決戦相馬盛胤
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佐竹義昭が切腹した事により、佐竹家は滅んだがどう言う訳か、息子の佐竹義重は見つからなかった。
まあ明確に敵対する訳でなければ、特に命を狙う気も無いので良いのだが。
常陸の国は良質な鉄が昔から取れる産地なので今後の新兵器開発においても重要な土地になる。
その為、この地を任せるのは重臣中の重臣を置かねばならない。
その為、この常陸の国と太田城は武田四名君の一人である高坂弾正に任せようと思っている。
その鉄を生かす為の燃料の確保として、蝦夷地にいる明智光秀には夕張炭鉱を開発させるつもりだ。
今川義元や織田信長がいる以上は山県昌景と馬場信春は側から離れさせる訳にはいかず、加賀一向一揆の為、内藤修理之介は動かす事が出来ない。
能登半島においては妻である上杉輝虎が配下の軍勢を動かしてくれており、制圧は時間の問題であろう。
能登半島を上杉軍が制圧してくれれば、加賀制圧に乗り出す事ができる為、内藤修理之介はその準備もしなくてはならないのだ。
厄介なのは飛騨の国が織田信長に制圧されてしまったことだ。その飛騨国を任された相手が非常に厄介なのだ。
柴田勝家、そう鬼柴田と言われた織田随一の猛将とその与力として前田又左衛門がつけられたので目の上のたんこぶである。
まあ、織田家とはいずれは戦うことになるのだが、今川義元を倒さない限りは全面対決にはならないとは思う。
今はまずは奥州を全て制圧しなければならない。
相馬盛胤の小高城攻略の為に、勝頼は休む間もなく兵を進める。
太田城に高坂弾正を守りと周辺を安定させる為に残して代わりに高坂弾正の隊は上泉信綱に指揮させる事にした。
本陣の守りが手薄になると言う意見が出たのだが、葵が胸をドンと叩いて「勝頼様は死なせない…だって私が守るから」と言い張る為、信綱も葵に任せて軍勢を引き継ぐことにしたのだ。
まあ、勝頼の実力に加え、その背中を葵が守れば余程の事がない限り本陣は安全だろう。
相馬盛胤は背後からは伊達晴宗の軍勢が出陣した事を知り、野戦を仕掛けて一点突破により勝頼の首を取る以外にもはや方法が無いと悟り、城の守りを放棄して全軍の1万2千の軍勢を率いて小高城を後にしていた。
こうして相馬盛胤率いる1万2千の軍勢と、武田勝頼率いる1万5千の軍勢が対峙したのだが、相馬盛胤は疑問に思っていた。
敵の先陣には赤備えで有名な山県昌景の赤備えと騎馬隊が着陣しているのが見えるのだが、聞いていたより武田軍の数が少ない。
相馬軍の一万二千よりもやや少なく見える…何故だ?
しかし、考えている内に味方である佐藤好信、佐藤為信親子の騎馬隊が突撃した事により、戦が始まってしまった。
相馬家は騎馬隊に関しては絶対的な自信を持っている。
しかし何故かこちらが突撃しているのに山県昌景と赤備えはその場から動かない。
何故だ?相馬盛胤の背筋に嫌な汗が流れてくる…まさか罠か?
そう思っていた際に轟音が響き、騎馬隊の武将達は次々と落馬してその命を落としている。
馬は錯乱状態になり、行動不能になっているのだが、突撃の勢いにより後方の部隊は止まれずに次々と戦場に屍を増やしていく。
轟音は連続して響き続けており、止まることはなかった。
これにより相馬勢の騎馬隊は全滅し、数多くの武将が撃ち取られてしまった。
佐藤好信と佐藤為信親子も、その轟音の攻撃により戦場の露と消えてしまった。
そう、武田軍の荷駄隊は工作部隊も兼ねており、塹壕を掘って待ち構えていたのだ。
そこに雑賀孫市率いる雑賀衆と島津家久の合計2千の鉄砲隊が潜み、三段撃ちをしたのである。
武田軍の馬と違い、鉄砲に慣れていない馬と将兵は鉄砲隊の火力の前に為す術も無く葬り去られたのだ。
しかし、相馬盛胤が呆けている中、それを見逃す程、武田勝頼は優しくは無かった。
山県昌景率いる赤備えと、上泉信綱など本隊以外の兵力を全て投入したのだ。
そしてもはや軍勢としての形をなす事が出来ず四散して逃げ出す相馬勢を見て諦めた相馬親子は僅かに残った本陣の兵、千を連れて小高城目指して撤退しようとしたのだが、それは叶わなかった。
遊軍である前田慶次郎率いる2千の兵が、いつの間にか背後に周り退路を塞いでいたのだから。
「相馬盛胤殿とお見受けいたす。某は武田勝頼が家臣で前田慶次郎利益。その首頂戴致す」
「おのれ下郎が、この首簡単にくれてやる訳にはいかぬわ」
相馬盛胤は僅かな兵と共に嫡男である相馬義胤を逃そうとして、その時間を稼ぐ為に自ら囮となり慶次郎に対峙した。
しかし、強者とは言え所詮は大名として普段本陣に構えている者である盛胤と、慶次郎では相手が悪い。
盛胤は槍を繰り出して必死に応戦するも慶次郎の朱槍に全て防がれてしまう。
「化け物か?」
「今度は此方の番で御座る」
前田慶次郎の朱槍が目の前に迫ってきたのを見たのが、それが盛胤のこの世で最後の景色であった。
「敵将相馬盛胤の首、この前田慶次郎が討ち取ったり」
それをきっかけにまだ抵抗していた相馬兵は皆武器を捨てて降伏したのである。
一方、数を減らしながら山迄逃げ延びた相馬義胤であったが、それを木の上から観ている1人の少女がいた。
縄の両側に石をつけた物を相馬義胤に投げつけると
、相馬義胤はその場で足を絡めとられて倒れ込む。
周りを見ると一緒に着いてきた者達がクナイや手裏剣により急所を貫かれて屍と化している。
そして小太刀を持って宙に舞った少女は相馬義胤の首の両側に小太刀を突きつける。
「小太刀二刀流」
そう、その正体は風魔葵であった。
相馬義胤はこうして葵によって捕らえられ勝頼の前に引き出されることになるのだが、無念そうに項垂れる義胤を横目に、美しい白雪の様な肌を煌めかせながら葵は今晩のおかずはなんだろうか…とよだれを拭うのであった。
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