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人生初のお姫様抱っこですが、何か? (ムーンライトに続く)

お話としては完結していないのですが、エピソードとしてR18にした方がいいと判断したので、こちらの更新はこの話でストップします。

今後は、ムーンライトで同じタイトルで連載を続けます(下記URL)。

お手数をおかけしますが、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

http://ncode.syosetu.com/n9469bs/

「タクシーまで連れて行きますので」

 仮の王子はおもむろに腰のポーチから銀色の薄いシートを出して、私の全身に巻いていく。

 銀色の人間大ミノムシの出来上がりだ。


 なんだこれ。

 私だ。


「これで傷に電気が響かないんじゃないでしょうか」

「・・・なんだかNASAかJAXAのお土産みたいですね」

「よくご存じですね。

 いざというときのために、通販しました」

(こんな使い方するつもりで買うのは貴方だけだと思いますがね・・・)

「・・・通販とかするんですね」

「物資のほとんどを通販でまかなっています」

「そうなんですか。。。」


(どうしよう、明らかに運転手の人に怪しまれる。。。)


 アゴーをお姫様抱っこした姫の後に続いて、仮の王子に抱き上げられて通常エレベータに乗り、地上へ向かった。

 コンビニでの買い物や嘘発見機騒ぎで多少慣れてしまった感じはあるが、まだ関係性も微妙な相手に、人生初のお姫様抱っこをされるのは、あまりに気まずい。

 乙女チックなものならそれはそれで気まずいが、巨大ミノムシだから、尚更気まずい。

(しかもこの気まずさが全部筒抜けだというから尚更気まずい・・・)


 ビルの真ん前にタクシーが来ていた。

 運転手さんは、姫に目を奪われてくれたので、巨大ミノムシに興味はそこまで湧かなかったようだ。。。。

 助かった。

 姫の命令で、リュックをしょった王子が着いてくることになった。

 お目付役としてのパシリと共に、アゴーの住所を把握する役目なのだろう。

 寝ているアゴーを1人で助手席に座らせシートベルトをして、後部座席に仮の王子と並んで座って手と足の手当をしてもらうことになる。

 ちゃんと意識して調整してくれているときなら、指先が触れるくらいならちょっとぴりっとするくらいで、痛くはない。

 

 手当をしてもらっている間、手足が触れているため、会話は自然と無言のまま、念話で行う。

 運転手さんに聞かれると私まで変な人だと思われてしまう内容もあるので、ちょうどいい。


(まず忠告しますが、僕は仮の王子として疎まれています。

 その相手候補である貴方が、姫にあんな口調で応対しては危険です。

 今後は気を付けてください)

 確かに自分でも言い過ぎたと後悔していた。

 が、仮だからなのか王子候補だからなのか、疎まれているって自分で認めている感じにはもやもやする。

 でもここでこの人たちの価値観について言い合いするつもりはない。

(言い過ぎたのは分かってます。

 ・・・気をつけます)


(アゴーさんのお家にお送りした後、貴方の家にお送りします。遠いのでしょうか?)

(ええと、大学の側のアパートなので、アゴーの家より近いです。

 でも、火傷を見てもらいたいので、夜もやっている救急病院に行こうかとも思っていたのですが)

(このキットだけで救急病院での処置と同等程度のことが行えます。

 また、明日の便で来る医療チームに対応してもらえば、かなり早く治るはずです)

(・・・信じていいんですよね?)

(もちろんです。)

(確かに私も早く帰って寝たかったので。。

 それなら助かります)

 今日は研究結果まとめが進まなかったので、明日こそ頑張らなくては。


 しばらく、手当をしてもらう。

 消毒用とみられるスプレー、消炎鎮痛剤か抗生物質とみられる溶液と貼り薬、包帯の役割と見られる伸縮性のあるラッピングなど、キット内容は見慣れないものばかりだった。

(これで応急処置は終わりです。

 もう痛みもなくなったはずですが・・・

 どうですか?)

(確かに痛みはないです・・・よく効く鎮痛剤ですね。

 むしろ、あえて言えば電気ショックのせいか肩こりが良くなった気がします)

(そうですか。よかったです)


 応急処置が終わった後は、彼は寸分も暇はないという感じで腕のプレートと、リュックから取り出したタブレットを両手デュアルで弄り始めた。

 指先は最小限の動きというかほとんど動いていないのに、2つの画面ではすごい勢いでウインドウが開いたりOKが押されたりしている。

 めちゃめちゃ忙しそうだ。


「そういえば、私は火傷になったりしびれて動けなくなったりしましたけど、アゴーは姫に触られても大丈夫だったんでしょうか?」

「姫は私ほど出力が高くないので、僅かな刺激が心地よいくらいで痛みはないはずです」

(え。心地よいって・・・。)

 先ほどの艶を帯びたアゴーの様子を思い出してしまい、もやもやする。


 それに。

(姫は子供ができたらと言っていましたが。

 失礼ですが、女装しているだけで男性なのですか?)

