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私もえじきに・・・なってたまるかっ!!

前回姫にぴょっと連れ去られたアゴーのその後は、ムーンライトノベルズに昨夜【えじきの心得。 ~「ほしのおうじさま」姫とアゴーの初めての夜~】として読み切り投稿しました。

多数のアクセスありがとうございます。

。。。

すっかり、えろえろ要員2人とじれじれ要員2人がキッカリ分かれて進行中です(苦笑)。

 お付きの者たちも一緒に消えてしまい、私と中性的なひと二人だけが残された。

 慌ててエレベータの階数表示に目をやるが、液晶画面にEEEと出ていて驚く。


 アゴーの恋愛を応援するとか平和な事を思っていた矢先の異常事態だ。

 応援とかそういうレベルじゃない。


(ぜったい、、変だ)


 男勝りな性格だと自負していたが・・・怖い。

 呼吸が苦しくなり、膝が小刻みに震えている。

 背後の人に羽交い締めにされていなかったら、しゃがみ込んでいたかもしれない。


 カルト集団によるテロと拉致監禁?

 ドラッグによる集団精神異常?

 最悪の場合、海外人身売買の恐れさえある。


 ちょっと飛び過ぎかもしれないが、姫という大げさな呼称と、先ほどの光や建物の揺れ。

 少人数なのだとしても完全にいっちゃっている行為だし、大きな組織が後ろにある恐れもある。


 さらに、人のことをこっちとかあっちとか言ったりひとをひととも思わない言い種。

 そして、口説いた相手と同じ空間での、別人への悪びれないキス。

 少なくとも普通の感性じゃない。


(私になにができるっていうの?)

(でも、みすみすアゴーは渡せない!!!)


 急に動こうとすると、バチッと後頭部の奥に激痛が走ったが、声を絞り出そうとする。

((はなしてっ!))

 途端、背後から抱えられていた腕から解放され、体の自由が戻った。


(助けなきゃ!)

 間髪いれずスマホを手に取るが、今度は手袋の手に腕を掴まれる。

 さきほどではないが、軽くしびれが走り、掴みかけたスマホを取り落とした。


「まず、110番と119番はやめてください」


 正面から、無表情な目を合わせられ、びくりとする。

「僕の権限とは関係なく、今回実験対象となったあなたとアゴーさんの、平均寿命かもしくはそれ以上の命の保証はされます。

 いわゆるレイプはしません。実験対象とはいえ知的生物との性的接触は合意の上で行うことになっています。

 また、準備ができるまで少なくとも数日から数週間かかるので、本日いきなり接合することはありません。」

(実験対象って言い方、、、どういうこと・・・?)

 安心させるつもりの説明なのかもしれないが、内容が微妙だ。

 しかも。

(数日から数週間・・・?それってむしろ、今夜限りじゃなくて監禁されたりってこと?)

「集団生活を送っている方を監禁すると大事になることは我々も認識しています。穏便な手段を僕からも進言します。」

 なんだか誠実なようなそうでもないような説明に、ますますもやっとする。


 姫はこの人にキスをした。

 この人自体が姫の味方だとしたら、この説明自体信じていいのかという疑問が本来出てくる。

 キスされて嫌そうだったのも演技かもしれない。

 いつもの私だったら出てくる疑いだ。

 けれど、この人が本気で言っているというのは判る。直接意識が入ってきて、疑う余地がないという感じだ。

 不自然なほどの無表情から感情は読み取れないし、言っていること全てに賛成ではないが・・・。


(とにかく今すぐ貞操と生命の危機はないというのは信じるとして。)

(冷静にならなくちゃ)

 少しだけ肩の力を抜いて、通常の研究観察モードを再開させる。

 自分のペースに戻さなきゃ、助かるものも助からない。


(ほんとに男女わからないなー)

 遺伝子からだけじゃなく形態分類もやる私だから、生き物の雄雌の見分けには秀でているつもりだ。

 でも目の前の人の見た目は中性的、としか言いようがなかった。


 160cmの私より少し大きいくらいの背で、男らしい体つきで長身だったお付きの者達とは明らかに違っていた。

 髪の長さは、お付きの者たちと同じような感じだ。

 肩には着かず耳や首が多少隠れる程度で、男にしては長いかなって程度。

 ハードワックスで固めたような、それでいてツルンとしたような質感の、ちょっとパンクっぽいとげとげアシンメトリーな髪型をしている。

 お付きの者達もいかにもハードワックス使いましたって感じの束感のある髪型だった。


 何より不思議なのは、さっきからこの人に触れられると、感電したみたいにしびれることだ。

 声がでなくなるし、動けなくなる。

 最初に羽交い締めにされたとき、頭に響くようだった、声、というか思考・・・。


(・・・この手袋にスタンガンかなんか仕込んである、とか?)

