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ハチャメチャ姉妹はOmaeTubeでGO!

作者: チャンドラ

「はぁー。やっぱり面白いですわ」

 私はある動画を見て、面白さのあまりため息をこぼしましたわ。

 視聴しているのは『OmaeTube』という動画共有サービスに投稿されているとある動画。

 OmaeTubeで動画を投稿し、広告収入によって、生活している人のことを『OmaeTuber』と言いますの。ええ。


 それで、私が見ているのは商品レビューの動画。投稿者は『終わり車掌』という方ですの。

 レビューしている商品は『プラレールをはじめよう! ベーシックレールセット』という電車の玩具おもちゃですの。

「すっごい! 見てください! この電車。しっかりと作り込めまれていて、とってもリアルです。是非とも、みなさん買ってください。秋葉原のヨドバシカメラで! あー、秋葉原ー秋葉原の次はー御徒町ー」

「山手の手線ですの!」

 私は普段おもちゃなんて買いませんけど、動画を見ていたら思わず欲しくなってしまいましたの。

 そういえば、前に 『危機金』の青狸の超合金で出来たおもちゃのレビュー動画を見て、あれもつい欲しくなって買っちゃいましたの。

 でももう、飽きて妹にあげちゃいましたの。


「OmaeTuber……良いですわね!」

 そう言えば、まだ自己紹介まだでしたわね! 

 私の名前は関取風夏せきとりふうかですの。現在、某大手企業で働いてますの。今年で二十四歳ですの。

 仕事は忙しく、午後九時に出勤しては午後五時に帰る日々ですの。

 労働って本当に過酷ですの。毎日の労働を三時間に短縮して欲しいですの。


 OmaeTuberになって、有名になれば月百万以上稼ぐことも可能であると聞いたことがありますの。うまくいけば、しばらく働かなくてもいいくらいのお金が手にできますの!


 よし! ちょっと、OmaeTuberになりますの!


 善は急げで私は、レビュー用の商品を買いに家の近くのコンビニに向かいましたの。

 買ってきたのはカップヌードルの北海道ミルクシーフ味ですの!

 コンビニを出た後、百円ショップで白い仮面を買いましたの。さすがに顔出しでやる勇気はありませんからね。ええ。

 やばいファンだと家に押しかける可能性もありますの。安全性を考慮すると、やっぱり顔出しはNGですの!

 家へと戻り、さっそく撮影する準備に取り掛かりますの!

 パソナニックの一眼カメラを三脚にセットし、レンズを見ながら位置を微調整ですの!

 実は動画投稿自体は前々からやろうと思って、買っておいてましたの! 結局、買ってからかれこれ動画投稿を始めるまでに半年ほどかかってしまいましの。ええ。

「これで、撮影の準備はバッチリですの!」

 次の段取りとして、チャンネル名を考えることにしましたの。

 まず思いついたのは『風夏チャンネル』ですの。

「うーん、でも安直なネームだし、実名使ってるし、これは却下ですの!」

 考えに考え抜いた挙句、何かの言葉をそのまま流用する方向に決めましたの!

 私がよくやるスマホゲームのキャラクターである、『ビーラ』を使うことに決めましたの。

 チャンネル名――ビーラチャンネル

「良いですの! 早速、撮影開始ですの!」

 仮面をつけて、カップラーメンをお湯に注ぎましたの。

 モワッと湯気が立ち込め、美味しそうな香りが鼻孔をくすぐりましたの。

 三分待ち、録画モードにカメラを切り替え、撮影開始のボタンを押しましたの! いよいよ、収録ですの!


「ブンブン、グッドモーニングOmaeTube! どーも! 初めまして! 今日から動画投稿させていただくビーラと申しますの。以後お見知り置きを」

 始まりの挨拶で視聴者の方に印象を与えることが大事ですの! さっきの「ブンブン、グッドモーニングOmaeTube!」は毎回、やることにしますの。

「本日、紹介するのはこ、ち、らですの! ドゥルドゥルドゥルドゥル、ジャンジャジャーン! カップヌードル、北海道ミルクシーフ味ですの! それでは、早速食べますの!」

 割り箸を割り、一口、カップラーメンを啜りましたの。

「美味しいですの! 例えるならそう、これは……『味のパンドラボックス』ですのーーーーーーー!」

 よし、勝利の法則は決まりましたの! 

