アゴーとこいばな
「今回のイベント、回復薬いっぱい入手できそうでいいね」
「そうですね。でも特効カード買って採算合うか悩み中です」
「今回の特効カード、イケメンじゃない?メダル余ってるし買っちゃおっかな」
半分は分析の方向性のことを考えながら、ドラ●レの話をしつつ、小腹を満たす。
食事や研究など、頭は別の事を考えていても単純作業的にゲームをする手は動く。
いつも一緒にいる相手との間を持たせるときも、ゲームは便利だ。
(・・・ん?でも)
昼ご飯と夕ご飯はいつも通り学食で一人で食べた。
アゴーは実家通いなのでお弁当派だ。
(あれ?最近意外と会ってなかったかも)
最近お互い研究が忙しかった。
うちの研究室は宇宙での生物実験から陸地の普通のほ乳類から深海の微生物まで、研究テーマの幅がとんでもなく広いので、テーマが違うと使う実験施設が違う。
アゴーは大気圏、私は水棲微生物(特に単細胞が好み。ゾウリムシとかミドリムシ最高。有孔虫とかマニアックだけど大好き)が領域だ。
海や川でフィールドワークか地下の実験プールか培養室にいる私と違って、アゴーは屋上のリモートセンシング施設や大気観測レーザー施設を使っている。
結構久しぶりのおしゃべりかもしれない。
(・・・〆切は明日じゃないし、慣れてるから時間の目処は立ってるし。ちょっとだけ、ちゃんとおしゃべりしたいな・・・)
冷蔵庫からぴるくるんの連結パックを取り出しながら聞く。
「ねえ、電車の時間大丈夫?」
夜に乳酸菌を摂るのを習慣にしているのだ。忘れる前に飲んどこうっと。
アゴーにも1本渡す。
「はい。まだ全然余裕です。さっきの特効、買いましたか?」
「んーまだ。ていうか、アゴーはイケメンより地味系の方が好き?とかあるの?私はそうなんだけど。」
いきなりの話題転換にちょっとドキッとしたみたいなアゴー。
でも基本相手の意向に従うタイプの彼女なので、素直に返事をしてくれる。
「えと、、どうでしょう。顔、、、より、性格、と、いうか」
「だよねぇ。変にイケメンすぎてタカビーだったり自己中だったり浮気者だったらやだよね?」
「う、、浮気、 は された私 の 方に問題あるかも だし ・・・ですけど、 高飛車の方とか自己中心的 の方 は確かに難しいかも です」
「そなんだ」
(おっとぉ、、 完全同意がいつもなのに。。浮気され経験あるのかな?)
(まずい。方向転換。)
「アゴーは年下、大丈夫? とかいう私は、年下も年上もプラマイ5歳程度なら大丈夫なんだけど」
一方的に聞くのは悪いので、マシンガン的に自分の嗜好も明かしてから伺う。
「え、と、、、おじいさんとかよりは、、、年下のほうが。でも、18歳以上なら」
(いやいや大丈夫だよ。大学生だから18歳以上だよ。いくら私が恋愛あんまり興味なさすぎてもはやアブノーマルも平気レベルっつっても、アゴーにはそんな無茶は振りません)
”イケメンより美微生物の方に夢中”。
そんな私も私であまりに適当だが、、、アゴーもなんかずれてるよな〜。
ちょっと温い笑顔をしてしまうが、数日前からそのうち2人きりになったら言おうと思っていたことを口にする。
「なるほど。なら言うけど、気象研の学部生で大気レーザー施設使ってる山田君、・・・知ってる?」
屋上の施設は、お隣の気象研などと合同で使っているのだ。
「え、と、、はい。施設使うスケジュール調整で、研究室間で連絡を取るので」
「その子、アゴーに好きな人いますかって聞いてくださいって」
「え」
「多分アゴーが好きみたい。林君に聞いたら、二股とかするタイプじゃないって言ってたし、一応伝えとくね」