 でもそれだけじゃ説明がつかない。

 何だか思考が読まれているような気もする。

 まさかと思うが、オカルトやファンタジー的に言えば、精神感応とでも言うべきか。


 次々疑問がわいてくる私に、相手は握る手を強くして説明を続けた。

「先ほどのものは、こちらの方々における親愛表現としてのキスというものではなく、事務報告です。

 姫は貴方に不信感を与えるのを理解した上での悪趣味な行動でしたので、僕は不本意でした。

 実際は単に日本人の繁殖様式を具体的に表したサブカルチャーアニメを参考映像として渡されたのです」

(へっ???

 て、、まさかの方ですかっ?

 しかもサブカルアニメって、なにゆえ?)


「姫は僕への態度は確かに高圧的ですが、繁殖相手にはとても評判がよく、我が国では抱かれたいランキング一位が続いているという話です。

 僕自身理解しがたいですが、姫の相手ができることはごくごく光栄なことだと思われており、長い予約期間を経てやっと叶うというような状況です」

(へっ???

 だ、だだだ抱かれたいランキングですと?姫様が?

 てかここにきてやっぱり日本語間違ってるんじゃ?)

 もやもやとしている間に説明はどんどん進んでいく。


「少子化問題が深刻な我が国では、”姫”が多数と繁殖行為をするのは人口維持のため、王族としての義務です。

 今回おいでになった姫は、現世で一番王族の血が濃い組み合わせのご両親をお持ちになる上、数人いる姫の中でも抜きん出て高い繁殖能力の持ち主でいらっしゃいます。

 ただ、1人の姫の子孫が過半数を超えて増えすぎたため、人口バランスが崩れてしまい、次世代の有性生殖に不都合が生じたため、姫自ら新たな遺伝子獲得に乗り出してきた次第です」


(へっ???

 えっ・・・?

 えええ、、???)

 説明義務とやらを果たしてくれようとしているようだが、一気に情報が与えられすぎて、もやもやが最大値になってきた。

 荒唐無稽レベルに日本の常識とはかけ離れた国の人々、もしくは『という設定』らしい。

(っていうか、いくら小さい国でも1人の姫の子孫が国民の過半数を超えるとか、そんなのあり得ないよ。

 やっぱり現実をはき違えたカルト集団なんじゃ)

「力の強い”姫”の寿命は非常に長いため、過半数の人口を生み出す事もできたのです」


 あり得ないと思ったことをすぐに否定されることで、思考が読まれている可能性も事実味を帯びてしまう。

(・・・・・・・・・・・・もやもやもやもや)

 本当だとしても、現実として受け止めにくいレベルの話だ。

 自分やアゴーの現状と結びつくまで時間がかかる。


(多数と繁殖って・・・動物みたいな言われ方・・・)

 やっと実感を伴ってくると、話の恐ろしさと共に、荒唐無稽な可笑しささえ感じる。

(同意とかそんなの、あり得るわけないじゃない?)

(私もアゴーもたまたまいたから、”姫”とやらのたくさんの繁殖相手のうち1人、にされちゃったってこと?!そんな、理不尽すぎて同意できるワケないじゃない!!)

 怒るべきか、恐れるべきか、呆れるべきかわからない。

 渦巻く負の感情がすごくて、はち切れそうだ。


 そんな私の感情に触れているはずなのに、じっと見つめる相手の無表情は変わらず、相変わらず揚げ足を取るような説明を続けてくる。

「僕は”姫”ではありません。

 庶民の両親から産まれましたが、王の血筋に現れるとされる精神感応の形質が強く出ていたことと、染色体が庶民とは異なり、歴史に伝わる”王子”ではないかとされたため、未繁殖の今は”仮の王子”とされています。」


 そして。

「僕の精神感応は強すぎて、直に手に口を付けるのは今は無理です。

 また僕の実家は庶民なので、姫のように高価な指輪は渡せませんが・・・給料3ヶ月分相当の指輪をお渡しします。

 それでなんとか僕の繁殖相手になっていただけませんか?」

 そしてとうとう、負の感情の権化となっている私相手に、言うに事欠いて姫とやらと同じことを言い出した・・・。

 しかも、無表情のまま。


(・・・姫よりはまともかと思いたかったけど。)

(この人もだめだっ!!!思考は読めても全然話通じないっ!)


((指輪なんか要らないからっ!!それより納得できる情報をくれっ!!!))


 私はどうもやっぱり、危険物件からのお誘いしか受けられない運命のようだ。

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