 これで、高評価及び再生回数の急上昇間違いなしですの!

 凡そ五分でカップラーメンを完食し、締めの挨拶をしましたの。

「それじゃ、皆さん。次の動画で会いますの! シーユーですの!」

 録画を止め、一仕事終えた私は椅子に座り込みましたの。

「いやぁ、中々楽しいですの。動画撮影」

 しかし、これで『はい投稿』というわけにはいきませんの。

 この後、編集作業がありますの。字幕をつけたり、効果音を付けたり、結構大変そうですの。


 一時間ほど休憩した後、カメラの動画データをノートパソコンに移し、動画編集サイトで編集を開始しましたの。

「うーん、ここはカットですの! ああ、やばい。カットしすぎましたの! 戻して、ああ、ここは効果音を入れないと……あと、ここに字幕をつけて……」

 三十分ほど動画編集に悪戦苦闘していると、妹が部屋に入ってきましたの。


「お姉ちゃーん! お風呂上がったよー……って、お姉ちゃん。何してるの?」

 不意に話しかけられて妹の方を見ましたの。妹は頭に黄緑色のタオルを載せていて、ピンク色の寝間着を着ていましたの。

 私の妹の名前は関取風冬せきとりかぜふゆ

 風冬は現在、高校二年生ですの。雪のように白い肌で顔立ちは私に似ていてとても美人。将来有望ですの……ただ、頭が少々よろしくないのが玉に瑕ですわ。

「風冬。実はお姉ちゃん、OmaeTuberになろうと思いましたの。それで、動画編集してましたの」

「へぇー。お姉ちゃんがOmaeTuberにね。なんか、大変そうだけど、頑張ってね。あとお風呂、早めに入ってね」

「オーケーですの」

 キリのいいところで動画編集作業を中断し、お風呂に入った後、再び動画編集を再開しましたの。

 そして……

「ふわぁ……やっと、終わりましたの……」

 動画編集が終わったらどっと疲労感が押し寄せてきましたの。

 腕を伸ばして、体をほぐしましたの。

 すでに時刻は夜の十一時過ぎを回ってましたの。

「これで……投稿ですの!」

 投稿ボタンを押し、『投稿が完了しました』というメッセージを確認しましたの。

 ようやく全ての作業が完了し、睡魔に襲われた私はすぐにベッドに潜り込み、寝ることにしましたの。

 明日の朝になっていたら、どれくらい再生回数がいっているか、超絶楽しみですの。


「ふわぁ……よく寝ましたの」

 目を覚ますと、時刻は十一時でしたの。今日は仕事が休みとはいえ、つい寝すぎてしまいましたの。


「さてと……早速、動画をチェックですの!」

 すると、目に映ったのは信じられない光景でしたの。

「う、嘘……再生回数、たったの114回ですの!?」

 てっきり53万回くらい再生されているものと思ってましたの。

 ちなみに高評価が5で低評価が37ですの。

 どうしてこんなに低評価の方が多いですの。あんなに必死に編集したのに。

「こ、コメントはどうなってますの!?」

 動画再生ページを下にスクロールし、コメントをチェックしましたの。


 ――ありがちな動画でつまんね。ってか、もっとマシなもんレビューしろよ。

 

 ――BGMのチョイスが下手すぎる。もっと、明るいの使え。


 ――味のパンドラボックスってなんだよwwwスカイウォールの惨劇で頭がおかしくなったのかwww


 ――次は焼肉をレビューすれば良いと思います。夜は焼肉っしょー!


「あああ! もう何なんですの! 良いたい放題言いやがって! く○がぁ!」

 おっと。ちょっと取り乱して口調が乱暴になってしまいましたの。テヘペロ。

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん。どうしたの?」

 私の叫び声を聞いてやって来たのか、風冬が驚いたような表情をしてましたの。

「風冬! ちょうど良いところに! これを見て欲しいですの!」

 私は昨日、投稿した動画を風冬に見てもらいましたの。

「アンチのやつら、私の動画に言いたい放題、言いやがりましたの! ひどいと思いますの! 風冬はどう思いますの?」

「うーん……ぶっちゃけ、お姉ちゃんの動画はつまらないと思うよ」

「ガヒョーン!」

 しょ、ショックですの……風冬にそう言われてしまったらもう認めざるを得ませんの。

「ど、どこがダメですの?」

「まず、カップラーメンをレビューってのがありきたりだし、編集は雑でノイズ入りまくり。そんで、コメントもあんまり上手くないね。味のパンドラボックスって正直、意味分からなかった」

