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神の欠片〜The masterpiece 〜  作者: あいるー
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状況把握

不思議な浮遊感を感じ意識が覚醒する。 そして周りを見渡し愕然とした。 浮遊感を感じるのは当然だろう。 何故ならそこは、下を見ても地面はなく、上を見ても空はない。 左右を見ても何も無く、あるのは何の色も付いていない無色の世界のみ。


「………此処は………一体何処だ………?」


現実的ではない風景に 思わず驚きの混じった言葉が出る。


『此処は貴方の夢を元に私が作った幻想空間ですよ』


すると自分の疑問に答える声が頭の中に直接聞こえてきた。 まさか自分の疑問に答える人物がいるとは思わず驚いて周りを見渡すが、眼に映るのはやはりなんの色にも染まっていない無色の世界だけ。


『ふふ……いくら探しても私は見つかりませんよ。 ……少し待ってくださいね……』


すると目の前に光が集まっていきしばらくすると、ポンッという音と共にそこに一人の少女が立っていた。


「ふう……やはり人型になるのは少し疲れますね」


少女の登場に驚くがこちらの事などお構い無しに話を進める。


「それでは 初めまして、久世 くぜいつきさん。 私は世界の始まりの樹に宿る聖霊、ユグルと言います。 これからよろしくお願いしますね。」


それに対して久世は警戒心のこもった声で返答をする。



「……どうして俺の名前を知っているんですか? と言うか世界の始まりの樹ってなんです?」


「貴方が目覚めて一番最初に見たあの巨大な樹の事ですよ。 名前は知っていて当然です。 何故なら貴方がいた元々いた世界から私が守る世界〈アスガルド〉へ世界移動をさせたのは他の誰でも無いでもない私ですから」


「え……」


「ですから貴方を世界移動させたのは私ですと言ったのです」


ユグルのその言葉は思考が凍り付くには十分過ぎるほどの衝撃があった。 そして頭の中で何故、どうしてなどの疑問がぐるぐると回る。


「どうして……と言いたいみたいですね」


そんな久世の心が顔に出ていたのか、ユグルは顔に苦笑を浮かべながら説明を始めた。


「まずこの世界に呼んだ理由ですが、単刀直入に言いますと貴方に世界を救って欲しいのです」


いきなり特大の爆弾が投下された。


「は?」


「世界を救って欲しいのです。 正確には三年以内に復活する魔神を打倒して欲しいのです」


絶句している久世に構わず、ユグルは話を進めていく。


「その為には久世さんにはまず世界を回って貰います」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


ユグルは久世の言葉を聞かずどんどん話を進める。


「そして世界に散らばる神の欠片マスターピースを集めてください」


そんな話を聞かないユグルに久世は遂にキレる。


「ちょっと待てって言ってるだろ!!」


「!?」


突然の大きな声に驚いてユグルの説明が止まる。 そして今まで溜まっていた不満が爆発する。


「さっきから聞いてれば何なんだよ!! いきなり呼んだくせにしばらく放置にするわ、馬鹿でかい狼や四つ腕の熊に殺されそうになる! 夢に出てきて俺の話も聞かずいきなり世界を救えだ世界を回ってくれなんてなめてんのかよ!

魔神を倒してくれだと!? 俺には何の関係も無えじゃねえかよ!? ふざけんなよ! そんなのは勇者とか英雄の仕事だろ!? 俺は普通の一般人だ! 早く元の世界に返せよ!!」


言いたいことを言い切り多少落ち着く。 そしてそんな久世の言葉を聞いたユグルは突然何も無い空間に正座をし久世に頭を下げた。


「……申し訳ありませんでした」


「な!?」


土下座である。 まさか土下座されるとは思わずかなり焦る。


「土下座なんて止めてくれ! 」


「いえ、最初にこうやって謝罪をするべきだったんです。 申し訳ありませんでした」


「分かった! 分かったから土下座は止めてくれ! そのままじゃ話も出来ないだろ?」


そう言って土下座は止めて貰い、話を再開する。


「じゃあ、もう一回最初から説明を頼む」


「はい。 ……まず久世さんを召喚した理由ですが、三年以内に魔神の封印が解けてしまいます。 そして久世さんにはその復活した魔神を倒して欲しいのです」


「ん? 封印されていたって事は以前はその世界の人間だけでその魔神ってのを封印したんだろ?」


「その通りです。 しかし〈アスガルド〉の人間達ではどれだけ多大な犠牲を払って魔神に挑んでも封印までしかできないのです。以前は封印は出来ましたが、今回はおそらく不可能でしょう」


「どうして今回は封印出来ないんだ?」


「最初の魔神との戦いで多くの魔法使いが亡くなりました。 そのせいで今の魔法は衰退してしまい現代の魔法ではどんなに頑張っても不可能なのです」


此処まで聞いた事を一度頭の中で整理する。


「何でわざわざ別世界から俺を召喚したんだ? 言っちゃ悪いけど俺は何の関係もないよな?」


「実はそうでも無いんです。 今回貴方を召喚した世界〈アスガルド〉は無限にある世界の元になったの世界なのです。 つまり木で言う所の根っこの部分になります。 この根っこの部分である〈アスガルド〉が滅んでしまうと葉っぱや実の部分にあたる全ての世界も滅んでしまうのです」


