葵と風魔衆の実力
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皆の者達が楽しんでいる中、遠くから怪しい掛け声がして来たのを皆は注目していた。
『えんやー!とっとう!えんやー!とっとう!えんやー!とっとう!えんやー!とっとう!』
ねじり鉢巻きに同じハッピを来たふんどし姿の屈強な男達が船の様な物を引いて海に向かっていたのだ…
「ほう…これは中々引き締まった良い尻をしておるのう?」
武田信玄が感心した様に生暖かい視線を送っている。
船の様な物を引いていた屈強な男達は皆この時背筋に寒い物を感じたとか感じないとか…
「大御館様…」高坂弾正が額に手を当ててため息をついている。
新たに武田勝頼の配下に加わった大名や武将達は武田信玄恐るべしと皆咄嗟に自らの尻を庇ったとか…
だんだんとその集団が近付いて来るのを確認すると船の船首に波止場ポーズを決めて目をキラキラ光らせている少女と1匹の狸の様なものが見えて来た。
ハーッとため息をつきながら北条氏康が風魔小太郎をじと目で眺める。
「あれは何じゃ小太郎?」
風魔小太郎はさっとその視線を逸らす。
「某にはなんの事やら?」
可哀想に風魔小太郎は、氏康にじと目で睨まれて汗をダラダラかいている。
それを見ていた勝頼は危険を察知してその場から逃げようとするのだが…
「勝頼様ー!葵が一番の大物を獲ってきますので楽しみに待ってて下さいねー!」
流石にふんどし姿ではないが、ハッピを着た葵は勝頼を見つけるとぶんぶん手を振っている。
まさか勝頼様の奥方様ではと勝頼を注目するが…「くそ…穴があったら入りたい…」
その恥ずかしい理由として、海に入った船の帆とハッピの背中には大きく『魔』の文字が入っていたからである。
何処の魔王軍の大魔王だよと1人ツッコミをするのだが…前兆があったのを思い出した。
以前葵が、「勝頼様だけ沢山家紋や軍旗があってずるい。私も欲しいです」と言っていたことがあったのだ。
その際に、武田菱を使っても構わんぞと勝頼は言い、氏康も三つ鱗を使っても構わぬと言っていたのだが、葵はどうしても自分だけの軍旗が欲しいと言って譲らなかったのだ。
確かあの後に色々な文字を葵から持って来たのだが、接待で酔っ払っていた勝頼は風魔の魔でこれなんか良いのでは?と相槌を打ったような打たなかったような気がする…
やってしまったと思った時は時遅し…魔王軍が誕生してしまった…
そんな葵達だが沖に行って何を狙うのかと勝頼達は不思議に思っていた。
その船上で葵は少し先端が大きく、持ち手の上の方に西洋の大剣の様なつかがついた奇妙な銛を手に握っていた。
葵がサッと右手を上げると風魔衆達は持ってきた樽の中身を時間差で海に投入していく。
すると海一面が真っ赤に染まる。
そう、それは解体した動物の血液である。
すると血の匂いを嗅ぎつけた鮫が数頭集まってきた。
葵は網丸を竹竿に縄でくくり鮫を挑発している。
風魔衆も各自獲物を銛に持ち替えている。
一番大きな鮫が網丸を目掛けて水中に飛び上がった瞬間、葵が風魔衆を踏み台にして鮫よりも空高く舞った。
そして、「風魔忍法必殺雀蜂!」例の特殊な銛のつかの部分に両足を乗せ全体重をかけて鮫の眉間に必殺の一撃を食らわしたのであった。
その銛は歯が返しになっており、縄がついている為、鮫はまんまと仕留められ周りにいた周囲の小さな鮫達も風魔衆により仕留められたのである。
正に蝶のように舞い、蜂のように刺す…風魔葵恐るべしだ。
しかし、何故葵がここまで準備が良かったかと言うと理由があった。
勝頼が以前、たまには鱶鰭が食べたいが、鮫を獲るのは中々手間がかかるし、漁師をあまり危険には晒せないなと独り言を言っていたのを聞いていたのである。
確か、以前あれを勝頼様に食べさせて貰った時があるが凄く美味かったのを覚えている。
勝頼は最近調味料も沢山手に入ったし、コラーゲンが女子を美しくするが、あれは明国でも皇帝や金持ち以外滅多に口に入らぬ物だしな…とため息をついていたのを聞き逃さなかった。
葵は思ったのだ…美味い上に食べれば女子が美しくなるだと…?
あれから念密に計画を練ってきたのである。
これで美味い物が食えて、美しくなれて、勝頼様にも褒められるし、釣り大会も優勝して風魔衆の名も上がる。
少しよだれを垂らしながらも、今後訪れる幸せを想像して葵はうっとりとするのであった。
まったりスローライフ回です。