第一天 四人の子供達
またまた書き換えちゃった…。テヘッ☆
『それでは、日本エクソシスト要請訓練所第七期生、権天使生、2組6番、天野アナの訓練所卒業実技試験を開始します。用意はできましたか?』
天野アナと呼ばれた少年は、こくりと頷いた。
年の頃は十代の半ば、男にしては少し長めの黒髪に、空のように清んだ蒼い瞳を持ち、精悍な顔つきの美少年だった。
左胸に大きな十字架の装飾の施された、黒のロングコートを羽織っており、同じく黒のズボン、ブーツを身に着けている。
一見、普通の少年のようにも見えるが、腰のベルトに掛けられた2本の刀が、アナが普通の少年ではないことを物語っていた。
アナがいるのは、白いコンクリートのような物でできた広々とした正方形の部屋で、天井にはスピーカーと監視カメラがあり、アナの目の前の壁には大きなシャッターが設置されていた。
アナは誰もいない室内で、深く深呼吸した。
突然、ががががっ、とけたたましい音を響かせながら、シャッターが開いていった。アナは腰の刀に手をあて、いつでも闘えるように身構えた。
シャッターが完全に開いた。
そこにあったのは、アナのいる部屋の四分の一程度の広さの小さな部屋で、その中には《悪魔》が十数体、中に入っていた。
《悪魔》は人のような体をしており、紫色の皮膚にコウモリの翼、尖った角と細い尻尾を持ち、鈎爪と牙は長く鋭かった。大きさはどれも2m近くあり、真っ白な眼でアナを見下ろしていた。
『今回の実技試験は、E級悪魔、デーモンの討伐です。試験終了後、先程あなたが使ったドアのロックを解除します。
先程の説明どうり、万一の事がない限り室内にエクソシストは入れません。試験をリタイアしたい場合は、白旗を監視カメラにむかって振って下さい。エクソシストを中にいれます』
アナは部屋に入る前にもらった白旗を、コートの内ポケットから取り出した。小さな棒に白い布を結んだだけの、とても安上がりな手のひらサイズの旗だった。
アナはそれを右手で握り潰し、床に捨てた。
『本気にいいんですか?』アナウンスの問い掛けに、
「はい、僕には不要な物です。」と、礼儀正しく答えた。
デーモンがうるさく喚き立てた。
『……それでは、試験を開始します』
アナウンスが終了した刹那、デーモンが部屋に飛び入ってきた。アナは一瞬にして優しかった表情をかき消し、凄まじい殺気を放ちながら駆け出した。
アナは先頭のデーモンとの間合いを詰めながら、腰の2本の刀を抜いた。先頭のデーモンが、アナの身体を引き裂こうと右手を伸ばした。アナは体を左にずらし、それをかわしたあと、デーモンの首に左手の刀、左胸に右手の刀を、それぞれ突き刺した。
アナは乱暴に刀を横に振り、刺したデーモンを床に叩きつけた。
デーモンは一瞬体を痙攣させた後、灰になって消えた。
2体目のデーモンが、何かを喚き散らしながらアナに突進した。アナ右に避け、右足を前にだした。デーモンはアナの足に引っ掛かり、前に転んだ。アナは高速で右の刀を縦に振り、転んでいる途中のデーモンの首を跳ね飛ばした。
デーモンは即死し、苦悶の表情を浮かべた首が、空中で灰になった。
アナは次のデーモンに向かって駆け出した。狙われたデーモンが、アナにむかって手を突き出した。それを見たアナは、床に刀を突き立て、棒高跳びの要領で空中に跳び上がった。その直後、デーモンの手先から紫色の光線が放たれ、先程までアナが立っていた場所を焼き払った。光線を外したデーモンは、また光線を打ち出そうとアナに手を伸ばそうとしたが、すでにアナはデーモンの背後に着地、デーモンを真っ二つにした。返り血と灰がアナの服を汚した。
一瞬にして3体のデーモンを倒したアナを見て、デーモン達は慄き、後ずさった。
それを見て、アナは不気味に微笑んだ。
┼┼┼
数日後…
暖かな太陽の光に見守られ、桜の花びらが風に誘われ、鳥のさえずりに合わせて踊っている、気持ちのいい春の平和な一時。
そんな幸福な季節のなか、天野アナは不幸のどん底に叩き落とされていた。
なぜなら…
「名前が…、ない…」
アナは愕然とし、地に手を付いた。
ここは日本関東区エクソシスト要請訓練所。そこは文字どうりエクソシストになるための学校だ。東京郊外に設立された巨大な大聖堂のような建物で、エクソシストになりたい関東区中の少年少女が集まり、3年もの間研修生として厳しい授業を受けている。
アナもここで厳しくも楽しい青春を謳歌し、仲間とともにエクソシストを目指した。今日は最終試験、つまり、訓練所の最上級生である権天使から、正式にエクソシストとして働く事の出来る階級、力天使に昇格するための試験の結果発表の日だ。しかし、張り出された表の中に、アナの名前がなかった。
