第十話 世界と日々
時間が取れない
第十話 世界と日々
送っていけ、と言われたので仕方なくユーリスを送ることになった。
蘇土は夜のカブキ町をユーリスと共に歩む。
高野と良太郎は医者に行くとか言って先に行ってしまった。
妙な笑みを浮かべて去って行った馬鹿者二人のことを考えると、蘇土はどうにも落ち着かなくなった。
「疲れただろ」
「ええ、今日は色々とありすぎました」
朝から昼間に洗濯屋で働いて、夕方に拉致されて、夜に博打勝負の景品になる。
夜のカブキ町は平日でも人でごった返していて、足早な野郎は二人の間に平然と割り込んでくる。
歩く速さも違うので、はぐれそうになって、蘇土は手を伸ばす。
ユーリスは戸惑うことなく蘇土の手を取った。
手の柔らかさに少し驚く。ユーリスは蘇土の手の硬さに驚いたのかもしれない。
「大きな手」
「ああ、これ以上はデカくはならねえらしいよ」
不意に、ユーリスは足を止めた。
「どうした」
「あの、それが」
見れば、ユーリスの顔はいまさらに青褪めて、足は震えていた。
「いまさらですが、怖かったのです」
蘇土は目を細めてユーリスを見た。ほんの数秒何か考えたようだ。
「つかまってろ」
蘇土はユーリスの足に手をやると、そのまま子供を抱くようにして彼女を抱え上げた。
「あ、蘇土さま、いけません」
「つかまってろ」
同じことを繰り返して、そのまま歩き始める。
通り過ぎる人はちらりと見るだけか、口笛なぞ吹いて冷やかす者もいた。
ユーリスの抵抗は蘇土の力の前では無意味で、すぐに動くのを止めた。
「恥ずかしいです」
「俺もだ」
身長二メートルを超える蘇土の視界はユーリスにとっては新鮮なものだった。馬に乗った時とも違う、高い世界。
あ、わたし汗臭くないかな。
ユーリスは仕事の後にすぐ拉致られたせいでシャワーも浴びてないし変な汗はかくわで、そんなことが気になった。蘇土からは煙草の匂いがする。
「と、殿方にこのようにされるのは初めてのことです」
「……、そ、そうか」
「……」
人の体温というのは妙に暖かく感じる。
ちらりとユーリスが蘇土を窺えば、顔色は包帯で隠れて見えないけれど、尖った耳だけは見えて、彼の耳は赤く染まっていたので、驚くよりもなんだか嬉しい気持ちがある。
「今日は、ありがとうございます」
何か言わねばならない気がして、これじゃない感のある言葉をユーリスは無理やり発した。
「いいさ。それより、無茶はいけないぜ」
「いつも、いつもこうなのです」
「ん、どういうことだ?」
「わたくしは、いつも口が勝手に動くのです。皇帝陛下のお孫様にもついぞ恥をかかせてしまって、暗殺者が放たれました」
ファンタジー世界線の貴婦人の間では珍しい話ではない。ちょっとした失言で毒を盛られるのが社交界である。
「わたくしも、怖いのです。いつだって、折れてしまえば何事もないというのに、いつもその時の心でわたくしの口は動いてしまいます。本当は、危機が迫ると怖いのです」
「ああ」
「わたくしの悪癖が四度もの婚姻の破談を生みました。十五にもなり嫁の貰い手のない伯爵家の姫などわたくしぐらいのものです」
「なんだか、意外だったよ」
「皆様、いいえアンジェリカだって、誤解されているのです。わたくしは辺境の女を演じているだけで、童女のように聞き分けがないのです。だから敵を作るのです。だから恨みを買うのです」
恨みを、という響きはひとしおにユーリスの何かが込められたものであった。
ツェン・リはユーリスの生き方に嫉妬してあのような狼藉を働き、奇妙な縁で騎士に立ち戻った。アンジェリカにしても、真からの忠義でなくばあれほどにユーリスを慕うことはあるまい。
「なら、俺も似たようなもんだな」
「えっ」
