表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/16

アゴー、えじきになる

 全員が動きを止めた・・・

 ・・・が、沈黙は続かなかった。


「アゴー返事は?」

 返事をせかすように左手薬指をちゅくっと吸う姫(仮)。

「ひゃぅっ」

 顔も首も口元を押さえる手もピアスも、全部真っ赤になったアゴー。


 目の前で展開される謎のいちゃらぶ寸劇。

 ハーレクインとしたらよく(?)ありそうなセリフ?だが、取り合わせが間違っている。

 そして邪魔したいが、動けずに見ているしかない私。


「・・・か、  か、考えさせて  下さい。。」

「私気が短いんだよね♪」

 畳み掛ける姫(仮)。


「え・・・でも  私たち、お互いのこと、、、なにも、 知らないですよね、、、?」

「アゴーは、私のこと知りたいんだね♪」

「えっ?   ・・・はあ、、、  ・・・はい」

「私もアゴーのこと知りたいなぁ?」

「あ え あぅ、、   ・・・はい」


(ま、丸め込まれちゃダメっ!!正気に戻って!!)

 私の必死の声は、アゴーには届かない。


「私のかわいいアゴーは何をしてる人なの?」

「大学院でバイオエアロゾルの研究してます」

「それってどんなもの?」

「大気中を、浮遊して移動する微生物の動態研究です」

「へぇ、すごい興味あるなぁ」


 今までの鉄壁の守りはなんだったのか。

 自己中とか高飛車は無理って言ってなかったか。

 よりにもよってあり得ない相手に、・・・もはや陥落したかに見える、アゴー。


(アゴーは男のひとが苦手なだけだったのかな?・・・女のひとだから平気なの?)

 もしこれが普通の日本人男性で、知り合ってから順当な交際期間を経て今に至る、のだったら、衆人環視での熱烈プロポーズに友人として感動するところだ。

 でも、知り合って5分やそこらでの、非常事態下でのそれ。

(しかもこの人、女とかの前にまともな人かどうかも分かんないんだよ!?)


「え、、、よく聞いた事ない分野だなって言われるんですが・・・。病気予防の観点から、インフルエンザウイルスとかが人気テーマなんです。。。でも、私はむしろ、微生物がどんな風に大気中を浮遊しているか、長期移動中の動態が気になってるんです。乾燥指数が違うときどう変わるかとか、雨のときどうなるかとか。。。小さい生き物が風に乗って飛んでくるのって、病原菌だとか考えなければすごく興味深いことだと思うんです・・・!」

「なるほど語るねぇ。意外性もなかなかイイ」

 姫(仮)はちゅっちゅと手に口づけながら、もう片方の手は腰を抱いているどころかもうほとんどお尻を触っている。


(セクハラ親父かあの人っ!!)

 押さえつけてくる腕を何とか外そうと四苦八苦する私の前で、アゴーは真っ赤な顔ながらも、むしろ(私の話きいてくれるなんて!)と素直に感動したかのような様子だ。

 お尻のことは・・・気づいているのか分かっていないのか・・・。

 ともかく、傍目に見ても姫(仮)を見る目は恋する瞳になっているようにみえる。



 ”命の保証はする”という背後の人の言葉は、何故か疑問を挟まず信じられた。

 先ほどの様子だと権限があるかは怪しいが、少なくともこの人は本気でそのつもりだと感じる。

 だけど姫(仮)の意図はわからない。

(誰かたすけて!)

 110番か119番レベルの非常事態下のはずなのにのほほんらぶらぶに行われる三文芝居に、思い切り困惑しているのに、突っ込みを入れられない。



「おい、上の用意はまだか」

 冗長に感じられた三文芝居も、姫(仮)が唐突に幕を閉じさせた。

 お付きの者に焦れたように声をかける。

 周りは何をしているのかと思ったら、お付きの人は2、3人残してエレベータ内へ戻っていたようだ。

 残った人はいかにも羨ましそうにじっと2人の様子を見ていた。


「ご用意できました」

 エレベータの上方から返事があった。

「アゴー、早く2人きりになろうね」

 小柄な姫がアゴーを当たり前のようにお姫様抱っこして、エレベータへ向かう。 


(あぁっどうしよう!薬とか洗脳とかで、このままレイプされたら?!!!殺されたら?!!!)


 ネガティブな仮想が大量に渦巻いて、悲壮感で頭がいっぱいになる。

 涙が出そうになる-----とそのとき、ピクリ、と腕が少し動いた。

「・・アゴー!」

 声も出た。


 意気揚々と真横を通り過ぎようとした姫(仮)が、(あれ?)と言う顔をし、一瞬だけ目が合う------。



「・・・姫っ。早急過ぎではありませんか?」

 貝のように黙っていた背後の人が、急に姫に批判の声を挙げた。

「知的生物への説明義務は219条に定められています!」


「無粋な。追々でいい。それより、」

 姫(仮)は一瞬歩みの速度をゆるめニコッと害のないような笑みを浮かべた。


「今回来たのは、お前のためだ。」


 そして顔をこちらにぐっと近づける。


(なッ?)

 本気で怯えてぎょっとする瞬間。


 私の頬の真横を過ぎて、すれ違いざまに姫(仮)は私の”背後の人”に口づけた。


 チュっと軽いリップ音がして、何故か私の膝から力が抜ける。

(・・・え・・・?)

 震えながらチラリと確認すると、アゴーは姫(悪魔)の肩に顔を埋めていて、こちらを見ていない。

 ・・・計算づくだ。


「これは・・・ッ!姫ッ!」

 困惑と批判が混じった響きの声が背後からする。

「参考資料だ」

 かえってもの凄く楽しそうにニンヤリと顔中で笑う姫。


(な、、、 な。。    )

 理解の範疇を超えた行動が、やっとゆっくり理解できてくる。


(プロポーズめいたことしといて、 言ったそば から・・・!!!)

 怖い。・・・本当に怖い。けれどお腹の底から憤りが湧いてきた。

(さ、最低・・・!!!!!!!)

(こいつ、  本気で、  殴る!!!)

 殴るつもりで、渾身の一歩を踏み出す、、、

 けれど。


「お前も気張れよ」

 姫(悪魔)はぴょっ、と一気にエレベータに飛び乗り、アゴーを連れて去ってしまった。

今週末は仕事で会社に泊まり込みレベルなので、更新は今までみたいに毎日、はむりかなと思います。

あと、来週くらいに、アゴーと姫の初夜的なもの(仮)は書いたら18禁の方にアップしようと思います。

書いたらここのあとがきかまえがきでご報告します〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