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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第236話 怒りの一撃


「ルベライト……?」

 ユークがその名を口にした。


「……ユーク、あの女。ヘリオ博士のところで見たわ」

 アウリンが小声で報告する。


「そっか……あの時の……!」

 ユークも彼女のことを思い出した。


「よくもまあ、さんざん邪魔をしてくれたものね……」

 ルベライトがゆっくりと笑う。


 その声は穏やかだが、どこか人を拒むような冷たい威圧を含んでいた。


「っ!」

 ユークたちは何かを感じ取り、咄嗟に身構える。


「ひれ伏しなさい!」


「ぐっ!」

「ううっ!」

 だが、ルベライトの一言とともに、ユークたちの身体が突然動かなくなる。


 まるで見えない何かに全身を押さえつけられているようだった。


「な、なんだ……これ……!」

 ユークが苦しげに声を上げる。


「動けないわ……」

 ヴィヴィアンが鎧を軋ませながら、膝をついて床に伏せた。


「ふふふ……いま首を跳ねてあげるわ……」

 ルベライトが腰の細剣を抜く。


 その刃が冷たい光を放ちながら、動けないユークたちへ一歩一歩近づいていく。


「誰か!? 動けないの!」

 アウリンが叫ぶ。


「私も動けない! ごめん!」

 セリスが必死に答える。


 もう、ルベライトは目の前にまで迫っていた。


(くそっ……! 無詠唱魔法が使えれば……!)

 ユークが唇を噛む。


 今のユークには《思考分割》が使えない。


 そのため、無詠唱魔法を発動するには時間がかかってしまう。


 詠唱魔法も、この重圧の中では正確な言葉を発することすら難しい。


 今のユークたちに、ルベライトへ立ち向かう手立てはなかった。


「さあ、まず一人……!」

 ルベライトが剣を振り上げる。


「さ、させぬわぁぁぁぁぁ!!!」

 その瞬間、テルルが立ち上がり、叫びとともにルベライトへ斬りかかった。


「あら? ……ああ、お前は魔族だったか」

 ルベライトは軽やかに身をひねって避けると、後方へ跳びながらテルルを見つめた。


「師匠! 動けるの!?」

 アウリンが驚く。


「動ける……が、戦えるかと言われると、ちと難しいな……」

 テルルの声が震えていた。


「どういうこと……?」

 ユークが問いかける。


「体が動かんのじゃ! あの女に武器を向けると、体が勝手に震えて動かせん!」

 テルルの手にある大鎌がびくびくと震えていた。


「ふふ、それは当然でしょう。魔族は妾の眷属。つまり母と子のような関係。子が母に逆らえるはずがないわ」

 ルベライトが冷たく笑う。


 そう言って、動けないテルルの横を悠々と通り過ぎた。


(待って……じゃあ、どうして師匠はあの女に斬りかかれたの?)

 アウリンが心の中で疑問を浮かべる。


(ぐっ……どうして、動けないの……!)


 ヴィヴィアンは、地面に伏せたまま震える両腕に全力で力を込める。


 だがどんなに力を入れようとも体は一向に動いてくれない。


 盾は伏せた時に落としてしまい、『インヴィンシブルシールド』を使用することも出来なくなっていた。


(お願い……っ! 動いて、私の体! いまここで動かなくてどうするの!?)