「俺もタフな男を演じてるだけさ。本当のことを言ったら、ヤクザ共の中に突っ込んで行くのなんて怖かったんだ。頼りにしてくれてる高野さんに『この程度か』なんて思われたら嫌だろ? だから、俺もそんな理由で無茶してるんだ」
「でも、助けにきたではありませんか。わたくしは、ここではただの小娘に過ぎないというのに」
「いや、まあ、良太郎みたいなガキに根性見せられちゃあ成人してる俺がイモ引けねえってだけでさ」
ここにルーミーと良太郎がいたら、この会話に『はっきり言えよ』とツッコミを入れたことだろう。
蘇土隆明という男は、いつだって拒絶されることを恐れている。こなれた男だったら「ユーちゃんが好きだから」くらいは言っても罰は当たらない。
「それに、ユーちゃんのことをみんなが好きだから、色々あっても助けにいくんじゃねえかな」
「忠節に報いるにしても、わたくしはただの女です。姫にできることなど、いえ、ここでは小娘ですね。たかが知れているのです」
「そんなこと言うからほっとけねえのさ」
ユーリスはふうと吐息を零した。
「わたくしは、いつも誰かに支えてもらわねば立てないのですね」
「そいつは違うよ。ユーちゃんの横に立ちたいからみんな寄ってくるのさ」
「……」
ユーリスは小さな声で何か言った。
故郷で祖父からも言われていたことだ。
覇気と人を惹く才があれど、女である。故に奇縁を生じた者が集うであろう。
その意味はよく分からないのだけれど、縁談や平穏に結びつくものでないのはユーリス自身もわかっていた。
「難しい話は終わりさ。後のことは任せて、ゆっくり休めばいい」
「そう、ですわね」
しばらく無言で歩いていると、蘇土の首元から小さな寝息が聞こえた。
ちっくしょう、可愛いんだからなぁ。
蘇土はいかんいかんと首を振って、駅前でタクシーを捕まえることにした。
良太郎の治療は滞りなく済んで、カブキ町の医院を出たころには深夜に近い時間になっていた。
高野の愛車は二十年落ちのセダンで、ろくに洗車もしてないのが丸わかりのボロ車であった。
助手席の良太郎は今更痛くなってきたのか包帯をつんつん触っては「いたっ」とか「痕になったらどうすんのよ」とか言っている。
「それにしても無茶したな」
「こっちのヤクザってあんな強いのね。油断したわ」
「高校生の分際でヤクザと喧嘩なんて十年早いぜ」
「オッサンになってからするもんでもないでしょ」
確かにその通りだ。しかし、高野は三十にもなってそれをした。
「俺は大人げないんだよなぁ」
ハンドルをきりながら、器用に片手で煙草を取り出して火を点ける。
カブキ町を抜けたら夜の高速道路に入る。高速は空いていて、高野はアクセルを強く踏み込む。
「ちょっとちょっと公務員なんだから安全運転しなさいよ」
「俺は帰ったら書類を片付けるんだ。ほんとにいつになったら家に帰れるんだ」
月の半分は帰宅していない。家賃はそこそこの額で、男の一人暮らしらしく贅沢なものだって揃えているというのにそれを使う時間が無い。
「大人って大変なのね」
「まあな。それより、ユーリスさんを助けるなんて言ってたけど、お前がそうしたいのは別の理由なんだろ?」
良太郎は夜景に視線を移したまましばし黙り込んだ。
「まあ、うん、助けたいからっていうのはそうなんだけど」
「詳しいことはいいよ。だけどな、誰かに頼るくらいはしろよ」
「他人はアテになんないわ」
「俺と蘇土さんくらいはアテにしろ。頼られたら嫌と言えないタイプのダメ男だ」
「ああ、浮気しまくるタイプね」
「浮気できるほどモテたことはないさ」
この辺りをごまかすから高野はうさんくさく思われるのだ。
「……助かったわ。正直死にたくはなかったから」
「今度からもう少し早く礼は言おうな。明日はルーミーんとこ行かないとなぁ。親父さんがうるせえだろうし」
「あたし、クビかしら?」
