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大崎玄蕃と名を変え生き延びた武田勝頼の末裔の咆哮  作者: 吉良山猫
第5章関東統一編
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大蛇の最後

いつも誤字脱字ありがとうございます。

大蛇は顔面を白蛇のように蒼白にしながら常陸方面をひたすら目指して走っていた。


他の者達とは異なり、忍びの心得がある彼は音を殺して夜陰に紛れながらの必死の逃亡である。


改めて武田勝頼の目を見たが、あそこまで恐ろしいとは想像していなかった。


勝頼と重臣達から発せられるあの殺気は、並大抵の者では耐えられるものではない。


しかも、あの白虎と猛虎の話は聞いていない。


あのような規格外の化け物に睨まれて、訓練されたとは言え女子達が正気を保てる訳がないのだ。


しかも、人数が減っていると思っていたら…虎達に喰われていたのである。


あの着物や髪飾りは同行していた女達の者で間違いがない。


残りの女達も皆、虎達に喰われてしまったに違いない。


大蛇は、女達が死のうと苦しもうとどうでも良かった。


そう、どのような手を使っても自分だけが生き残れれば良かろうなのだ。


大分離れたので流石の大蛇も疲れ果て川で水を飲もうとした際に、辺りから猛獣の唸り声が聞こえて来た。


「がるるるるるる」


大蛇はその唸り声に虎が自分の事を追って来たと思い、水を飲むのを忘れて逃げ出す。


するとクナイや手裏剣が、どこからともなく飛んできて大蛇の身体を少しずつ切り刻んでいく。


大蛇はかろうじてかわせていると勘違いしていた。


実際は、技と致命傷にならないように追跡者が狙っているからである。


そう、追跡者は風魔葵その人であった…


先程の猛獣の唸り声も葵の必殺忍法鳴き真似である。


既に他の者からの情報で佐竹の手の者だと分かっている為に、命だけは取らずに痛めつけているのだ。


葵が追跡している理由は、勝頼の暗殺を計画した時点で万死に値し許せなかった為に自ら追撃して、相手を休ませてず、寝かさず、水も飲ませずに肉体的、精神的に追い詰めているのだ。


大蛇がボロボロになりながら常陸の国に近付いた際、葵の前に服部半蔵とその配下が現れた。


「半蔵?何のつもりかしら?」

「葵様、仕上げは我等にお任せ下さい。あまり勝頼様の側を離れ過ぎると寂しがられますよ」

「くう、分かりました。仕上げは半蔵に任せるわ」


そう言って葵は小田原城の方向へスッと消えるのだった。


大蛇は既に服部半蔵の手下に捕らえられていた。


「貴様何者だ?」

「伊賀の服部半蔵と言えば分かるだろう」


大蛇は真っ青になりがくりと項垂れる。


服部半蔵、忍びの心得のある者達の中でその名を知らぬ者はいなかった。


しかも服部半蔵とは伊賀忍者の頭領であり、忍者が名を明かす場合は対象の命がなくなる事を意味している。


佐竹義昭の元に、武田信玄からの贈り物の酒と言うものが届いた。


そこには、酒に満たされた小さな桶の中に目をくり抜かれ、耳と鼻を削ぎ落とされた大蛇の姿があった。


大蛇は暗殺の失敗の始終を話すと息絶えたのである。


手足は切り落とされ、伊賀忍者の秘術によりギリギリまで死なないように調節された大蛇の最後であった。


佐竹義昭とその家臣達は一部始終を全て聞いていたが、恐怖と絶望に誰も声が出なかった。


誰もが心の奥底で気が付いているのである…


『虎の尾を踏んでしまったと』


因みに今回の宴会の取り仕切りは武田信玄であり、勝頼は関与していなかった。


信玄が勝頼に儂に任せておけと悪そうな笑顔で胸を叩いたからである。


牙やくうが食べていたのは猪の肉と臓物であり、着物や髪飾りは脅かす為にあえて入れたものであった。


これは父親としての信玄なりの勝頼を思っての優しさであり、天下を目指す息子の為に汚れ役はなるべく自分が引き受けようと決意したからである。


だから佐竹義昭にも自分の名で贈り物と文を送ったのである。


文の最後には、次に桶に入るのはお前達だと脅すことも忘れていないのは流石は信玄なのであった。


それから佐竹義昭と佐竹家の者達は眠れない日々を過ごし身体を壊す事になるのだが…


佐竹義昭は怒らせてはならない相手を怒らせてしまったのである。



明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] あの奥方が必殺忍法って言ってるけど、必殺と忍法は同時に使わない方がよい。(相殺しあうため)。使うならば、必殺、忍法と区切った方が伝わりますよ。細かな所ではありますが、改善なさるともっともっと…
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