ウォレットLoverS
ちょっと分かりづらいかもしれません。
本当にただの冗談ですのでお暇な方のみどうぞ
百子と十夜の出会いは突然だった。
十夜の生活する世界には10個のランクがある。彼は下から三番目だ。
だが今の彼の使用人は怠慢な男で、上から4番目のランクから下の者はなかなか使おうと
はしなかった。
そのため十夜はもうずっと長い間同じ場所で仕事もなく燻っていた。
そんなある日、十夜より二つランクが上の百子がやってきた。
燻り続けていた十夜の前にやってきた百子、キラキラと自分を見つめる彼女に、もうずい
ぶんと錆び付いた顔をしていた十夜も目を奪われた。
二人は一目で恋に落ちた。
ここへきたきりやはり出番のない百子、そして十夜の二人にとってはずいぶんと穏やかな
時間が流れていった。
二人は寄り添いながら約束を交わす。
必ずここをでるときは。
仕事へ向かわねばならない日がきたら、
二人で行こうと。
ずっと二人でいようと。
叶えることのできない夢だと知りながら二人はそう話す。
そうでもしなければやって行くことなど出来ない。
彼を彼女を失う未来は必ず来るのだ。
その日は雨だった。
嫌な予感がすると百子は体を震わせた。
十夜は彼女にぴたりと寄り添いながら同じ思いを抱えて俯いた。
そしてその瞬間、普段めったに空けられることのない外界への扉が開かれた。
百子が外へと連れ出される。
一人だけ。
いやだと百子は身をひねったが使用人には通じず、
待ってくれと十夜は叫んだが使用人には聞こえなかった。
*
「ごめん、いくらだっけ?」
男が聞くとレジの若い女の子は露骨に面倒くさそうな顔をした。
「2110円です。」
早くしろといった様子で早口に女の子が応える。
男はもう一度、小銭を普段あまり使わないためにずしりと重い財布を覗いた。
手には5千円札と100円玉。
たまには使わなきゃなぁと男は10円玉を取り出した。
*
「十夜!!」
「百子!!」
手のひらの上でもう一度再開したふたりは叫んでひしと抱き合った。
*
カチャリと音をたててこぼれかけた小銭をおっと、と男が握り直す。
じゃあこれでと受け皿の上にお金を置いた。
*
「よかった!!まだしばらくは一緒にいられるわね?」
百子が歓喜の声をあげたが十夜は切なげな顔をした。
「どうしたの?」
「百子・・だめなんだ。ここまでなんだよ。」
えっ、と声を詰まらせる百子に十夜は目配せをした。
その先にあるものは・・・
「あれは・・・?」
「選別機なのさ」
十夜が苦しげに声を上げる
「ここで100円は100円、10円は10円に分けられてしまう。百子、ぼくらは結ばれない運命なんだ。」
*
レジの女の子は受け皿を持ち上げるとレジに小銭を入れようとそれを傾けた。
小銭がじゃらんと中へ入っていく。
「最近のレジって便利だな〜」
女の子がぼそりという。
「勝手に小銭を分けて勝手におつり出てくるもんな」
科学の進歩とは素晴らしい、と年寄りみたく呟いた。
*
機械をの中を通って仕分け場所へ向かいながら百子は叫んだ
「十夜!十夜っあなたはなぜ十夜なの!なぜ10円なんかに生まれてしまったの!!いっそその名前を捨てることができたならっ」
「君のためならぼくだって・・・っあぁ百子!!きみはそっちの区画に行ってしまうんだね!さようなら!!!永遠に忘れないよっっ」
「十夜―――――――――!!!!」
*
自分の手元でそんな小さな恋人たちが永遠の別れをしているとは知らず女の子はレジをばたんと閉めた。
そして目の前でいちゃいちゃしながら買い物をしているカップルに心の中で毒づいていた。
「わかったからさっさとお金を出せっっどっちが払うとかもぅいいだろうっいつまでその押し問答続かせる気だ〜〜〜〜!!!!」
あまりに暇すぎて仕事中にお金で妄想。
10円の十夜君と100円の百子ちゃんでロミジュリ。(暇人)
レジの人は別に私じゃありません。
さすがに面倒くさくても露骨な顔はしません(ほんとか)