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2番目にキラキラのひと(仮)もあらわる

「ぇえっ?!!」


(な 何言ってるの、この人?)


 思考回路が完全にとんだ。


 私たちが固まっているうちに、姫がくにゃっと動き、私の背後のアゴーの顔を覗き込んでしまった。

「あっ、後ろの子かわいい。私こっちがいいなー」

(え?)

「お前こっちでいいな?こっちの方がお前に合う感じがするしちょうどいい」


 お前、とは誰に話しかけているのか。

 わからないが、完全に姫のペースだ。


 ----姫の親しげな口調や、くにゃんとした緩い仕草。

 安心するより反対に、異常事態なのにペースを崩さない様子に背筋がぞっとするような不可解な怖さを感じる。


 しかし、勝手に理解不能な話をすすめられちゃ困る。

「あ、あの、、 避難しませんかッ」

 必死に声を絞り出す。

 部外者で外国人なので状況がわかっていないのかもしれない。

 いや日本語上手ですけどちょっとたまに変だし。


(頼むから、まともな人だよね?)

(そうであってくれ)


 エレベータから、最後の1人がぽてぽてと出てきた。

 そこで、エレベータの内装が見覚えのないものになっているのに気づく。


 ざっと、体中の血が引く。

 一面に這わされたコード、床や壁に設置された何かの機材。

(なに、あれ)

 体が固くなり、息をのむ。


 最後の1人はその機材をいじっていたようだ。

 メカニックらしきゴーグルをかけて、作業用とみられる長手袋をしていた。

 他のメンバーと同じく髪と肌は白だ。

 服は一番シンプルな形で、真夏なのに黒い長袖タートルネックだった。

 体は細く、少年のような、中性的な体型をしている。

 おずおずとゴーグルを外した顔は内心ぎょっとするほど、整っていた。


 だが、2人目の超絶美形に驚いている心の余裕はない。

 ゴーグルを外したその目が、抑圧されてる者独特の目つきをしていたからだ。

 今もほんのり猫背気味で、姫の挙動を不安げな目が追っている。


「お前、そっちでいいだろう?」


 私たちの緊迫感など感じていないように、姫がすでに決定したかのように言い募る。

「・・・・・・」

 中性的な人は何も言わずほんの少し、うなづいた。


「じゃっ決まり♪ 行くよ〜」

 姫(やっぱ仮)がアゴーの腕をとった。


(連れて行かれる?!)

「アゴー!」


 一気に危機感が、募る。

 エレベータ内の改造された様子。

 そして、明らかに技術者っぽい彼が、おどおどしている点。

 何かの機械操作を、脅されて無理矢理やらされていたとかだったら?

 それが、さっきの衝撃波の原因だとしたら?


「外部者の撮影には使用許可証が必要です!お持ちですか!?」


 とっさに出た言葉は、足止めにもならなかった。


「アゴーって言うの?」

 姫(仮)は私の言葉は完全無視で、呆然としたアゴーを片手でぐっと抱き寄せた。

 ニヤッと笑いながら、もう片手で引き寄せた手の甲にちゅっと音を立ててキスをする。

「アゴー、すぐにかわいがってあげるからね」


 言葉の意味の可能性に、ぞっとする。


 アゴーは反応を返せず、姫(仮)を見つめてぼうっとしている。

「怯えてるの?」

 今度はにっこり、と一見かわいらしい微笑みを見せながら、アゴーが顎をかばっていたもう片方の手も掴む。

「怯えることないよ。かわいいアゴーに、私の一部をあげる」


 姫(仮)は着けていたピアスを片方外し、ふうっと息を吹き込むような動作をした。

 そして、当たり前のようにアゴーの片耳にそれをはめ込もうとする。


(アゴーに何する気?!)


「アゴー!」

 もう完全に後先考えず、体が動いた。


「ぅぐっ!!」

 しかし2人を引き離そうと動いた途端、誰かに羽交い締めにされる。


((触っちゃダメだ!))


「ぅ、、、ぁっ!」

 頭の中心を直接怒鳴られ、電流が走ったような感じでしびれが走り、動けなくなる。


「お2人の命の保障はしますから」

 耳元で、今度は空気振動による声がする。

「今の姫に触れたらあなたが危険です」


(・・・なに?今の・・・これ、、動けない!)


 一瞬意識を向けていなかった間に、もうアゴーにピンクのピアスがはめられていた。

 アゴーはピアス穴を空けていなかったはずなのに、、、。


「アゴー、お前の心を私に見せて」

 姫(仮)はもう1つのピアスも外し、今度はアゴーの口元に持っていく。

「そのかわいいお口を開けてごらん」

 おずおずと唇を開くアゴー。

 目は正気のように思えるが、操られているのではないか?

 不安が募る。

「細胞を1個もらうから、チクってするよ」


 アゴーの唇に触れた途端、ピアスの色がピンクから一気に赤に変わる。

(え?温度かなにかで色が変わる仕組みなの?)

(ど、毒では、ないよね、、、まさか)

 なすすべもなく、また考えの渦に一瞬沈みかける。

 固定された視線の先で、姫(仮)が物凄く嬉しそうに微笑む。


「怯えてるんじゃなくて照れてるんだね、ふふ、ますます好み」

 くすっと笑って、赤くなったピアスを自分の耳に戻す。

「お前には、そうだな・・・この国・・・日本の国家予算程度の指輪をあげよう。だから」

 もう一度、手を取ってねっとり口づける。


「アゴー、お前を全部私にくれるか?」


 アゴーはそれまでただ困ったように呆然としていたのが、顔を真っ赤にした。

 その表情には、確かに怯えではない、艶があった。


 ピアスが、燃えるような深紅になる。

姫様!もうプロポーズでふか!!展開が早すぎますぅ!!

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