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モブはモブらしく  作者: ツナ太郎
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プロローグ

 皆さんは主人公に憧れたことはあるだろうか。主人公とはその名の通り、物語の主人公のことだ。数々の強敵を倒して強くなったりするジャンプ的主人公。数々の女の子から告白されるハーレム主人公。唯一無二の力を持つ最強主人公。


 種類は色々あるが、どれも憧れるだろう。主人公は皆の憧れの的なのだ。


 だが、この少年、影縫 誠は少し違う。彼は主人公などに興味はない。彼がなりたいと思っているのは『モブ』なのだ。そう、あのモブだ。


 『モブ』とは、主人公やその他の関係者以外の存在のことだ。いわゆる『村人A』だ。誰からも見向きもされない。主人公とは孤立無援であり、憧れるような所もない。


 だが、少年はモブであることを望む。それは、目立つことが嫌いだからだ。目立ちたくない。その一心で少年は日々を過ごしていた。


 しかし、彼はクラスメイトと共に、異世界転生とやらに巻き込まれてしまった。

 そこで、魔王討伐の命が少年たちに言いわたされた。


 クラスメイトは魔王を討伐するために尽力する中、少年だけは目立たないために全力を注ぐ。


 この物語は、そんな少年の冒険を描いた物語。




~~~~~

自分こと、影縫かげぬい まことは機嫌が悪い。


理由は単純明快。今日が月曜日であるためだ。

週の始めは憂鬱以外のなにものでもない。土日の休みの余韻が残りつつ、今日が学校であるという現実に直面し、どうしようもなく嫌な気分になる。

 だが、学校をズル休みすれば、さらに行きたくなくなる気分になるだろう。

 ゆえに自分は、機嫌が悪い。


 そんなことを思いながら、自分は通学路を歩いていた。少し地面を蹴るようにして...。


 「おは、誠」

 「お…おはよー」

 

教室の扉を開け、自分の席に座ると、前の席の塚本つかもと しゅんが体をこちらにひねって、話しかけてきた。

 

 「また、寝不足化か?」

 「昨日は11時半には寝たんだけどな。てか、なんで寝てないとか思ったんだ?」

 「なんでって、死んだ魚みたいな目をしてるからな」

 「ことごとく失礼な奴だな」

 

そういうと、俊はにっこりと笑ってみせた。

 こいつは俺の唯一の友達である。

 朝はいつもこうして何気ない会話をして過ごしている。


 しばらくすると、チャイムがなり、先生が教室に入っていると同時に会話は途切れた。

~~~~~


 昼休みが始まり、みなが騒ぎながら食堂に向かう中、自分は教室の隅で一人弁当を食べていた。


 「お前って、モブだな」

 「そうか。てか、開口一番それかよ」

 「なんか、ゲームに出てくる『村人B』みたいな」

 「失礼だな。てかお前だってモブだろ。『村人D』だろ」

 開始5秒で人を怒らせれる才能でも持ってるのか、この男は...。


 「いや、俺はお前よりもモブでない自信はあるぞ、誠」

 「根拠は?」

 「お前のような根暗じゃないってことだ」

 「…」


 こいつはいつか殺される気がするんだが...。俺に。この失礼かつ直球な言葉にイラつかない人がいたら教えてくれ。交代してあげるから。

 だが否定できないのも事実だ。だから、余計に腹が立つ。


 「まぁ、モブの方がいいんだが...」

 「憧れないのか、主人公に」

 「目立ちたくないんだよ」

 「だが、結局俺らはモブだろうな」

 

そう言って俊は自分を、正確には自分の後ろにいるある人物の方を睨んだ。

 そのある人物とは平井ひらい かける。この学校で一番の有名人だ。頭脳明晰、スポーツ万能、おまけに正義感にあふれていて優しさも兼ね備えた生徒だ。しかもイケメン。

その周りには常に女子が20人以上いる始末。そして、あの『御三家』からも好かれている。


 『御三家』とは、この学校の中で、特に男子から人気がある3人の生徒のことだ。

スポーツ娘の赤井あかい 天理てんり、生徒会長の青山あおやま 麗華れいか、そして転校生の緑川みどりかわ みなみ。この3人を『御三家』という。

自分はこの名前を聞いたときに、あの国民的RPGゲームが浮かんでしまい、笑ってしまった。とりあえず、『御三家』と名前をつけた人はかなりセンスがある。

 だが、この3人が美人なのには違いないと思う。


 そして、幸か不幸かその3人が同じクラスにいるのだ。互いが互いを牽制し合っている。何勢力だよ。


 まぁ、要するに、平井はかなりモテている。ということだ。


 「俺らとは次元が違うっていうか、ああいうのが主人公になるんだろうな」

 「そうだな」

 「てか、あいつのせいで俺のイケメンフェイスも意味をなさないし、周りの女子たちは全員あいつのとりこだし」


 なるほど。要するにこいつはモテないのを平井のせいにしてるってことか。お前はそこまでイケメンじゃないぞ、俊。


 「主人公か...」

 「なんだ、お前もやっぱりモテたいのか? 誰がタイプなんだ?」

 「違う、お前みたいに高校生活は全部お花畑みたいな考え方と一緒にするな」

 「言ったな、根暗が」


 互いがにらみ合っていると、携帯のメールの受信音が鳴り、自分は携帯を取り出した。

 

