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1話 プロローグ

「おはようございます」


目を開けると、知らない男が俺を見下ろしていた。

それも、やけに嬉しそうに。

俺より年上な…銀髪で妙に顔の整った男だ。


……誰だ、こいつ?





***





「…ただいま」

人里離れた森の中の家に入ると、元気な声とともに小さな影が駆け寄ってきた。

「ヨル師匠、おかえりなさい! 魚釣ってきてくれたんですね、ありがとうございます。すぐ料理しますね!」


この子はオルフェ。

明るい茶色の髪に青い目の12歳の、しっかりしすぎている子供だ。


森の中で倒れていたのを見つけたときはどうなるかと思ったけどーー

今はすっかり元気になっている。

そして、なぜかそのまま俺の家に住みついて、もう10日も経つ。


「あのさ…オルフェは、街に行かないのか?俺といて嫌じゃない?」


オルフェが森の中でコソコソ住んでる俺のところに留まる理由がわからない。


だって俺は、この世界に現れた不吉の象徴らしいから…



俺は、呉島 夜一 22歳。

大学の資料室でぼんやりと光る本を見つけて、それを開いたら??…気づいたときには、この世界にいた。

そして、黒髪黒目は不吉の象徴だと追われ、捕まり、投獄され…


……こんなの、やってられるか!

「こんな時、魔法が使えたらいいのに」

そう思った瞬間、爆発が起きて、気づけばこの森にいた。

どうやら俺は、この世界では魔法が使えるらしい。



「なんでそんなこと言うんですか?ヨル師匠が濡羽の魔術師だからですか?」


その言葉に俺は苦笑いするしかない。

この世界に来て、元の世界に戻る方法もわからないまま、3ヶ月。

俺はいつの間にか街で『濡羽の魔術師』なんて呼ばれているらしい。


そんな、大層な名前をつけられるようなことした覚えもないのに…



戸惑う俺にあたたかい笑みでオルフェは言う

「ヨル師匠は、ぼくの村を救ってくれたじゃないですか!そんな人が不吉なんて絶対ありません」

きっぱりと言って、料理が苦手な俺の代わりに、オルフェは手際よく料理をはじめた。



オルフェは俺が村を救ったなんて言うけれど、そんなことは出来なかったのに…



オルフェは村が魔物に襲われ、助けを求めに出たらしいけど、途中で魔物に襲われ力尽きていた。

そのまま放置なんてできないし、家に連れ帰って、某ゲームの回復魔法が俺も使えたら!と願ったら回復魔法が使えたんだ。


その後、回復したオルフェから村の事情を聞き、村が気になるから戻るというので、俺も着いて行ったら……

そこはもう、生きているものは誰もいない凄惨な光景が広がっていた—…


この状態を、子供のオルフェにこれ以上見せたくなくて、俺は以前読んだ作品に出てきた魔法を願った。

今すぐここを花畑にして!と…


すると、村のあちこちから壊れた家屋からも無数の花が咲き乱れ、死体も全て覆い隠していった。


俺は、そんなことしか出来なかったのに——



「…そっか、オルフェがいいなら、ここにいていいよ。

でも、俺は師匠にはなれないからな」


俺の魔法は、今まで見たゲームや漫画に出てきた魔法を強くイメージすると実現する、かなりイレギュラーなものだからだ。

オルフェから聞いた話によると、この世界で魔法は誰でも使える訳ではなく、素質のある者だけが教本で学ぶらしい。


「どうしてですか!ぼくもヨル師匠みたいになりたいのに…」

「うーん…じゃあ、魔術練習する時、少し見てあげるよ」

「本当ですか?!ぜったいですよ!」


そんな真っ直ぐな目で見られたら、答えてあげたくなるよな。

アドバイスくらいなら、できるだろうし。




この時はまだ、このあたたかい日々が続いていくと思っていた――…


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