第242話 最強の援軍
「う、う〜ん……」
ユークが目を覚ましたとき、景色はすっかり変わっていた。
「っ! 魔獣は!? それに――足が……治ってる!?」
確かに折れたはずの足に痛みがない。思わず立ち上がるユークの前に、泣きそうな顔のセリスが飛び込んできた。
「ユーク! 起きたんだね!」
「え、ちょっ……セリス、痛っ……いや、痛くない……?」
抱きしめられて身構えるも、体の激痛はもうどこにもなかった。
『マスター! お目覚めになられて良かったです! 傷はテルルさんが治してくれました!』
嬉しそうなアンの声が、腕輪から響く。
「テルルが? どうして……?」
だがユークは眉をひそめた。彼女に治療のイメージが無かったからだ。
仲間の答えを待つよりも早く、ユークは今戦っている相手の事を思い出した。
「あっそうだ!……魔獣はどうなったんだ!?」
慌てて周囲を見回す。
そこで見たのは、六本の触手を振り回し、咆哮を上げる魔獣。
そして、その攻撃を受け止め、ユークたちを守るように立ちはだかる一人の男――ジオードの背中だった。
「ジオードさん!? どうしてここに!?」
驚きの声を上げるユーク。
「気がついたか、ユーク。もう大丈夫だ。あとはこの俺に任せておけ!」
振り返ったジオードは、穏やかな笑みを浮かべていた。
「えっ……アイツはどうなったんですか……?」
ユークの脳裏に、“無限に再生する”と言っていた最強のモンスターに変身した男の姿がよぎる。
「倒した。安心しろ」
ジオードは振り返らずにそう告げた。だが、その声色には不思議な優しさがあった。
「倒したって……どうやって……? それに、その鎧……?」
ようやくユークは、ジオードが見慣れぬ黄金の鎧をまとっていることに気づき、眉をひそめる。
「あれはジオード殿下のEXスキルらしいわ」
アウリンが横から答えた。
「アウリン! 無事でよかった! 一体何がどうなってるんだ?」
ユークは彼女の無事を確認し、胸をなでおろす。
状況がつかめず、思わず疑問を口にするユーク。
「ごめん。私もさっき目が覚めたばかりで、よくわからないの」
アウリンは困ったように肩をすくめた。
「……っ! そうだ、強化魔法!」
意識を失っていたことで、強化魔法が切れていることに気づいたユークは、急いで詠唱を始める。
「《ブーストアップ》!」
赤い魔法陣が足元から広がり、仲間たちの身体に力が満ちていく。
「ほう……これがユークの強化魔法か。なかなかいいじゃないか!」
魔獣の触手を剣で弾きながら、ジオードが短く笑った。
「ええ、確かに。そう言えば、この街に来てから強化魔法を受けるのは初めてでしたな」
ジルバが穏やかに言う。その言葉にアウリンが首を傾げた。
「え、強化なしで? じゃあどうやってここまで登ってきたんですか? この《賢者の塔》のモンスターは物理攻撃なんてほとんど効かないのに」
「武器に魔力をまとわせてたんだと思う。二人ともそんな感じだった」
セリスが答える。
「お見事。まさにその通りです、セリス殿」
ジルバが剣を抜き、刃に淡い魔力の光をまとわせて見せた。
「すごい……こんなのもう、EXスキルそのものじゃない!」
アウリンが感嘆の声をあげる。
「私のスキルの師匠だから当然でしょ?」
セリスが少し誇らしげに笑った。
「爺! いつまで遊んでいる! 働け!」
ジオードが振り向きざまに怒鳴る。
「おっと、失礼しました。殿下」
ジルバが苦笑しながら駆け寄っていく。
「体力は戻ったか?」
ジオードが気遣うように目線を送った。
「ええ、十分に」
その言葉に微笑みながら頷くジルバ。
「なら良い。本気を出せ、今ここでやつを倒すぞ!」
ジオードは魔獣を睨みつけながら言った。
「承知しました。――EXスキル、《鬼神モード》」
ジルバの身体を包む魔力が増大し、全身の筋肉が活性化する。
「このスキルを使うのも久しいですな……!」
穏やかな目が鋭く開き、戦鬼のような気配を放つ。
「行くぞ!」
「はっ!」
二人は一瞬で魔獣へ突撃した。
「ジオードさんって……あんなにすごかったのか」
レベルが上がっている魔獣相手に、押している様子の二人を見て、ユークはただ感嘆の声をあげる。
「当然でしょ。殿下はゴルド王国の切り札なんだから」
アウリンが短く答える。
「このままなら、いけそうじゃないかしら」
ヴィヴィアンが希望を込めて言った、そのとき。
「皆、聞いてくれ」
テルルがゆっくりと声を上げた。
「え? どうしたの、おじいちゃん」
ヴィヴィアンが不思議そうにテルルを見つめる。
「え? テルル……?」
大人の姿となった彼女を見て、ユークは戸惑う。
「ごめん。後で説明するから、今は黙っててくれる?」
アウリンが小声で言い、ユークは黙ってうなずいた。
「気になることがある。殿下たちが勝てればそれでよいが……もしもの場合、頼れるのはお前のEXスキルだけじゃ、アウリン」