 「なんでこんな時間に?」


 俺の携帯には親のメアドしか登録してないのに...。


 『昼休み、早めに教室に集合しておいてください。連絡があります 美和先生より』


 「先生から?」


 何か、悪い事でもしたかな。いい意味でも悪い意味でも目立たないように学校生活送っていたのに。でも、この文面に自分の『危険ですよセンサー』が反応している。


 ふと、前を見ると俊も携帯をいじっていた。


 「メールか?」

 「ああ、そうだけど...」

 「ちょっと見せて」

 「お...おい」


 自分は俊は携帯を強引に奪い取ると、その携帯に書かれたメールの文面を見た。そこには自分と同じ文章があった。よかった...。自分だけじゃなくて。


 「何すんだよ」

 「あ。いや、ごめん」


 自分は俊に携帯を返すと、同時に質問した。


 「なんだろうな。連絡って...」

 「さあな」

 「俺らだけ呼び出しとか...」

 「あんまネガティブになんなよ」


 それもそうなんだが、自分のセンサーが反応してる時は間違えなく何かがある時なんだが...。


 数分後、愚痴をこぼしながら生徒たちが教室に戻ってきた。どうやら、先生に呼ばれたのは自分たちだけではないようだ。よかった。自分達だけじゃなくて...。

 

 「なんの連絡だろうな、誠。もしかして、転校生とかだったりして」

 「転校生に期待するのはやめとけよ」


 自分がそう言うと、俊はまたと平井の方を睨んだ。

 そう、このクラスに一度、転校生が来たことがあった。

 それが『御三家』の一人、草タイp...。緑川みどりかわ みなみ。文句のつけようが無いくらいの美少女だった。

 もちろん、男子の大半は喜んだ。これは運命かもと、ときめいたものもいたそうだ。

が、その2週間後にある噂が流れた。

 それは、緑川が平井に告白したということだ。平井はその告白を受け入れなかったそうだが、『緑川が平井に好意を寄せている』という事実は残った。

 要するに、転校生に期待しても平井に取られてしまうということだ。さすが、平井というべきか。


 


~~~~~

 教室に全員集合して数分後、美和みわ先生が教室に入ってきた。

 

 「美和ちゃん。突然なんで、俺たちを呼び出したんですか」


 唐突に、俊がケラケラと笑いながら聞いた。生徒たちも同じ疑問を持っているようだ。


 「美和先生ですよ、塚本君。今日は転校生を紹介しようと思って...」


 その言葉に、ほとんどの生徒が喜んでいた。ただ、信二はというとさっきの会話のせいかは知らないが、何とも微妙な顔をしていた。


 「では、転校生を紹介します。入ってきて...」


 先生がそう言った瞬間、教室のドアが開き、その転校生が入ってきた。

 その姿にほとんどの男子が釘ずけになった。なぜならば、その転校生は、かなりの別嬪べっぴんだったからだ。恐らく、このクラスで一番だ。俊を含め、一部の男子は狂気していた。怖いわ...。


 すると、彼女はチョークを手に取り、黒板に名前を書きだした。


 「...春奈はるな しずかか」


 なんか、聞いたことある名前だな。

 

 すると、彼女は自分の方をじっと見つめてきた。


 「なんで、行っちゃったの...」


 彼女は自分の方に近づいてきた。瞳に涙を浮かばせて。


 「また、会えてよかった」


 彼女は次第に速度を速めてきた。まるでどこかの映画のヒロインとの再会シーンのような...。


 「翔君」


 彼女は自分の後ろにいた、平井に抱きついた。


 「もしかして、シズクか」


 あれ、これって自分に抱きついてくるパターンでは...。春奈って聞いたことがあったんだけどな。

あ、それ、俺の姉貴の友達の名前だったわ。我ながら期待した自分が恥ずかしい。自分のセンサーはこれに反応していたのかもしれない。


 自分がふと前を見ると、俊は梅干しのように顔が真っ赤に染まっていた。こいつも俺と同じように勘違いしたんだな。すると、自然と恥ずかしさは消えていった。


 その時、また自分のセンサーが反応した。殺気...。しかも、3つ。辺りを見渡すと、あの『御三家』たちが、今にも春奈さんに襲い掛かりそうな勢いの殺気を出していた。

 そんな殺気を完全に無視し、春奈さんは平井にくっついたままだ。

 これは近いうちに荒れるな...。でも、青春してるな。本当に平井は王道ラブコメの主人公だな。

 俺は近くで彼らを応援するとするか。一人のモブとして...。


 その時、突如として教室の床が光り、魔法陣のようなものが浮かび上がってきた。

それは、なんとも鮮やかで美しいものだった。


 「なにこれ」

 「なんかのマジックか」


 そして自分たちはその魔法陣の中に吸い込まれて消えた。


 後には、いつもとは真逆の静寂に包まれた教室だけが残った。



~~~~

 「ようこそ、神に導かれし転生者達よ」












 



次からは誠をマコトにします。


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