「さあなあ。ま、いい訳なりなんなり考えとけばいいさ」
気が重いのは高野も一緒だ。
センターの職員というのはだいたいこうだ。お役所仕事というのはもう少し楽でもいいと思うのだが、楽な仕事なんてどこにもない。それはきっとどこでも同じだ。
「それよりな、良太郎くんって別にゲイとかじゃないだろ」
「ん、そうよ。つーかそれにツッコムの?」
「ただの好奇心だ」
「あたしっていいとこの子だったんだけど、女が寄ってくんのよね。それで始めたのよ」
「いいとこって、どれくらい?」
「家は豪邸でパパは社長で、愛人の子供ってとこ?」
「絵に描いたみたいな家族構成だな」
「まあねえ。色々あって本妻と腹違いの兄弟のいるとこで暮らすことになったんだけどさ。そしたらもう金目当ての淫獣どもが寄って来るから、千切っては投げ千切っては投げってなもんよ」
「それはちょっと見てみてたい」
「でしょ。それに、これの方が言いたいこと言えていいのよね。そしたら癖になって今じゃあ戻れないの」
「ははは、そうか。ルーミーの世話できるんならなんでもいい」
「あのねえ、あたしの過去ってわりと重いのにさあ。結構真面目に言ったのよ」
「分かってるよ」
良太郎は小さく息を吐いて、それから笑った。
こんな大人は初めてだ。
「ありがとう」
良太郎は夜景に目を向けたまま言った。
「ガキは素直が一番だ」
「そういうとこがモテないんじゃないの?」
「俺は自分が好きだからいいんだよ」
「サイッテー」
「女に浪花節は分からないのさ」
「それは同意できるわね」
いつだって最低呼ばわりされるのが男というものだ。一生これは付いて回る。そして、浪花節が嫌いな男なんていない。
高野がセンターに戻ればまた一悶着あった。
ユーリスを抱いて戻ってきた蘇土にアンジェリカが襲いかかり、高野を待っていたゴーレムが取り押さえたという。
経理主任のゴーレムはアンジェリカを魔術で眠らせ、ユーリスを部屋に持っていき寝かせてと世話をしてくれた。
デスクに戻れば書類がまとめられており、ご丁寧に報告書以外は高野のサインで終わるようにしてくれている。
「お、こ、これは凄い」
「高野君、キミが忙しいのは分かっている。ヤクザとカジノへ行ったのも遊びではないんだろう?」
ゴーレム氏は瞳の部分から青白い光を発しながら、冷たい石造りの手を高野の肩に置いた。
「え、もうバレてるんですか」
「時刻は深夜の一時で、私はタイムカードを押している。さあ、書類仕事を始めよう。キミが提出しないといけない書類は最低で二十九枚。私がサインするだけにまで進めたのは二十枚だ。その内の七枚は領収書について質問がある」
「えっと、眠ったらダメですか」
「駄目だ」
ゴーレム氏の手には拘束魔術式が展開されている。
「やりますから、飲み物買ってきていいですかね」
「駄目だ」
ゴーレム氏が指差す先には、彼の用意したであろう夜食とお茶のセットがある。
「分かりました、やりますよ。明日の九時までにってことですよね」
「付き合おう。私は女性型の思考基盤だ。少しは嬉しいだろう」
「はい」
いじると怖い気がしたのでそれについては沈黙で応えた。
ルーミーの怪我は思いの外深かったのだが、本人がもういいと言って退院してしまった。
あれから四日後のことである。
中華料理店サジョウのユニフォームである中途半端なチャイナドレスを着たルーミーは、今日も元気に働いている。
「なんでアンタそんな元気なのよ」
「今でも痛いけど寝てるのってヒマだし」
良太郎は指がへし折れているのでウエイターのみで厨房には入っていない。
店長ことルーミーの親父は良太郎に頭突きを一発くれただけで許した。元々ルーミーは言って止まるような性格でもないし、ヤクザに斬られて平然としているような少女だ。