ユグルの言葉に驚く。 その話が本当だとすると一度、全世界が滅びかけた事になる。


「前回は大丈夫だったのか……?」


そんな久世の言葉にユグルは首を横に振る。


「いいえ……残念ながらいくつかの世界は滅びてしまいました。 その時滅ばなかった世界も疫病が流行ったり、隕石が落ちたりして人類に大なり小なり影響が出た筈です



ユグルの話を聞いて久世の世界でも疫病が流行して大量の人間が亡くなったり、特大の隕石が落ちて生態系に大打撃を与えた出来事があった事を思い出す。


「……俺も関係あるのは分かった。 でも俺は何も出来ないぞ? 特別な力があるわけでも無いし身体能力が高いわけでも無い。 何処にでもいる普通の人間だぞ?」


「 もちろん久世さんを召喚した理由はありますよ。 それは久世さんが《器》(うつわ)だからです」


「《器》? 俺はそんな物持ってないぞ? 何しろ気づいたら何も持っていなかったからな」


「申し訳ありません。 世界移動時に余計な物までは移動できないんです。 そして《器》ですがそれは物では無く、もっと概念的な物なのです。 つまり久世 樹と言う人間が《器》その物なのです」


そんな事を言われても久世自身はイマイチ理解出来ない。 しかしこのまま問答を繰り返しても仕方がないと思い続きをお願いする。


「まあ……それで? 俺はこれからどうすればいいんだ?」


「はい……久世さんには世界中に散らばる七つの神の欠片を集めて貰います」


「神の欠片? なんか全部集めたら願いでも叶いそうだな」


「まあ、叶いますね。 何せ神の欠片はこの世界を創造した神の能力の欠片、全部集めたら同等の能力を得られるので当然ですよね」


「……わーお」


冗談のつもりで言ってみたら本当に叶うらしい。 思わず馬鹿みたいな声が出る。


「神の欠片は全部で七つ。 《神の魔力》、《神の知恵》、《神の武器》、《神の眼》、《神の力》 、《神の技術》、《神の身体》です。どうです? 全部集めたら何でも出来ると思いませんか?」


「……そーですねーすごいなーますたーぴーす」


「もう! しっかりして下さい!」


余りにも突拍子も無い話に思考が停止する。 そんな久世にユグルは少し怒ったような声をあげる。


「は!?」


その一撃で思考が若干回復する。


「ちゃんと話を聞いてください! ……久世さんにはその七つの神の欠片を集めて貰い、その力を持って魔神を倒して欲しいのです」


此処までの話をもう一度頭の中で整理する。 そして一つの疑問が出る。


「……なあ、その神の欠片ってのを集めると魔神を倒せるんだろう? じゃあ何で前回は倒さなかったんだ?」


「神の欠片というのはきちんとした入れ物に入れてこそ力を発揮します。 入れ物を用意せず神の欠片だけを集めても力は使えます。 しかし、入れ物に入ってない状態で力を使うと魔神を倒す前に欠片の方が出力に耐え切れず自壊してしまい、封印までしか出来ないのです」


「……その入れ物が俺って言うわけか……」


「その通りです。 ……此処までで何か質問はありますか?」


久世は此処までの話を取り敢えずは信じる。 そして最後に一番聞きたい事を聞く。


「話は分かった。 ただ最後に一つ聞きたい。 俺は元の世界に戻れるのか?」


「私には不可能です。 しかし久世さんが全ての神に欠片を集めることが出来れば元の世界に戻る事は可能です」


その言葉を聞き少し安心する。 戻れる可能性があると言うだけで取り敢えず頑張れる。


「分かった。 俺は神の欠片を集める」


「! ……ありがとございます!」


「ただし! 集めるのは俺が元の世界に戻る為だからな。 ……まあついでに魔神も倒してやるよ」


そんな久世の言葉にユグルは笑みを浮かべる。


「ええ、元の世界に戻るついでに世界を救ってください」


そんな会話の後に、無色の世界にヒビが入り始める。


「そろそろ久世さんの意識が戻るようですね。 久世さん、この世界はとてもいい所です。 欠片ばかりを集めないで是非、楽しんで行って下さい」


「……ああせいぜい楽しませて貰うよ」


もう後少しでこの空間も壊れる。 だんだんと久世の意識が無くなっていく中、ユグルの言葉が聞こえる。


「久世さん、最初に手に入れた木の棒は無くさないで下さいね。 それが私が贈る最初の神の欠片《神の魔力》です。 それでは最後に一言」




「welcome to new world(ようこそ、新しい世界へ)」


そんな言葉を最後に久世は意識を閉ざした。





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