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大崎玄蕃と名を変え生き延びた武田勝頼の末裔の咆哮  作者: 吉良山猫
第4章小田原城編
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島津家と勝頼1

武田勝頼は内城に入り島津家の主だった者達と対面します。武田勝頼の共は、上泉信綱、風魔葵、島津家久、雑賀孫市です。三好衆は船上待機です。

武田勝頼は、島津義弘の案内により島津家の居城である内城を訪れていた。それは島津家の居城と言っても簡単な屋形作りの質素な平城であった。


勝頼の一歩後ろを下がって歩く風魔葵は、今まで様々な城を見てきたが、城と言うには随分とみすぼらしいと思っていた。


勝頼はわざと足利将軍家の旗を掲げて城まで来ていた。島津貴久はその旗の意味に気が付き城の門まで出迎える。


わざわざ将軍家の旗を掲げて来たと言うことは、一大名としてではなく、将軍に関係があると言うことを暗に匂わされていたからである。


しかし、これは効果覿面であった。畿内では権威が弱まった将軍家と言えども地方ではまだまだその名を重く見る大名家が多かったからだ。


九州の外れの田舎大名である島津家にはより効果があったのである。


当主の島津貴久は、自身が島津家の当主であると名乗り、丁寧に挨拶をする。


武田勝頼はあえて「関東を将軍である義父上より任されている足利勝頼です」と丁寧に挨拶をする。


将軍足利義輝の猶子である武田勝頼は足利性を名乗る事を許されている為、初めて会う島津貴久には足利の名の方が覚えが良いだろうとの考えあってのことだ。


そして城の内部に通されたのだが、上座を譲られたが、あえて対面式にお互い何名かの家臣を後ろに座らせ対談に挑んだ。


島津貴久は何故この様な田舎に将軍家の身内が来たのかが全く理解出来なかった為、素直に尋ねた。


「こんな何もない片田舎へ将軍家のお方がいかなる御用件でしょうか?見てきていただいた様に、我が薩摩は米も育ちにくく貧しい土地なれば…」


「まずは急に押しかけた事をお許し願いたい」


勝頼はまず、薩摩に寄らなければならなかった理由として、自らの家臣になった島津家久のことを告げた。そして家久に今までの経緯を説明する様に促す。


家久の話を聞いた島津の面々は驚きのあまり、次の言葉がなかった。家久自身の行動にも驚きだが、琉球王国のこと、そして武田水軍や武田軍の強さを聞けば驚くのは無理もない…


しかも目の前にいる人物は、東国一の大国の武田家の当主であり、将軍足利義輝の猶子にて、関白近衛前久とも昵懇の仲で、帝の覚えめでたく従四位の官位を授かっているのだ…何故これ程の大物が家久のことがあるとは言えわざわざ薩摩に寄るのかと更に疑問が深まる。


しかも帝のお墨付きも得た上での琉球王である。九州で言えば名門大友家などを訪れるならまだわかるが…何故島津なのかと?


「しかし、家久、お主は何と言うことをしでかしてくれたのだ。その首どころか島津が滅ぶかもしれぬ大事だぞ」


長兄の島津義久が家久を睨みながら語気を強める。


「父上、兄上、申し訳御座いませぬ」家久は床に頭を擦り付けて謝罪をする。


「待ってくだされ。私は家久に感謝こそすれ責める気は全くありませぬ」


「感謝ですと?」島津貴久が怪訝そうにたずねる。


「ええ、あの名高い島津日新斎殿の兵法を伝授された家久を家臣に出来ましたので」


「それにあの鬼島津と名高い島津義弘殿ともお手合わせ出来て楽しませて貰いました」


「何だと。貴様、義弘、何をした。まさか足利様に手傷を負わせる様な無礼はしていないだろうな?」


兄の島津義久に睨まれた義弘は、全身に汗をかきながら狼狽している。


「いえ兄上、義弘兄上は我が殿に手も足も出ずに負かされましたのでその心配は無用ですぞ」家久が答えると島津家の者達は皆黙ってしまった…


いくら猪武者でがさつな義弘であれ、その強さは九州でも勝てる者がいないほどの本物の強さであったからだ。


家久が笑顔で「我が殿は日の本一と名高いあの剣聖上泉信綱殿の一番弟子なれば、義弘兄上が負けても仕方がないことでございます」


今度は島津義弘が驚いた…武芸には自信があり誰にも負けた事がなかったが…まさかあの剣聖の一番弟子であったとは…敵わないはずだと…


剣聖上泉信綱の武名は日の本中に轟いていたのである。実際に勝頼が化け物と呼ぶほどの強さである。


島津家の者達は、家柄や肩書きはさることながら、強さも本物の勝頼に一目も二目も置くことになるのであった…

次の回で本題に移ります。

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