「うぅ……か、風冬ならどうやって動画作りますの?」

 すると、風冬は不敵な笑みを浮かべましたの。

「ふふふ、ならちょっとお姉ちゃんに見本を見せてあげるよ。お姉ちゃん、車出せる?」


 風冬に言われ私は車を出し、とある場所に向かいましたの。

「お姉ちゃん。やっぱり顔出ししたらダメなの?」

「当たり前ですの!」 

 風冬は動画投稿するときは顔出ししたいと言ってきましたの。

 そうした方が、再生回数が伸びると主張したけれど、私はそれを断じて許しませんでしたの。

 やばいファンのやつらが、風冬のところに押しかけてくる可能性がありますの。

 それだけは断じて防がなくてはなりませんの。

「風冬は可愛いんだから、絶対にダメですの!」

「ちぇー!」

 不満そうに唇を尖らせる風冬ですの。本当、可愛いことこの上ないですの。

「それじゃ、代わりにこれをかけるね」

 風冬がかけたのは大きい黒いサングラスですの。

「これなら良いでしょ? お姉ちゃん」

「うーん、まぁこれなら……」

 本当ならガスマスクくらいつけて欲しいくらいだけど渋々許可しましたの。やがて、風冬が行き先を指定した大型ショッピングセンター『セイオン』に着きましたの。

 空いている駐車スペースに車を停めると、風冬は車載カメラ(これも実は前々から買ってましたの)に手を伸ばし、録画ボタンを押しましたの。


「ウイィィィィッス! どーも、スノーでーす! 今日は、オフ会とーじつですけども、参加者はお姉ちゃん以外、誰一人来ませんでした。ええ、誰一人来ることなかったです。お姉ちゃん以外」

 ちなみに私も動画に映ってますの。私も素顔は晒さず昨日、収録に使ったマスクをつけてますの。

 それにしても、これで本当に動画再生回数が伸びるんですの?

 その後、風冬は延々とオフ会に誰も来ない理由――アクセスが悪かっただの、参加者が情報を把握してなかっただの、明後日の方向を向いている推測をカメラに向かって言い続けましたの。

 そもそも、オフ会なんて開こうとしてないんだから誰も来るわけないんですの。


「悔しいけど、しょうがないよね! 次のオフ会こそは参加者が来るよう頑張るぞー! それじゃ、またねー!」

 風冬はカメラに手を振った後、カメラを切りましたの。


「よし、良い感じに取れたかな。これで、きっと再生回数増えると思うよ」

「ほ、本当ですの?」

「うん! 早速戻って投稿しよう!」


 風冬に急かされ、家に戻りましたの。動画データをパソコンに取り込み、編集しようと思いましたの。けど……

「お姉ちゃん! これは編集しなくてもいい!」

「そ、そうなんですの?」

「うん! このまま投稿して!」

 風冬がそういうので、無編集のまま投稿しましたの。風冬の提案で夕方に動画を確認することにしましたの。


 ※※※


 午後五時、空が赤に色づき始め、カラスの鳴き始める夕暮れの黄昏時。

 OmaeTubeにアクセスし、風冬と一緒にパソコンのディスプレイを見つめていましたの。

「そ、それじゃ早速動画をチェックですの!」

「うん、早く見てみようお姉ちゃん」

 動画のページを開くと――何と再生回数は六十万回にまでなっていましたの。

「う、嘘! 信じられませんの!」

「よし、計画通り!」

 コメント欄をチェックするとたくさんコメントが書かれていましたの。

 

 ――妹可愛くて草。

 

 ――オフ会に参加したい。ぜひとも告知してくれ


 ――姉、空気でワロタ。


 ――グラサン取ってくれ。スノーちゃん。素顔を見たい。


 どれも下心ありありの風冬目当ての奴らばかりですの。グラサンしてるのに風冬の愛らしさに気づくなんて無駄に感が鋭い奴らですの。風冬に変な虫がつかないか心配になりますの。

「ど、どうしてこんなに再生回数が伸びるたんですの!?」

「実は昔、オフ会0人の動画を上げたレジェントOmaeTuberがいるんだけど、それをリスペクトしたんだ」

「リスペクト……ですの?」

「うん、安直な考えかもしれないけど、有名な実況者の流れをそっくりそのまま真似すればそこそこの動画再生回数は行くと思うよ! もちろん、流行とか、そういうのも分析する必要があるけどね」