座学は余裕だった。戦闘試験の内容はデーモンの討伐。1分で済ました。結構手応えあった。試験の時のアナウンスの人も、「いいエクソシストになれますよ」って言ってくれた。なのに…、
「なんでですかぁぁああ!!」アナはまた叫んだ。
そんなとき、
「おーい!アナー!」
アナのところに、一人の少年が駆けてきた。
「あれっ、レンさん?」
レンと呼ばれた少年は、アナに駆け寄ってきた。
彼はボサボサの髪の毛に、アナと同じく、この訓練所の訓練生服を着ていた。身長はアナより上だが、精神年齢はアナより下だ。この訓練所で、苦楽をともにした仲間の一人であり、訓練所一の暴れん坊でもあった。
「アナ、お前やっぱスゲーな!あんなとこに名前のるなんて!」
レンはアナの肩を掴み、ブンブン振り回しながらそういった。
「えっ!僕の名前あったんですか!?」
地獄の底まで堕ちていた僕のテンションが一気に跳ね上がった。
「ああ、あったあったあった!こっちだ!」
そう言って、拘束していたアナの肩を放して、凄まじい勢いで駆け出したレンを、アナは必死に追い掛けた。
「ほら、こっちこっち!」
そういって指を指された所を見てみると、
あった、天野アナ、つまり僕の名前が…。しかも、
「スッゲー!!首席合格かよっ!!」
レンはその場でぴょんぴょん跳ね出した。はしゃいでいるレンの隣でアナは、「嘘、冗談でしょ…」と呟いていた。
訓練所には年間数百人もの人々が入学してくる。しかも卒業試験は難しいことで有名で、百番以内に入れば奇跡と褒め称える程だ。そんな卒業試験を、アナは主席で合格してしまった。
アナは数秒硬直。そして……、
「レンさーーんっ!!」
「うわーーっ!!抱き着くんじゃねーー!!気持ちわりーーわ!!」
レンに思いっきりハグした。
「よかったよー!名前なかったから、不合格だったんじゃないかって本気でビビッたよーー!」
そう言ってレンの胸で号泣。服を盛大に濡らした。
「分かったから離れ――」
「ズビーーー!」
「うわーーっ!鼻噛むな俺の服に!!」
そう言って、アナにゲンコツ一丁。
「イテッ!!」
アナ悶絶。
唸りながら辺りを転げ回った。すると、後ろから、
「おーい、レーン!なにはしゃいでんのー!」
レンを呼ぶ声。レンは声の主を見つけ、その人に向かって叫んだ。
「二人ともさっさと来い!アナが首席とった!」
「えっ!マジでっ!」
どたどたと激しい足音とともに、少女が二人近づいてきた。
詳しく言うと、一人が一人を乱暴に引っ張って全速力で走ってきた。
引っ張られてるほうは目を回している。しかも服の襟を掴まれているため、とても苦しそうだ。
「どれどれ~、あっ!あったー!アナすごーい!」
そう言いながら僕の背中を何度も叩く。とても痛い。とても褒められている感じがしない。
「ちょっ、痛いから、叩かないで下さい!ミクさん!」
アナは背中へのビンタを避けながら少女に抗議した。
「あっ、ゴメンね~、アナ~」
ミクと呼ばれた少女はおどけたように笑った。
長い髪をお団子にしてまとめてており、学生服のスカートを思いっきり曲げてミニスカートにして、黒のハイソックスをはいていた。スタイルは抜群で、顔も綺麗だ。
「あれっ?どうしたの?チヒロ、そんなに咳き込んで。風邪?」ミクは自分が先程首を掴んで連れて来た少女に声をかけた。
苦しそうに咳き込みながら座り込んでる。
「うっ、ううん。違うよ。大丈夫、ありがとう」
チヒロと呼ばれた少女は、ミクが差し出した手を借り立ち上がった。
髪を肩まで伸ばし、青いカチューシャをつけていた。スカートは曲げておらず、ミクと同じ、黒のハイソックスをはいていた。
自分がこんなに苦しませたくせに、全く罪の意識のない誰かさんに、一応アナは聞いてみた。
「いやいやミクさん、誰のせいだと思っているんですか?」
案の定、犯人はこう答えた。「?、誰のせい?」
「お前だよミクッ!」レンが吠えた。
「えっ!マジっ!ゴメ~ン、チヒロ~」ミクは悪びれもせず、チヒロに抱き着いた。
チヒロは頭を撫でながら、大丈夫大丈夫、と言った。顔がまだ大丈夫じゃないが。
「それより、天野君、」
「?、なんですか?」
急にチヒロがモジモシしだした。青白かった顔が急に赤くなった。
「…その、…首席合格、おめでとう、…ございます」
チヒロは消え入りそうな声でそう言った。
「はい、ありがとうございます!」
アナは笑顔でそう言った。急にチヒロが顔を赤くして下を向いた。
風邪気味なんだろうか?アナがそんな見当違いな事を思っている間にチヒロは、
「い…、言えたよ…、ミクちゃん…」
