根回し
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武田勝頼は、近衛前久と足利義輝にかねてより考えていたことを打ち明けた。
それを聞いた近衛前久と足利義輝は少し考えたが、問題はないと判断した。
武田勝頼の説明によれば日の本を出れば大小様々な独立した国が存在する。
明などの大国以外に、甲斐の国の半国位の広さしかない島国も存在するという。
武田勝頼の望みは、その小国をもし、攻め滅ぼした際にはその国の慣例に乗っ取り、その国の王として認めて欲しいと言うものであった。
近衛前久は、慎重にその理由を武田勝頼に尋ねる。
武田勝頼は、以前から支配したいと思っている小国が九州よりも更に南方にあり、そこでは日の本とは異なる良質な塩が手に入る。
しかし、甲斐の国の半国の島国ながら、強き意志と誇りを持っており、異国の属国にされる位なら島民全てが自害するくらいの気概を持っている。
嘘も方便なところもあるが、武田勝頼は説明を続ける。
その国の塩の製法や特産物に対する知識は島民しか知らぬ為、攻め滅ぼす訳にはいかず、降伏させて勝頼がその国の王になる事で最上級の塩や産物を確保したいとの説明をした。
彼らの生活を保証し、国と言う誇りと伝統を引き継ぐ事により懐柔したいと訴えたのだ。
帝は勿論、近衛家と足利家に毎年その塩を献上するとも勝頼は約束した。
足利義輝は勿論のこと、近衛前久も悪くない話だと思った。
甲斐の国の半国程の面積なら国と言っても地方の大名と変わらないし、武田勝頼が支配するなら朝廷や将軍家にとって利はあっても害はない。
領土の広さから、動員できる人数も想像できる為、脅威になることもない。
王と言うのには、些か抵抗があったが、面子の問題である事は理解できた。
それに、武田勝頼は日の本一の上質な塩を持っているが、その彼がそこまでして欲しい塩には価値があると思った。
勝頼の真の狙いは、王の名と砂糖なのだがそれを漏らすほど勝頼は愚かではない。
武田勝頼は更に海外の事に関しては自由にさせてほしいが、日の本に関しては帝の臣下であり尊王の気持ちは揺るぎなく、日の本や朝廷に対する一切の敵対行為や不利益になる事はしないと言い切った。
近衛前久は、だったら帝や朝廷にとって損はなく、最上級の塩が毎年献上されるのであれば、朝廷の収入や、食事に大いに役に立つと考えた。
だからこそ宣言した。その案件はあいわかったと。関白近衛前久の名において必ず帝と朝廷を説得して見せると。
足利義輝も、征夷大将軍として勝頼の願いに関して力添えすると約束した。
関白殿下、将軍様、彼らにとって利はあるが、損は無いのである。
当たり前といえば当たり前の判断なのだが、彼らは勝頼にとって最良の判断をしてくれたのだ。
武田勝頼の謀略が、実現に近付いた瞬間なのであった。
各自が笑みを浮かべる中で、武田勝頼は満面の笑みを浮かべるのであった。
日の本は日の本…他国は他国です。