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大崎玄蕃と名を変え生き延びた武田勝頼の末裔の咆哮  作者: 吉良山猫
第4章小田原城編
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島津家と勝頼2

都合上サツマイモと呼んでいる薩摩芋を史実より早く持ち込みます。

島津貴久は武田勝頼に気になっていた事を訊ねてみることにした。


「勝頼殿は我等島津家の事情に詳しいようですが、何故大友家など九州には大大名がいる中で島津家に目を掛けておいでなのか?」


「疑問に思われるのも無理はない。しかし私は島津家こそが九州一の強者であると思っている」


勝頼はその理由を皆に説明し始めた。まず、武田家は全国に忍びを放っており各国の事情に精通している。本当は勝頼の令和の時代の知識なのだがこの場ではそう言うことにしておく。


その中で、確かに九州には大友家をはじめとする大大名や名門もいる。勝頼は九州において次の世代、すなわち世継ぎを比べた際に島津家が一番優秀である事、大名家の一門衆をみた際に島津四兄弟を中心にした島津家が一番なことをあげた。


さらに言えば、家臣団においても大友家や龍造寺家にも数名勝頼の目に叶うような優秀な武将がいるが、島津家が総合力において一番優れていると付け加えた。


島津家の者達が遠く離れた地の勝頼に知られていることに驚いたが、それ以上に驚いたのは自分達に対する高過ぎる評価だ。


「何故それほどまでに我等を高く評価して下さるのかは分かりませぬが買いかぶり過ぎですぞ」


「ご覧になったであろう。我が領内の貧しさを。薩摩の国は米や作物が育ち難い上に嵐も多く皆食うので精一杯なのです」


島津義久が語ると、島津貴久も「さよう、それに兵の数も到底大友家などには及ばん」と呟く。


勝頼は「確かに豊かではないのは分かりましたが、民や兵達は良い目をしており、兵においては他国の兵よりも強いのは見て分かりますよ」


島津家の者達は嘘は言っていなかった。貧しいのは事実であるし、兵の数も大友家など大大名の前では足元にも及ばない。しかし、兵の強さと家臣団の強さには自信があった。それを目の前の武田勝頼と言う男は全て見抜いているのである。


「確かに食料や兵の数にはお困りでしょう。そこで私から提案があります」


「ほう…提案ですとな?」島津貴久が答える。


「ええ、提案です。島津家にとっても悪い話ではないと思いますよ」


「聞かせて頂こう」


「我等がある物を提供します。それにより食料面と金銭面が解決する筈です」


「何ですと?それは一体…」


勝頼は葵に目配せをすると葵はある物を持ってくる。


「これは一体?」


「これは我々が都合上サツマイモと呼んでいる南蛮から手に入れた芋とその芋から作った酒でいも焼酎と言います」


勝頼が言うにはこれは南蛮のサツマイモという物で彼等の領内でしか栽培されていないらしい。しかもこの芋は薩摩の国のような他の作物が育ち難い土地にこそ適しているとのこと。そして繁殖力も強く、茎や葉は食べられ、種芋以外からこの茎と葉を使い苗をどんどん増やせるらしい。


そしてその芋は美味く、甘みが強く様々な料理に活用できる上、栄養があり、満腹感も強い。そして干し芋にすれば兵糧にもなるし、酒にすれば高値で取り引きされるとのこと。酒を作れるまでになるには設備がいるので時間がかかるらしいがまるで夢の芋だ。


「まずは酒と芋を蒸した物を用意致しました。召し上がって頂きたい」


しかし、島津家の者達は誰も手をつけない…遠慮しているのか疑っているのか…


「毒など入ってはおりませんよ。葵」


勝頼が声を掛けると葵は好物の蒸かし芋を美味そうに皆の前でむしゃむしゃと食べる。もともと美しい葵がこれだけ美味そうに食べるのだ、これ以上の宣伝効果はないだろう。


島津家の者達はごくりと唾を飲み込み蒸かし芋を手にとり口に入れてみる。


島津義弘が最初に口に入れると…「美味い。そして甘い。なんたる美味よ」とかっと目を見開く。


それを見た他の者達も次々に口に入れるが…質素で味付けも簡素な物を普段食べている彼等にとってサツマイモは毒であった。


大名でさえ魚が出れば豪勢な食事と言われる島津家においてサツマイモの美味さと甘さは彼等の中の何かを崩壊させた。


そして、今度は雑賀孫市にいも焼酎をあおらせる。酒好きの孫市がぶはーと美味そうに喉に流し込む。


それにまた島津家の者達はごくりと喉を鳴らす。勝頼は令和の知識で薩摩の国の人々が酒好きで酒に滅法強い事を知っていた。これは彼等に対するとどめであった。


やはりこれも島津義弘から飲むのだが…ぷはー「濁りがなく水のようじゃが何と美味く酒精の強い酒よ」


我慢できなくなった島津家の者達がいも焼酎を飲むと正に天にも登る心地であった…


皆が口々に美味い…そう叫んだのであった。

次号は勝頼の狙いと宴です。

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