プロローグ
目を閉じると、目の前に一面の星空が広がる。
ふわっと体が浮く感じがして、正面方向へ推進力を感じた。
星々が、背後へ流れていく。
(きれいだ)
正面に、悲しみ色の惑星と無感情な色の衛星が見えてきた。
姫の指示に合わせて着陸態勢に入る。
弧を描く軌道に沿って、星空がゆっくりと回る。
・・・ ・・・
((媒体コピーは終わったのかッ?))
「っ!」
激しく怒鳴られ、はっと目を開けると、憎々しげにどす黒くなった巨体が僕を見下ろしていた。
しまった。整備の途中だった。
待ち時間とはいえ、目を閉じたのは失敗だ。
(はい、終わりました。)
(じゃあさっさと渡せ。プリフライトはどうだ)
(ただいま第2次プリフライトを実施中です)
(さっさと終わらせろ。姫が乗るんだ、失敗は赦さん)
巨体の研究チーフは媒体を奪い取ると背を向けた。
夜通しの整備に立ち会う気はないようだ。
(仮の王子だろうがなんだろうが、所詮技術者風情。
不備があれば、やっとお前を解剖してやれるんだがな)
(・・・)
(燃え尽きちまったら解剖できないから、しっかり整備しとけ)
チーフはいつも通りの捨て台詞を吐いてその場を去っていった。
会話を許されている数少ない相手が、この解剖狂の不機嫌な上司なのだ。
(はあ・・・)
辺り一面クレーターだらけの無表情な大地で、ひとり発射準備を続ける僕の眼前には、悲しみの惑星が浮かんでいた。
-----あそこでは、僕の相手は見つかるのだろうか・・・。