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プロローグ

『人生は、リセットできないんだよ』。

人生は一度きりであり、ゲ-ムのように何度もやり直すことはできないという至極当たり前なこと。

誰が言ったのを覚えたのかは、もう定かではない……。

ただ……これだけは言える。

この言葉は、正解でも間違いでもなく、ましてや善でも悪でもなく、ただ真実を告げているということ。


そう。この世界の真実を告げているのだ。

 

 

 ◆

 

満月が煌々と照らす徐々に灯が消えていく夜の街を少年は歩いていた。

彼の名は不知火 信司。

この春、高校へと進学し、学生生活をおくってまだ一カ月もたっていない新入生だ。

高校生活という素晴らしき青春の日々の1ペ-ジ。

それをようやく開き始めたという期待と不安が入り混じった楽しい時期にいるはずの新入生の足取りは、重い。

とはいえ、別段落ち込んでいる様子は見られず、顔は真剣な表情そのものであり目線はまっすぐに前だけを見つめている。

それなのに、だというのに、その足取りは、重い。

まるで、恐怖で動けない足を無理やり引きずって歩いているような、そんな錯覚を覚えるほどに。

それでも。

ゆっくり、ゆっくりと、確実に、歩みは彼を目的地へと運んで行く。

 

たっぷりと三十分をかけ、信司は目的地である教会に到着した。

その教会は、街の外れにひっそりと建っており、まるで人の気配を感じさせない。

そんな教会の扉を信司は両手で押し広げて開き、中へと入る。

教会の中に置物や家具、そして偶像や椅子の類は全くといって存在していない。

彼の待合人である少女は、そのためなのか座りもせずに立っていた。

銀の長髪を揺らめかし、美しい碧の双眸は、すぐに入ってきた信司を見据えた。

双方の視線が合うと同時に、門が閉まる。

 

 「覚悟は……出来たのね?」

 「……ああ」

 

少女の言葉に迷いなく、信司が応じる。

少女は頷き、ハンドバックの中に手をいれ……取り出す。 

鈍い、銀色をした重厚なそれは……紛れもなく拳銃(・・)だった。

六発の銃弾が入るリボルバ-式の拳銃。おもちゃなどではなく、ずっしりとした重みがある実銃であった。

少女は信司へと歩み寄り、その銃を手渡す。

 

 「……っ」

 

渡された瞬間、信司の手のひらにじわりと汗がにじんだ。覚悟はしてきたつもりだったのだが、こうして、いざ握ってみるとそれが本物であることが素人である彼にも容易にわかり、恐怖が、生まれてしまう。

怖い。逃げ出したい。今なら引き返せる。そんな考えが次々と現れて、拳銃を握ることを脳が拒否しようとする。

当然だ。人間が凶器におびえるのは至極当然のことであり、ここで逃げ出しても彼には何ら責められる謂れはない。

 

「だけど、やらなくちゃいけないんだ」

 

決心を鈍らせないよう、力を込めて決意を表明する。

誰のためでもない。自分自身のために、これをやらなくてはならないのだから。

震える手を必死に動かし銃口を自らのこめかみに突きつける。

既に弾は装填されている。檄鉄を下ろす。引き金に手をかける。

 

「不知火くん」

 

少女が、信司を呼ぶが、彼の耳にはもはや届いてない。

極限の緊張状態が、彼から周囲の音を奪い去っていた。

それすらも、少女は承知の上だったのだろう。反応がないことを気にもせずに続ける。

 

「これから、貴方は普通ではありえないことを経験する。そのことで、辛い思いをすることもたくさんあるかもしれない。周囲と自分の認識の違いに悩み、苦しむこともあるかもしれない」

 

でも、忘れないで。


「それでも、私だけは貴方を理解してあげられる」

 

それだけは、決して忘れずに。

 

その言葉が、信司に届いたのかどうかは分からない。

だが、指が引き金を引く一瞬前、信司の口端がつりあがり、そして。

 

「またな」

 

言い残した後、教会に銃声が響き渡った……。

 

 

 

まずは、御閲覧いただき誠にありがとうございます。

 

さて、早速で恐縮なのですが、読者諸兄の皆々様方は、人生をやり直したい、って思ったことは御座いませんか?

一度くらいはあるでしょうか? それとも全くないでしょうか?

私は何度も思ったことがあります。あの時、こうしていれば違う結末になったのではないかと思うことが何度もあります。夢にまで見るのだから相当重症な気がします。

その妄想といいますか、もし実際に人生をやり直す……リベンジが出来たらどうなるのかな、と思って書いたのがこの作品です。

稚拙な文章なのは承知の上で、全力投球していきますので皆様方、どうか生温かい目で見てやっていただければ幸いでございます。

 

次章予告。

一章『希望少年と残酷魔女』

 


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