 ヴィヴィアンは鎧の中で涙を浮かべるが、彼女の身体はまったくいう事を聞いてくれなかった。


 彼女の涙が一滴こぼれ、鎧に垂れる。


 彼女のEXスキル『ドミネイトアーマー』自身の鎧に魔力を込めて強化し、防御力と耐久性を飛躍的に上げるスキルだ。


 だが『ドミネイトアーマー』にはもう一つの効果があった。


 ルベライトはユークたちの方へ向き直り、細剣を構える。


「さあ、まずは……」


「あああああああああ!!!!」

 その一瞬で、ヴィヴィアンは立ち上がり、渾身の力を込めた拳をルベライトに叩き込んだ。


『ドミネイトアーマー』によって鎧自体を操り、無理やり体を動かしたのだ。


「がぁっ!」

 予期せぬ攻撃に、ルベライトはわずかに体勢を崩す。


 しかし。


「……そんな」

 ヴィヴィアンが絶望の声をあげる。


「痛いわね……」

 ルベライトには、ほとんどダメージなど無かったのだ。


「お返しよ」

 ルベライトはすぐに体勢を戻し。


 ヴィヴィアンの腹部を剣を持っていない方の手で、殴って吹き飛ばした。


「きゃあああっ!!!!」

 ヴィヴィアンは鈍い音を立てて壁に激突し、動かなくなる。


「よくも……よくもワシの(ヴィヴィアン)をぉぉぉぉぉ!!!」

 その光景を見た瞬間、テルルの理性は完全に吹き飛んだ。


 テルルは、魔族としての血の支配、そしてルベライトが放つ重圧の全てを、孫を傷つけられたという純粋な怒りでねじ伏せたのだ。


「う、うおおおおおりゃあああああ!!!」

 テルルが絶叫とともに大鎌を振り上げた。


「くらえっ! 《ソウルイーター》!」

 大鎌が閃き、ルベライトの身体を貫いた。


「なっ!? このっ!」

 ルベライトが反射的に蹴りを放ち、テルルを吹き飛ばす。


 地面を転がりながら吹き飛ばされ、それでも必死に立ち上がる。


「ぐっ……な、なぜ妾に攻撃できるの!? どうして!」

 ルベライトが叫んだ。


「く、くくく……ワシは純粋な魔族ではない! 魂は人間のものじゃ! だから多少は抵抗できるのじゃろう!」

 テルルが笑いながら答える。


「面白いわね。じゃあ、まずお前から消してあげる」

 ルベライトが笑みを深め、一歩を踏み出す。


「ふんっ、ワシを甘く見るでない! ワシは『ソウルイーター』で奪った魂で、モンスターを生み出せるんじゃ!」

 テルルが叫ぶ。


「はぁ……だから何? そんなものが妾に通じるとでも?」

 ルベライトがつまらなそうにため息をつく。


「くくっ、どうじゃろうな! 《モンスター生成》!」

 テルルの前に魔法陣が出現し、銀色の虫型モンスターが四体現れた。


「いけっ! わしの虫たちよ!」

 テルルの号令と同時に、虫たちがルベライトへと飛びかかる。


 ルベライトは余裕の笑みを浮かべ、その動きを見つめた。

 そんなもの自分には通用しない――そう確信している表情だった。


「なっ!?」

 しかし、その笑みは一瞬で驚愕へと変わる。


 虫たちはルベライトを避け、ユークたちの方へ飛び、四人の体にぶつかってその中へと吸い込まれたのだ。


「え……これ、なに……?」

 ユークが自分の手を見つめる。


「え、ちょっと、これって!」

 アウリンが驚いて立ち上がる。


「動ける! 体が軽くなった!」

 セリスが歓喜の声を上げる。


「そ、そんな……どうして!?」

 ルベライトが動揺する。


「魔族が動けるなら、皆を魔族にしてしまえばいいだけのこと! そんな能力を持つモンスターを生み出したのじゃ!」

 テルルが汗を垂らしながらにやりと笑った。


「そ、そんなこと! 魔族の生成にそこまでの力はないはず!」

 ルベライトが叫ぶ。


「知らん! 出来たのじゃ! それに――いいのか?」

 テルルが首でルベライトの背後を示す。


「はぁ!? なにを――」

 怒鳴りながら振り返るルベライト。


 そこには――


「くらえっ!」

 槍を大きく振りかぶったセリスの姿があった。


「なっ!?」

 ルベライトが剣を盾に構えるが、セリスの一撃はそれを叩き割り、肩口を深く斬り裂く。


「がああっっっ!!!」

 血を流しながら、ルベライトはよろめき、それでもなおセリスを睨みつけた。


「魔族なら……妾に攻撃できないはず……なぜだ!」


 テルルが答える。


「魂だけ人間であるワシがこれだけ抵抗できるならば。体の一部を魔族化しただけのユークたちなら、十分戦えると思ったんじゃ!」


 それはテルルにとっても賭けだった。


 どの程度魔族化すれば抵抗できるかは未知数だったが、あえて“最小限の魔族化”にとどめていたのだ。


 魔族成分を多くすれば、逆にルベライトへ逆らえなくなる危険があったからだ。


「ぐっ……うううっ!!」

 ルベライトが悔しげに歯を食いしばる。


「終わりっ!」

 セリスが容赦なく槍を振り抜いた。


 ルベライトの身体は真っ二つに裂かれ、声を上げる間もなく崩れ落ちる。


「やったわ! セリス!」

 アウリンが喜びの声を上げる。


 やがて、ルベライトの体は光の粒子へと変わり、静かに消えていった。


「……これで、終わった。のか……?」

 ユークが息をつきながらつぶやく。


『まだです、マスター!』

 アンの警告が響いた。


『あの女の言葉を思い出してください! テルルさんを“子”と呼びました。そして四十九階で戦った男も、魔獣の力で同胞を魔族に変えると言っていました!』


 アンの声が鋭く響く。


 ルベライトの体が変化した光の粒子は、“魔獣”の石像へと吸い込まれていった。


『つまり――あの女は“魔獣”の依代、もしくは……』


 石像の目が、かすかに瞬いた。

 表面の石が崩れ落ち、下から生々しい皮膚が現れる。


『“魔獣”そのものです!』

 アンの叫びと同時に、魔獣が咆哮を上げた。


 その姿を前に、ユークたちは息を呑み、ただ立ち尽くすしかなかった。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.50)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

EXスキル2:≪思考分割≫

備考:目の前で仲間が傷つけられたのに、動けない。そのことは何よりも辛く、苦しかった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.50)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

EXスキル3:≪スキル・ラーニング≫

備考:動けると分かった瞬間、ノータイムで殺しにかかった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.50)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:余りに至近距離だった為、『イグニス・レギス・ソリス』を使用すると自爆になってしまうため、使えなかった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.50)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:物理的な圧力などでは無かったため、鎧自体を操ることで体を動かすことは出来た。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.44)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:大鎌の才(大鎌の基本技術を習得する)

EXスキル2:≪ソウルイーター≫

備考:怒りの精神で肉体を凌駕した。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アン(LV.2)

性別:女(精霊)

ジョブ:霊樹の管理精霊(若芽の腕輪に宿る)

スキル:霊樹の加護(ユークの全能力をわずかに向上させる)

備考:ユークのために何か出来ないか色々と考えていたが、結局なにも出来なかった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ルベライト(LV.??)

性別:女

ジョブ:??

スキル:??

備考:魔獣の精神体。ヘリオ博士によって復活された魔族の肉体に受肉していた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


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