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罪と恋  作者: ししゃも
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恋愛禁止法に生かされる未来とは。

恋愛禁止法

(大和八年六月二日第九六号)


第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。


一 配偶者を持つた者。


二 配偶者との子を持つた者、その子。


第二条 前条の罪を犯した者に対しては、情状に因り、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる。


第三条 第一条の罪を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準ずる。


第四条 この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。






 僕の曽祖父の時代は子どもが少なく高齢者が多い少子高齢化社会であった、と社会の授業で習った。高齢者が多くなりすぎたので「日本の未来はない、米国に吸収される方がまだマシ」って政治家が発言した事件もあったらしいけど僕はそんな時代があったからこそ、今のこの大和の時代がこんなに便利な世の中になったんじゃないかって思う。

 IoTの発達で手を動かさなくても電気製品を動かしたり電話できるようになった。それこそ、曽祖父の時代に流行った四角い相互通信端末のスマートフォンがなかったら、ブレインコントローラー、みんなブレコンって呼んでるけど、こんなものが開発されるはずがないもん。すごい便利だよこれ。

 医療の面でもこの国は発展を遂げた。昔は癌や自殺が死亡の原因のほとんどを占めていたらしいけど今や病気で死ぬ人なんてほとんどいない。死んじゃう理由なんて言ったら老衰以外考えられない。今の僕には苦しんで死んじゃうなんでちょっと可哀想だなぁって思っちゃう。

 他にもiPS細胞の研究の成果で同性異性関係なく簡単で安く赤ちゃんを作れるようになった。これのお陰でお父さんの時代ぐらいから少子高齢化社会から多子若年化社会に突入した。この技術が実用化された時は、若者の時代だー!なんて勢いがついたらしいけど、きっと僕らの時代のことなんかこれっぽっちも考えてなかったんだろうな。

 その技術が広まって子どもが多くなった結果、この国の政府は多数決という道具を上手に使い、恋愛禁止法を制定、発足した。一昔前のアイドルみたいだなってお父さんはそう言うけど僕はそんなの聞いてられない。




だって僕には好きな人がいるのに。





 僕は恋愛禁止法のことで饒舌になってるテレビを横目に学校へ行く準備をする。いつもの通りご飯を食べて、いつもの通り制服を着て、いつもの通りそのテレビを黙らせて玄関から出る。そしていつもの通り今の気分をブレコンに判断してもらって、それにあった音楽をかけてもらう。今日の朝はBeroniAsの「さいばーてっく」か。なるほど。僕の今の気分はそういう気分か。

 僕は毎日歩いて学校に向かう。自動運転タクシーの利用による運動不足が懸念されてるからってわけじゃない。僕の毎日の楽しみがこの毎朝の登校なのだ。いつもの角を曲がったらあの子がいつも待ってくれてる。

 僕はブレコンに音楽に止めさせ、彼女に話しかける。

 「やぁ、おはよう」

 「うん、おはよう」

彼女と他愛のない話をする。

おすすめの新譜とか見たテレビの話とか。

 「最近、恋禁のニュースしかやってないから全然テレビ見てないなぁ」

 「そうだね、毎日おんなじこと話してるからつまんないよね」

 黒髪ショートボブの彼女との毎朝の登校は僕にとって幸せな時間をくれる。今ブレコンに曲を選んでもらったら僕の好きなアーティストのSPYAIRとか流してくれそう。すっげー昔の曲だけどあの曲は最高だ。それぐらい気分が最高なのだ。

 彼女とは保育所からの幼馴染で昔からずっと一緒だ。周りの友達にからかわれることもあったけれど、それもいつしか落ち着いていつも隣にいてくれている。なんて僕は幸せ者なんだろう。

 「すごい幸せそうな顔してるけど、何かいいことあったの?」

 「えーと、えと、それは僕は君の事がsluayjuだからだよ」

 「? なんて言ったの?」


またこれだ。

僕が彼女に抱いている気持ちを打ち明けようとすると口がうまく動かなくなる。

最近やっと彼女に対する気持ちがまとまって勇気も出てきたのに。なんなんだろう。


 「んーん、なんでもないよ」

 「そう?ならいいけど」


 雰囲気が悪くなってどうしようかと悩んでいるうちに僕らの学校についた。

 タクシーと歩きの学校への入口は別になっている。歩きは校門があってそこから学校に入れるが、タクシーの場合は乗っている学生を降ろしたあと再び要請が入った場所へと向かう。その速度は平均でも時速100kmを超えるのでそんなとこに歩いて向かえば学校ではなく天国か地獄に着いてしまう。

 「じゃあ私はこっちだから」

 「そうだったね、あーあ、クラスも同じならいいのに」

 「でも授業中はブレコンのせいでおしゃべり出来ないしまともに話せるのはお昼休みだけだよー?」

 「あー、そっかぁ、残念」

 「じゃあまたね」

 「うん、また明日」

そんなやり取りをして彼女と別れる。

僕は僕のクラスに向かおうかと思った瞬間声をかけられた。

 「よう、夫婦ごっこは終わったか?」

忘れてた。

いや覚えてたけど、忘れた気になってた。

 こいつは小学校からの付き合いで今でも唯一僕とあの子との関係をいじってくる。でも嫌なやつじゃないから恨めないやつ。悔しい。

 「知ってる?夫婦になると捕まるんだよ、嫌な時代になったもんだよ」

 「ほんとな、まぁでもお前らのその関係をずっと見られるってだけでもいじりがいがあるよ」

 「はいはい」

そういうどうでもいい話をしながら教室へ向かう。僕はこいつと同じクラスだったらしい。いや、しってたけど。

 「あぶね、宿題するの忘れてた、ブレコンもこういうこと教えてくれるぐらい賢いなら宿題もしてくれたらいいのにな」

 「またあほみたいなこといってる、そんなこと言ってたら自分のためにならないよ?」

 「はいはい、まじめさんは黙ってて」


ブレインコントローラー、通称ブレコン。

僕達の脳波を常に測定し、ARとして情報を視界に映す。さっきあほのあいつが言ってた現状で完了すべきリスク、気になったこと、今の気分とかとか例をあげたらキリがないね。


父の時代にこれは実用化されて今では政府がブレコンの使用を推奨しているぐらいで、最初はAIに反対する人たちもいたみたいだけど、この国は多数決で決まる。


僕はもっとマイノリティーの意見も聞くべきだって思うし、どちらかと言え




Run Killing Program


...............



Complete



………………多数決が全てだ。そうだ。

少数意見は聞くだけ時間が無駄だ。



 「おい、なにぼーっとしてんだ、恋禁法になんて何考えたって意味ないぞ」

 「あっごめんごめん、じゃなくて恋禁法なんて何も考えてないってば」


  僕は何を考えていたんだっけ?


 「宿題は進んだ?」

 「いやぁ、だめだ。難しすぎるってこれ。

  頼む、見せてくれないか」

 「自分のためにならないって何度も」

 「そう言われると思った、分かりました、やりますやります」

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