「なるほど! 風冬、お姉ちゃん頑張りますの!」


 それから私は色んな動画を見て、研究しましたの。

 私が着目したのは炎上系OmaeTuberという分野。

 あえて、炎上しそうな内容の動画を投稿して、知名度を上げる戦法ですの。

 私はこのジャンルの動画を投稿することに決めましたの。

 ちなみに内容はというと、猫のぬいぐるみを放り投げる動画。

 とあるOmaeTuberが生放送中に自身の飼い猫を投げたことで炎上しましたの。

 それになぞらえた動画を投稿することに決めましたの。

 そのために可愛らしい猫のぬいぐるみを『ゴンザレス』で購入しましたの。

 きっと、飼い猫を投げたOmaeTuberのファンが過剰反応し、一気に知名度が上昇しますの!


「ふわぁ……眠い。今日はもう寝ますの」

 収録は明日のすることとして、私はベッドにダイブしましたの。

 すると、その日の夜。こんな夢を見ましたの。


 暗闇の空間の中、金縛りにあったかのように身体が全く動かず、ゆっくりと白い猫がのそのそと近づいて来ましたの。

 それは今日買った猫のぬいぐるみにそっくりでしたの。

「どうして、僕にひどいことしようとするの?」

 猫はノイズかかったおぞましい声で私に語りかけてきましたの。

「僕を投げて、楽しい?」

「だ、誰か……助けて欲しいですの……」

 しかし、周りには誰もいませんの。体も動かないし、やばいですの……


「ねぇ。ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!」

 ぐんぐんと猫の体が大きくなると、口を大きく開け、がぶりと私の頭を丸かじりに――


 そこで目が覚めましたの。


「なんだ、夢でしたの……うん?」


 ――――――――――――!!!


 思わず絶句しましたの。


 寝る前には絶対にテーブルに置いてあったはずの猫のぬいぐるみがどういうわけだが、私の枕元に置いてありましたの。


 電気をつけ、風冬の部屋に駆け込みましたの!


「風冬! 起きて! 起きるんですの!」

 熟睡している風冬の身体をゆすり、起こした。

「うーん、何? お姉ちゃん」

 風冬は叩き起こされ、不機嫌そうな表情をしてましたの。

「これ! 風冬! このぬいぐるみって風冬が私の枕元に置いたんですの?」

「え? いや、違うけど……ってか何なの急に。私眠いんだけど」

 ならば、このぬいぐるみが勝手に移動したということになりますの。

 ぬいぐるみを見ていると、何だがこのぬいぐるみ、どこか私を睨みつけているような表情に見えましたの。

 さーっと、自分の血の気が引いていくのを感じましたの。

 その日、このぬいぐるみをリビングに置いておき、私は風冬の部屋で寝ましたの。


 ※※※


 あの恐ろしい日から一週間ほど経過しましたの。


「いやぁーこの動画、おもしろいですの」 

 リビングでカプットモンスター、縮めてカプモンの実況動画を見てましたの。

 実況者は『ライバルリラ』というイケメン実況者ですの。


「お姉ちゃん、もう動画は投稿しないの?」

 風冬が動画を見ている私に対して、質問してきましたの。

「もうこりごりですの。私は動画を見てるだけで充分ですの」

「ふーん、そっかぁ……」


 あの恐ろしい日から私はめっきり動画投稿に興味を失いましたの。

 ちなみにあのぬいぐるみは神社に持っていき供養してもらいましたの。

 もう、あんな怖い目はこりごりですの。


「それよりさ、これ見てお姉ちゃん!」

 風冬は「ジャンジャジャーン」と効果音を口ずさみながら、『あるもの』を見せてきましたの。


 それは――私が前に買ったあの猫のぬいぐるみですの。

「お姉ちゃんが買ったの見て私も欲しくなったんだよね。いいよね、これ!」

 私は勢いよく、立ち上がり、玄関の扉目指して走り出しましたの。

「お、お姉ちゃん!?」

「うわああああああ! 風冬、それどこかに捨てて来て欲しいですのーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 注:この作品はフィクションであり実在の人物、団体および事件は一切関係ありませんの。一切関係ありませんの。

 大事な事なので二回言いましたの。


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