 肉声で言いづらい事なので、仕事をする彼の肘にちょっと触れて聞く。

 ・・・なんだこれ、このこそばゆい感じ。


(いいえ。”姫”は男性でも女性でもあります。

 ただ、”姫”は基本的に時間効率のいい雄としての生殖行動を取ります)

(ええ!?)

 確かに、何だかさっきから話が合わないなと思うところもあったけど、まさかそういうこととは。

(微生物とか魚とか、シンプルな構造の動物ならそういう例も聞きますけど。

 人間の両性具有・・・インターセクシャル(IS)で女性としても男性としても生殖可能な例って、ものすごく珍しいんじゃないですか?)

(ええ、私たちの国でも”姫”は数人しかいらっしゃいません)

 詳しく知らないが、結婚後不妊に悩まされ検査して初めて自分がISだと気づいたという例もあるくらいで、ISは子供は作りづらいという印象がある。

 女性として妊娠が可能な例や、男性として精子が作れる例があるのは分かるが、男女両方の機能があって更に繁殖能力が高いだなんて、そんなこと聞いた事がない。

 染色体の異常がいい方?に出たという例だったりするのだろうか?

 専門外なので全然分からない。


(仮の王子・・・さんも、そうなんですか?)

(僕は---”王子”は、近縁種以外に対しての雄としての生殖しかできないという伝承です。

 でも”王子”は歴史的に見ても少なく、今は未繁殖の僕しかいないので、繁殖実態について研究がすすんでいないんです)

(??また謎な設定が。。。

 ・・・そうなんですか・・・)


 もやもやと考えにはまり込んでいるうちに、アゴーの家に着いた。

 私は歩けないので、仮の王子にインターホンを押してもらう。


「まあ、宮木さん!

 いつも萌がお世話になっております。」

 すぐにご両親ともに玄関に出てきてくれた。

 いつも遅くとも終電で帰るアゴーだから、心配させてしまったのだろう。

「吾郷さん。すいません、萌さん疲れていたみたいでタクシーで眠ってしまいまして。

 疲れているみたいで起きないので、夜分すいませんが、チャイムを押させていただきました」

 ほんのちょっと、嘘をついた。

 うう、気まずいが、、、

 アゴーも大人なんだし、今ここで私がご両親に勝手に何か言うわけにはいかないだろう。


「お手数をおかけしてしまい申し訳ありません!

 もしかして、飲み会かなにかだったんですか」

 お母さまが横から手伝って、お父さまが助手席からアゴーを持ち上げた。

 そうでしょうそうでしょう。

 本来、寝ている人を抱っこするのって簡単じゃないんですよ。

 生温く微笑みながら、また嘘を重ねてしまう。

「いいえ、今の時期は秋の学会発表の申込〆切前でして、萌さんの終電を逃させてしまったんです。」

「そうなんですか。何にしてもすいません。

 ・・・初めましてですよね、貴方にもお手数をおかけしたみたいで」

 ご両親ともに笑顔で、無表情に突っ立っている仮の王子の方にも顔を向けて会釈をする。


「・・・・・・いえ」


(白いアシンメトリーヘアで夏なのに黒尽くめで、ごついリュックをしょって、何だかロックな美少年がぬぼーと暗闇に無表情で立ってたら不審だろうが〜っ!)

「え、ええと、彼、りゅ、留学生なんです!」

 慌ててまた、結構激しい嘘をついてしまった。

「そうなんですか。

 バンドでもやってらっしゃるんですか?」

「・・バンド?ですか?」


(うわあこの人に話させちゃダメだっ)


「ううう、す、すいません、私達はまだ仕事があるので!!」

「え、そうなんですか?大変ですね。

 このたびは大変お手数をおかけしました。

 今度また遊びにきてくださいね」

「はい!すいません!

 また今度ちゃんとした昼間にお邪魔しますぅ!」


 ボロが出る前に早々に引き上げた。

 タクシーの後部座席にまた並んで乗って、次は私のアパートに向かう。

「ああ〜。精神的に疲れた」

「大丈夫ですか?」


((大丈夫じゃないっ!))


 無表情の感じに一瞬ムカッと来たので、手袋越しに小指をぐいっと握って、精神的に怒鳴ってやった。

こちらでの投稿はこれで終わります。

ありがとうございました!

どうかムーンライトでの続きも読んでください。

(あと、もしもよかったらムーンライト側でお気に入り登録お願いします!どなたか気に入ってくださったかな〜と不安を抱えつつ書いているので、、、)

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