と、ミクに耳打ちした。ミクは笑いながらチヒロを肘で小突いた。
そんなようすをレンは、なにやってんだこいつら?と言いたげな顔で見守っていた。
「それより皆さん、合格出来ましたか?」
アナの問い掛けに、レン達が不満げに答えた。
「お前失礼だなー、出来たに決まってんじやねーか!」
チヒロも、
「うん、…出来たよ」
と小さく答えた。
ミクは、
「愚問ね、この私が出来ないとでも思っていたの?」
と、逆に聞き返した。
「おめでとうございます!これでみんなエクソシストになれましたね!」
「ああっ、そうだな!」
アナの声にレンが元気に答えた。
チヒロとミクも頷く。すると、チヒロがあっ、と声をあげた。
「そういえば、私達、配属どこになるんだろう…」その問い掛けに、
「どこでもいいんじゃねーの?」と、レンが答えた。
「そだね~、別にどこでも…、じゃないわよ!?」
ミクはいきなりレンに吠えた。そのノリツッコミにアナが続く。
「なに言ってんですか!レンさんそんな事言って、ヤバイ地区に配属されたらどーするんですか!?」
チヒロも弱々しくだが、レンに「そ、そうだよ…!」といった。
アナの言った「ヤバイ地区」とは、日本各地にある、文字どうりヤバイ伝説や伝承が受け継がれてる地区にある配属先の事で、悪魔がとても多く、エクソシストの死亡率も高い。中には変人しかいないという別の意味でヤバイ地区もあるのだが。
「別にいいぜ~、俺は、」
そう言った途端、レンはアナ達の肩を強引に組み、自分の近くに顔を寄せた。
「お前らと一緒ならなっ!!」
レンは、そう強く言い切った。
「…レンさん」
アナが呟いた。
その瞬間、笑顔を浮かべていたレンの顔に、ミクの肘がめり込んだ。
「なに抱き着いてんだコラァァァアアッッ!!」
メリッ、と嫌な音をたて、レンは後ろに吹っ飛んだ。顔から蒸気らしいものが立ち上り、大きな血溜まりができてた。
「えっ、レンさん!?大丈夫ですかっ!!」
「はっ、しまった!!ついうっかり」
「うっかりじゃないよミクちゃん!!」
三人は大慌てでレンの元に駆け寄り、アナがレンの肩を抱き上げた。
「レンさんっ、しっかりして下さい!!」
「ア…アナ…」
必死にレンの名前を叫ぶアナに、レンは掠れた声で呟く。
「アナ…、俺は最後にミクの胸を揉めた。…もう、悔いは…、ない…」
どうやら抱きついた時にやらかしたらしい。それを聞いた瞬間、アナはレンの身体を地面に叩きつけるかのように落とした。
「ひでぶっ」
レンは衝撃でまた血反吐を吐いた。
「全くなにクズみたいな事やってんですかあんたは」
「私の胸を揉んだ罰よ、このままここで野たれ死になさい」
「ヒドいっ!」
二人に同時に浴びせ掛けられた辛辣な言葉に、レンは瞬殺ノックアウト。
「こんな奴ほっといて、三人で何か食べに行きましょう」
「そうね、行きましょう行きましょう!」
アナとミクはレンをあっさりと捨て、そのまま立ち上がり、街の繁華街に向かって歩き出した。ただ一人、チヒロだけがレンの横でしゃがみ込んでいた。
「チヒロぉ~、俺に優しいのはお前だけだ、お願いだから助けて…」
レンは男のプライドなんてものを捨て、チヒロに命乞いをし、手を伸ばした。
チヒロはまるで聖母のような笑みを浮かべながら、静かにその手を、
…はたき落とした。
「…ゑっ?」
「ごめんなさいレン君」
そう言ってチヒロは立ち上がり、
「なにやってんのー、速く行くわよー」
「あ、ちょっと待ってー」
と言いながらアナ達の元に駆け出した。
「ちょっ、ヒドすぎ、…ガクッ」
レンはショックのあまり泡を食って気絶してしまった。
┼┼┼
その日の夜、
訓練所では…
誰もいない学校内を、警備員が巡回していた。
「ふぅ、異常なしっと。次は教室」
警備員は教室を一つづつ見回る。
そして、3階に上がる階段を上っていた時、
カチャン
「っ!」
何かが落ちる音がした。警備員は階段の上に懐中電灯を向けた。
「権天使の教室か…。誰かいるのか?」
警備員は銃を抜いた。足音をたてずに階段を上がり、教室に近づく。
そして、ドアを思いっきり開けた。
「誰かいるの――」
ドアを開けた刹那、教室の中から巨大な黒い手が警備員をわしづかみにし、警備員を教室の中に引っ張りこんだ。
「うわあああああああ!!!」
警備員の悲鳴が廊下に響きわたり、しばらくして止んだ。
主を亡くした懐中電灯が、一人寂しく廊下を転がっていった。
やっと出せました、一話。ここまでながかったな~(笑)。
多分これからも私の都合で亀さん更新かと思いますが、どうかよろしくお願いします。
あと、今後の参考にしたいので、感想をお待ちしています。ビシバシ送ってください!