神妙な表情でアウリンを見るテルル。
「……でも『イグニス・レギス・ソリス』は今は使えないのよ?」
沈んだ表情で答えるアウリン。
「使用不能のEXスキルを再使用可能にする方法がある。――無論、リスクはあるがな」
テルルが静かに言った。
「え!?」
「そんなことが出来るの!?」
ユークとアウリンは、驚き。息をのんでその続きを待つのだった。
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ユーク(LV.50)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫
EXスキル2:≪思考分割≫
備考:意識を失う直前と状況が変わりすぎてあまりついていけていない。
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セリス(LV.50)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪タクティカルサイト≫
EXスキル2:≪ブーステッドギア≫
EXスキル3:≪スキル・ラーニング≫
備考:ジオードのディバインアーマーはまったく分からなかったが、ジルバのEXスキルは真似できそうだった。
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アウリン(LV.50)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫
EXスキル2:≪コンセントレイション≫
備考:強化前の魔獣にもイグニス・レギス・ソリスはギリギリで届かなかった以上、使うとすればさらに威力をあげなければならないだろう。
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ヴィヴィアン(LV.50)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫
EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫
備考:ジオードたちで魔獣に勝てそうなのに、なんでそんなことを言いだすのか分からない。
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テルル(LV.44)(+20)
性別:男(女)
ジョブ:氷術士
スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)
EXスキル:大鎌の才(大鎌の基本技術を習得する)
EXスキル2:≪ソウルイーター≫
備考:スキル再使用の方法を思いつき、まず自分の体で試した。
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アン(LV.2)
性別:女(精霊)
ジョブ:霊樹の管理精霊(若芽の腕輪に宿る)
スキル:霊樹の加護(ユークの全能力をわずかに向上させる)
備考:ジオードと魔獣の戦を解析している。
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ジオード(LV.??)
性別:男
ジョブ:剣聖
スキル:剣術の真髄(すべての剣の基本技術を習得し、剣技の威力を大きく向上させる)
EXスキル:≪オーラブレイド≫
EXスキル2:≪ディバインアーマー≫
備考:ディバインアーマーは自身の身体能力を強化する鎧を召喚するEXスキルだ。反動も少なく、強化の率も高いが、使える人間は少ない。
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ジルバ(LV.??)
性別:男
ジョブ:剣士
スキル:剣の才(剣の基本技術を習得し、剣の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪|ディメンション・スラッシュ《次元斬》≫
EXスキル2:≪鬼神モード≫
備考:鬼神モードは自らの肉体を活性化させることにより、肉体を強化するEXスキルだ。老いた肉体が若返る副次効果もあり非常に強力だが、効果終了後の反動も強烈で、疲労した状態で使うのは危険なのだ。
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ルベライト(LV.80)
性別:女
種族:魔獣
備考:英雄二人に押されている。いくら彼女でもジオードとジルバを相手にするのは難しかったのだろう。
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