
いつも誤字脱字ありがとうございます。
長篠の合戦の後、勝頼は父武田信玄と共に京に向けて走り抜けてきた。
そして気付かなかったのだが、あんなに大きかった父の背が一瞬小さく見えた。
だが仕方のないことである…甲斐からここまで怒涛の進軍をしていたのだから、疲れているのは当たり前であった。
京へ入る際に、俺の右側には小さく武田信玄、俺の左側には妻上杉輝虎が馬を並べている。
武田、上杉連合軍…史実では共に天下を狙える力がありながらも潰しあってしまった両家。
史実において、武田信玄と上杉謙信の争い、特に川中島の戦いさえなければ天下を狙えたかも知れない2人。
史実も、現在もあの織田信長が唯一恐れた、甲斐と越後の龍虎…
誰もが思っていたであろう…もし両家が手を結んでいればと。
そしてそれを実現させ、両家の手を取らせ、織田信長を滅ぼした俺が京の都の前にいる。
「勝頼、お主は本当にここまでよくやってくれた…この儂の、いや、武田家の誇りよ」
「何をおっしゃいますか父上、ここまで私がこれたのも皆父上達の支えと教えがあったからです」
そして京の都に武田の旗と風林火山、毘沙門天の旗が立って揺らいだ。
「なあ、勝頼よ…儂の夢は叶った…京に武田の旗を立てる夢がな…」
満足そうな顔でそう告げると、武田信玄は血を吐き落馬した。
「父上!!!」
そしてこの後、父武田信玄は目を開けることは二度となかった。
実は勝頼が知らぬ中で、父武田信玄は病に倒れていたという。
しかし、自身の死期を悟った信玄は息子に自身の全ての軍略を授け、最後の夢であった京に武田の旗を立てる為に、病を押し隠し進軍したらしい。
医者の見立てによれば、無理をしなければまだまだ長生きができたという。
俺は父武田信玄の亡き骸を抱き締めながら泣き叫ぶ…何故なのか…何故こんなことの為に死ななくてはならなかったのか…
勝頼はもっともっと信玄に生きてもらい色々教わりたかった…
しかし、唯一の実父は無理をして死んでしまった…俺は涙が止まらない…
しかし悲しむ俺は、妻の上杉輝虎に殴り飛ばされた。
そして告げられたのは冷静かつ正しい言葉だった。
立ち止まるな、今立ち止まったら日の本を良くしようと誓ったお主の言葉が嘘になると。
俺はぼたぼたと止まらない鼻血を拭いながら我に返った。
「輝虎、すまない、そしてありがう」
その言葉と姿を見た輝虎は「フゥー」と溜め息をつき俺を抱きしめる。
その目には光るものがあった。
その時初めて俺は思った…愛する妻達の為にも俺は立ち止まれないと。
そして俺は亡き父武田信玄の為にも一歩踏み出したのである。
結果、石山本願寺は武田、上杉連合軍に敗れ本願寺顕如は降伏した。
逃げようとした足利義昭は風魔葵の活躍により首を切り落とされた。
羽柴秀吉だけは逃してしまったのだが、こうして畿内は完全に武田家の手中に落ちたのであった。
日の本統一まであと少しだ…
色々な意見があり、色々と今後を考えた結果、武田勝頼は武田の名を捨て、室町幕府15代将軍足利勝頼として即位した。
それを受けて、四国は全て足利勝頼に降伏し、従った為、残すは中国地方と九州のみである。
中国地方と九州とは言ったものだが、現在足利勝頼に逆らう敵は大友家、毛利家の二つのみでありその他は全て足利勝頼に降っている。
全国制覇は既に目の前だ…大友、毛利氏との最後の戦いが始まろうとしていたのである。
物語りは最終局面に…