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俺だけが持つ、世界最強の宝

この世界には、「嘘」というものが存在しない。

誰も疑わない。誰も裏切らない。誰も言葉を曲げることをしない。


だから、言葉は神聖だった。

だから、言葉は力だった。


――そして俺だけが、その言葉の意味をねじ曲げることができた。



10歳の俺は、村の広場でパンを盗んだ。

腹が減って、どうしようもなかった。ただそれだけだった。


「おい、リアム。パンを盗ったのか?」


村の男が俺の前に立ちはだかる。

その声は優しいが、もし盗みを認めたなら、罰は免れない。


心臓がドクドクと音を立てる。汗が背を伝う。

(終わった……俺は終わった……)


けれど、その瞬間。

俺の口は、勝手に動いた。


「……盗ってない。」


小さな声だった。震えていた。それでも――


「そうか。なら、いいんだ。」


男は微笑み、俺の頭を撫でて去っていった。


(……え?)


俺はその場に立ち尽くした。

俺の言葉は、真実として受け止められたのだ。



それから何度も試した。

「俺は宿題をやった」

「先生に許可をもらった」

「怪我をしていて走れない」


すべて信じられた。

誰も疑わなかった。


そして、俺は気づく。

(俺だけが持っている……世界最強の力。それが、この“嘘”だ。)


この世界で、誰も持たない力。

言葉をねじ曲げ、真実を創り出す力。


そのとき、俺の中に炎が灯った。

(この力で……俺は、世界を手に入れる。)



俺は知らなかった。

その「嘘」という力が、世界を変え、やがて俺自身をも飲み込んでいくことを――。

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