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大崎玄蕃と名を変え生き延びた武田勝頼の末裔の咆哮  作者: 吉良山猫
第4章小田原城編
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島津家久

いつも誤字脱字ありがとうございます。

密航者は、全身に縄を打たれた状態で武田勝頼の前に引き出されていた。


北条氏康や武田典厩信繁は、船を見られたから生かして返す訳にはいかん、今すぐ首を刎ね魚の餌にいたそうなどと恐い顔で言っている。


まあ待つのだ。武田勝頼が静止する。「見たところこの辺りの者の様だが、貴殿は何者だ?」


「又七…漁師だ」


「又七よ、何故この船に侵入した?」


「そ…それは…」


「普通に考えれば間者を疑われるのは当然なのは分かるな?普通の漁師なら逃げる事はしても忍び込もうと考える者はいないとは思わんか?」


武田勝頼は鋭い目つきで覇気を放ち威圧する。


又七は震えあがる。抜かった…興奮してつい若さ故、勢いでここまで来てしまったが、確かに間者でない限りはこんな巨大船に侵入などしない。


しかもなんなのだ、目の前にいる男の眼力と威圧感は?不味い…このままでは本当に殺される。


自身の正体を明かしても、逆に面倒な事にならぬ様にと口封じされる可能性が高い。しかも自身は四男である為、薩摩の国の自身を知る者なら露知らず、相手からは価値の無い存在と思われかねない。


「待って下さい。何でも致します。命だけはお助けを」


山県昌景が意地が悪い笑みを浮かべながら答える「何でもと言われてものう…見ての通り人員は足りている」


上泉信綱は刀を抜き又七の首元に刀を突きつける。「我等が何者か分かっておるのか?どちらにしろ生かしておいても此方には何の利益も無いと言う事じゃ」


勝頼様、この様な物を持っていたようです。真田昌幸が武田勝頼に油を浸した布で巻かれていた刀を渡す。


「ほう、薩摩では漁師がこの様な立派な造りの刀を持っているのか?」


「それは…」


武田勝頼は又七の刀を抜き眺めている際にある事に気が付いた「ほう…」


上泉信綱が勝頼様、首を刎ねますぞと刀を構えるが、勝頼が「待て」と止める。


上泉信綱や周りの者達は怪訝そうな顔で勝頼と又七を見ている。


勝頼はニヤリと笑みを浮かべると、もしそこにいる男が私の思う男であるならば、少し殺すのは惜しいと思ってな。ことの次第では助けてやらんこともない。


又七はそのやりとりに、どういうことかわからぬが、どの道全て正直に答える以外に自身の命が助かる道はないと悟り観念する。


「又七よ、心して答えよ。貴殿の生死がかかっているのでな」


又七はごくりと唾を飲み込む。


「その方は薩摩の国の武家の子息だと思うのだが間違いないか?」


「はい」


「私が貴殿の命を助けて我等に殺す以上の益はあるのか?」


又七は少し黙り考えるが…「私は軍法にいささか自信がございます。琉球王国に関しても多少の事に関して分かっているつもりです」


「成る程。やはりな」


「貴殿の兄の名前は義弘で違いないか?」


ギョッとした顔で又七は驚く…なぜ薩摩の国の小国の大名の二男の名前を知っているのかと…又七は全身に汗をダラダラとかいている…


「貴殿は祖父島津忠良から軍法戦術を習ったのであったな、島津家久殿」


何故自分の名前がわかった?しかも兄や祖父の事まで、薩摩の国に忍びでも忍ばせていたのか?


「何故私が島津家久だと?」


「刀だ!刀に家紋があったのでな、それに私は自身の目的の為に全国から優秀な者を集めている。九州を探った際に島津4兄弟の噂を耳にして、特に二男の義弘と四男の家久が気になっており出来れば配下にしたいと思っていたところだ」


その言葉に更に島津家久は驚いた。本当に目の前の人物は何者なのかと。


「私が何者なのだと言う顔をしてるな?」ニヤリと武田勝頼が笑みを浮かべる。


「私は帝より従四位下の官位を賜り、将軍足利義輝の猶子である甲斐武田家当主、武田勝頼だ」


武田勝頼…商人からの噂で名前を聞いたことだけはあった…東国最強の大名家で今全国で一番勢いがあると言われているあの武田勝頼か!?まさかこんな田舎までやって来るとは思う訳もない為、想像もつかなかった。


しかし、武田勝頼と言えば麒麟児と幼い頃から言われ、様々な珍しい物を生み出して財を蓄え朝廷の信頼厚く毘沙門の化身などと言われている。


最果ての田舎の四男坊の島津家久にとっては遠い国の雲の上の存在であった。


しかも田舎故、朝廷や幕府の名の威光が未だに強く残っている。


島津家久は全身に縄を打たれたまま床に頭を擦り付けて平伏する。


「島津家久殿、貴殿は知り過ぎた故、このまま帰す訳には行かないが、私に仕えるなら厚遇を約束するがどうだ?」


島津家久は平伏したままで武田勝頼に忠誠を誓ったのであった。


勝頼はそれを聞き内心で歓喜した。島津4兄弟の中で武人にして最強は勿論、鬼島津義弘だが、総合的に一番優秀なのはこの島津家久であると思っていたからだ。


縄を解き、食事を与え着替えを与えた後、皆に紹介した。


しかし、事がなった後、薩摩の国に寄らねばならなくなったなと勝頼は思うのであった。

島津家久は武田勝頼と年齢が同じくらいですが、幼き頃より祖父から学び、軍法戦術に妙を得たりと呼ばれる程ですので、現段階で知恵者です。真田昌幸と共に知の部分でも勝頼を支える存在となります。

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