「まあ、血だろうなあ」
と、親父は言うだけで娘の無茶に曲がったことがないことは確信しているようだった。
それからも変わりなく過ごせていて、この街の人たちは少しおかしいのではないだろうかと良太郎は思う。
今日の仕事はあと一時間で終わる。
打ち上げをやろうという話になっていて、この後でユーリスを迎えにいって『ヤクザに勝利しておめでとう会』に流れ込む予定である。
さて、当のユーリスだが今も洗濯屋で元気に働いている。
拉致の翌日は休んだが、翌々日には出勤して拉致の手引きをした社員に平手打ちを喰らわせた。
「麾下の者を渡世人に売るとは恥を知れっ、下郎が」
この檄にパートも社員も震え上がり、当の男性社員は逃げ出してしまった。
社長以下重役に話を聞かれ、有体にあったことを話せば警察だなんだという話になったが、渡世人の顔を潰すのはよくないということに纏まった。ユーリスとしても、つけたケジメを蒸し返すことはしないと言い切っていたため、男性社員の懲戒解雇ということで決着はついた。
そんなことがあっても日常は変わらず戻ってきた。
今回の件は既に広まっていて、善意と悪意の両方を向けられることになった。一緒に働くパートさんたちは味方で、部署の違う連中からは慰み者にされたとか噂を立てられる始末である。
「ユーちゃん、気にしたらあかんで」
多腕人間種のパートさんが慰めてくれた。
「はい。気にしてはおりませんよ」
根性のある女だと思われた後は、仕事もなんだか楽になってきた。
夏の青空を見上げて、午後三時十五分からの十分間の休憩を楽しむ。
自販機のペットボトル紅茶、ノンシュガーじゃないと汗がべったりする気がする。
「シフト表できたから、みんな見といてくれ。ドナイタシスさん、希望の通りシフトちょっと増やしてるから無理はしないでくれよ」
少し前のあの日、ユーリスを悪し様に言っていた男性社員が悪びれた風もなくシフト表を配っていた。ユーリスも受け取ると、ほぼ希望の通りだ。
「あのクサレが逃げやがったしわ寄せで今月はちょっと忙しいから、みんなよろしくお願いします。あと、ドナイタシスさん、こないだは悪かった。ごめん」
「大丈夫です。近い内に一般常識三級は取得する心づもりですので」
「そ、そうか、がんばって」
「はい」
許されてないと感じたのか男性社員は逃げていく。口の悪い所があるが、心根の腐った男ではない。パートの皆はそう評していたのでからかったのである。
「勉強がんばってな。うちとこの娘も今試験してるねん」
「そうですか、奇遇ですわね」
それから年頃の娘への愚痴が始まり、母親とは大変なものだと感じ入る。そして、婚期のことを思い出したら蘇土のことも思い出して、ユーリスは悶絶した。
「なに、してはるのん?」
「い、いぇ、紅茶がにが苦いのです」
よく分からない言い訳であった。
そうこうしてる内に五時が回り、タイムカードを押したらルーミーが迎えに来た。いつものバイクである。
「おっ疲れー。着替えとか大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ先に銭湯いくから、乗って乗って」
腹の傷もなんのその、ルーミーはハーレータイプのバイクを乗りこなしている。
ヤクザの用意した医者で受けたのは再生治療だ。早ければ重傷でも三日で治る。が、治療費はバカ高い。天津はそれをポンと支払ってくれていた。
バイクは唸りを上げて国道を突き進む。
夕暮れの夏空は茜色に染まっていて、変わってしまった日常を感じさせた。
故郷の空は、白く冷たい色をしていた。
北方の辺境は冷たい雪に年の半分が覆われる。本や絵画でしか知ることのできない夏の世界をいつも夢想したものだ。夏の茜色がこんなにも美しいとは知らなかった。
ここで生きていこう。
