ふらぐめんつ ひなた編
別のサイトに転載したのですが大丈夫でしょうか?
噴水のある公園。その隅にあるベンチに足をバタバタさせながら一人の女の子が座っている。手に持っているクレープを小さな口で咀嚼しているようだ。
方に届く位の髪を持ち小学生と間違われそうなくらい背は小さい、その要旨はどこか精巧に作られた人形を思わせた。
数分後、女の子の周りに平和な公園とは場違いな不良たちがやってきた。リーダーと思われる男の服に生クリームが付着している。どうやら女の子の買ったクレープの一つが歩いているときに当たってしまったらしい。
「おじさんたちどうしたの?」
不良たちは自分たちをおじさん呼ばわりされて血管が浮きだっている。リーダーと思われる男が一気にまくしたてた。
「オイオイお嬢ちゃんよぉ、おじさんってのは無いんじゃねぇかぁ? 俺たちは未成年だぜ? そんなことよりも、弁償しろよ、服が汚れちまったじゃねえか。早くパパでもママでも呼んでこいよ」
「? おじさん、ごめんなさい」
女の子に話が通じていない。不良たちは憤り始めていた。
「謝って済むなら警察はいらねぇ! 泣かされてえのか、このガキ!」
不良の一人が女の子に掴みかかろうとした。対して女の子は――、いつものようにつぶやいた。
「おじさん達、私に触ると危ないよ?」
「ひなたーー?」
公園に一人の男性が女の子を呼んでいた。長身で痩せているように見えるが、武道を嗜んでいる人ならば気がつくだろう、歩いているその男の軸が全くぶれていないのを。
「あ、マスター!」
ひなたと呼ばれた女の子は何事もなかったようにベンチから降りて、マスターと呼んだ男性に駆け寄った。
「マスター! あそこに売っていたクレープとってもおいしかったですよ! マスターも食べてみるといいですよ!」
女の子はニコニコと嬉しそうに彼に話しかける。
「そうだな、後でもう一回買いに行こうな、ひなた」
「うん!」
そう言って二人は公園を去っていった。
――二人とも公園に倒れている不良たちの体の薄い切り傷を、気にしてすらいなかった――。
その男の名を立花 広、その女の子の名を木漏れ日日向という。
「俺達、なんでこう面倒事に巻き込まれるんだろう。なあ、ひなた?」
立花 広は嘆息した。
クレープを買ったことで少し資金の足りなくり、彼らは銀行に訪れたのだが。
「お前ら動くな!」
銃を持ちマスクをした三人の男が、銀行を占拠していた。典型的な銀行強盗だ。
「どうしますか? マスター」
広は少しの間腕を組んで考え込んだ後、ひなたの方を向いて答えた。
「いけるか? ひなた」
「うん! 大丈夫ですよ」
そう言ってひなたは文字通り堂々と銀行強盗の一人へと歩いて行く。
普通に歩いてきたひなたに対して、怯えた銀行強盗の一人が銃口を向けながら叫んだ。
「お前、動くなって言ってんだろ! 撃つぞ!!」
ひなたは相変わらずニコニコとしている。
「銀行強盗さん、私と一緒に遊びませんか?」
銀行員たちが『何考えているんだあの子は! 危ないだろやめろ!』と全員で思っている中でひなたはそう言った。
だが、銀行強盗は彼女を不気味に思ったらしい。銃口が震えている。
「く、来るな! う、ううう撃つぞ!!」
その瞬間、銀行強盗の銃が暴発した。その弾丸は偶然にも真っ直ぐひなたへと向かい――。
――当たらなかった。
ひなたは相変わらずニコニコしていた。
彼女が一歩ずつ銀行強盗に近づくたび、相手は後ずさりする。
そしてひなたは銀行強盗を壁まで追い詰めた。
「もう、終わりにしませんか? 銃をおろしてよ」
「なんだよ!? 何なんだよおまえ!?」
銀行強盗は銃をがむしゃらに撃ち始めた。それをひなたは、手を横に薙ぐだけで撃ち落とす。
「無駄だよ」
ひなたの声のトーンが低くなった。今までの明るい声色とは一線を画した、冷たい声だ。
「おじさんじゃ私を撃てないよ。だって、私は――懐刀だもん」
そのまま彼女は自然な動きで彼の後ろを取り後頭部を強打した。
「ひなた、刀背打ちができるようになったんだな」
「あ、マスター。終わったんですか?」
広の後ろでは、二人の男が気絶していた。腕は後ろで縛られていて、もし意識を取り戻しても動くことはできないだろう。
これだけのことをこの場にいる全員が――ひなたですら気づく前に銀行強盗を無力化したのだ。
「ひなた、警察の人たちが来る前に行こうか。これ以上ここにいるのはまずいだろう」
「はい、マスター。でも、その前に――」
「分かってるよ。ひなたはどんなクレープが好きか?」
「いちご!」
そう言って二人は何事もなかったように銀行を後にしたのだった。
感想、指摘などをお待ちしております。
また、『長編にしてほしい』と言う人が多いならばふらぐめんつシリーズは長編となってまた出しますので。長編にしてほしい方は一言欄に長編にしてほしいとお書きください。