人は分を忘れ、悪徳に満ちた、故郷と何ら変わらない世界。だから、ここにも情と愛は何ら変わらず存在している。
宴はカブキ町の屋台で始まった。
アンジェリカが蘇土に因縁をつけて暴れ、ユーリスが酒を飲んで泥酔し、ルーミーは異様にメシを食い、良太郎はみんなの調整をしていたが途中で諦め、高野は酒を飲み、蘇土はユーリスに絡まれて説教をされ、宴の幕は閉じたという。
子供体型に悩んでいるという密かな悩みを自分で暴露してしまったユーリスは後で泣きたくなったらしい。
騒がしい日々は、誰にも続いていく。
深夜、カブキ町の闇医者のもとに蘇土は訪れた。
つい数時間前の楽しげな気配は失せている。
雑居ビルのテナントの一つを使って表に出せない患者を高額で治療している女医は、深夜の来客だというのに嫌な顔一つしなかった。
パーテーションで仕切られた安っぽいにも程がある病室に向かえば、目的の人物は起きてベッドに座っていた。
「よお、元気そう、じゃあねえな」
「……、お前が運んだのか」
病室の主は、ツェン・リである。
自らヤクザを辞めるために落とした右腕、そこにはサイバーウエアの安っぽい義手が付けられていた。三本タイプのプライヤー形状で、腕というよりは工具の様相である。
「たまたま通りがかったらお前の女が泣いてたんでな。見捨ててもよかったんだが、ユーちゃんはそれも嫌がるだろうし、な」
「そうか、姫には言ったか?」
姫、ときたか。
「いいや、なんにも」
「そうか」
「三日も寝っぱなしのお前をあの姉ちゃんは看病してたんだ。礼は言っておけよ」
「あいつは俺を恨んでいるだろう」
「さあな、助けてとは言ってたぜ」
「そうか」
「治療費はお前の持ってた金で支払ってある。早いとここの街から出ていくんだな。リリーに見つかったら面倒だぜ」
「礼を言う。で、あの女だが」
「お前な、彼女のこと『女』とか言うなよ」
ツェン・リは似合わない蘇土の言葉に相好を崩す。
「いや、名前が思い出せなくてな」
「じゃあ、改めて聞いて泣かれるか怒られるこったな」
「そうだな、そこから始めるか」
ツェン・リはヤクザであったころからは想像もつかないほどに落ち着いた顔になっていた。憑き物が落ちたとでも言うのだろうか、まるで別人だ。
「女は置いていくなよ、リリーが飛んでくるぜ」
「ああ。蘇土よ、なぜ俺を助けた」
「さっき言っただろ。後味が悪いのが嫌だったってだけさ。俺のじゃなくてユーちゃんのな」
「世話になったな」
「なあに、俺は一銭も使ってねえ」
外から女の声がした。女医に目を覚ましたツェン・リについて尋ねる弾んだ声だ。
「もう会うこともないと思うが、達者でな」
「ありがとう。姫にも、いや、また会えたら自分で伝える」
蘇土は煙草をやろうとして禁煙の張り紙を見て手を止めた。
そのまま後ろ姿で手を振って病室を出た。走ってくる笑顔の女とすれ違って、彼らの会話が響き始める前に外に出る。
「あいつモテそうでムカツクな」
一人ごちて、空を見上げたら満月があった。
月明かりもネオンの輝きに塗りつぶされる夜のカブキ町。
日常が少しだけ変わった。
ユーリスと出会ってから、いやに日々が忙しい。
そんなに悪くないな、と蘇土は思うのであった。
ユーリス編はここまで。
三部構成の予定で、章立てなどは後日行います。
次は蘇土編の予定。
旧版からの引継ぎ登場人物なども後日後書きにでも書くと思います。
今まで一番嫌だった出来事は、仕事が終わって部屋に戻ろうと思ったらドアのとこにセーターを着てセカンドバッグを持った怖い人がいて、「海老さんやね、ちょっと話あるから」と言われて高級外車の後部座席に押し込まれたことだ。
中にいた怖い度がさらに高い人に二時間がかりで『男とはこうあるべき』という説教をされた時は本当に死ぬかと思った。