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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第226話 テルルの奇策と精霊の最期

【アークガーディアン内部】


 通路を抜け、ユークたちが辿り着いた先は、広大な円形の空間だった。


 天井は高く、星の瞬きのような光を放つ魔石が埋め込まれている。


 その中央に、直径十メートルはあろうかという巨大な球体が、ゆっくりと宙に浮かんでいた。


 球体の表面は虹色に輝くクリスタルのようで、内部では、まるで心臓の鼓動のように紅い光が揺らめいている。


「あれが……こいつのコアか」

 ユークが小声で呟くと、その光の中から、鮮やかな真紅の長髪を持つ女の姿が浮かび上がった。


『ふふ……愚かな侵入者め。このアークガーディアンに触れようなど、身の程知らずにもほどがありますわ』

 影の塔の精霊コハクは、冷たい笑みを浮かべてユークたちを見下ろす。


 彼女の霊体はコアの輝きを吸収し、傲慢なまでに揺らめいていた。


「アイツが邪魔してきたっていう精霊か……」

 ユークは冷静に観察し、テルルは短く頷きながら、漆黒の鎌を構えた。


『マスター、あの精霊が取りついているコアを奪えれば、すべて終わります』

 アンはいつもより控えめに、だが確かな決意を込めて告げる。


 コハクが手をかざすと、コアを囲むように配置されていた数体の警備ゴーレムが一斉に起動した。石造りの巨体が地響きを立てて動き出す。


『侵入者を塵にして差し上げなさい!』


 ユークは即座にストーンウォールで壁を作るが、ゴーレムの攻撃は予想以上に強化されていた。


 勢いのままに突撃し石の壁を容易に粉砕する。


 そして、一直線にユークへと突進してきた。


「くっ……!」

 回避が間に合わない。その瞬間、テルルがユークの前に躍り出る。


『やりなさい!』

 ゴーレムの拳がテルルの身体を直撃する。


 テルルは枯葉のように跳ね飛ばされ、壁に激突して動かなくなった。


「テルルーーッ!!」

 ユークの悲痛な叫びが空間に響き渡る。


『ま、マスター! テルルさんが……!』

 震える声で、ユークを見るアン。


『オーホッホッホッ! あらあら、わたくしのゴーレムの方が強かったようですわね!』

 コハクは高笑いしながら勝ち誇る。


「くっ!」

 向かってくる警備ゴーレムを何とかかわしながら部屋中を逃げ回るユーク。


『前衛を失った魔法使いなど、もはや敵ではありませんわ!』

 勝利を確信した彼女はもうユークたちを脅威と見なしていなかった。


『さあ、ゆっくりと始末しましょうか。うふふ、マスターにいい報告ができそうですわぁ!』

 恍惚の表情を浮かべるコハク。


 ユークは、ろくな反撃も出来ず、無様に逃げ回ることしか出来ない。


 しかし、彼の目は諦めてなどいなかった。

(……頼むぞ、テルル)


 床に散った光の粒が、静かにコハクの背後へと集まっていく。


 光の粒は、やがて一つに集まり、人の姿に変わる。


 それは警備ゴーレムにやられ、壁に叩きつけられたはずのテルルだった。


 コハクはそれに気づかず、勝利の余韻に浸っている。


『ふふ、やはり人間など――』


 その瞬間、テルルが小さく囁いた。


「油断しおったのう、精霊よ」


 コハクが振り返る間もなく、テルルの手に握られた大鎌が彼女を両断する。


『きゃああああっ!?』


「行け! 魂喰い虫たちよ!」

 さらに三匹の魂喰い虫が切り裂かれたコハクに向かって飛んでいき彼女の霊体を食い荒らす。


『な、なにを――!? 痛いっ……やめなさい!!』

 霊体を直接喰われ、コハクは動揺と苦痛でコアの制御が乱れる。


「今だっ! ストーンスタンプ!」

 ユークはあらかじめ用意していた魔法で、警備ゴーレムたちを粉砕する。


『よくも……“前の私”をいじめてくれましたね……!』

 ユークの腕輪から飛び出したアンの声は、怒りと悲しみをまじえて震えていた。


『お、お前はっ! そうか…… お前がわたくしの邪魔をしていたのね! よくもっ!』

 コハクの表情が、恐怖と憎悪に歪む。


『でももう終わりです! これで――!』

 アンが詠唱と同時に、緑の魔法陣を展開した。


『ぐっ! あれをくらったらまずい……! 早く逃げなければ!』


 逃げようとする、コハクをテルルが阻む。


「させると思うか?」

 退こうとしていた彼女を、その命運を断ち切るように鎌の刃が連撃を浴びせた。


『がっ……ああああっ!! ま、まずいっ! このままでは――!』


『貫きなさい、《ニードルヴァイン》!』

 アンの魔法陣が眩く輝き、そこから無数の(つる)が生まれる。


 それは槍のように鋭く変化し、迷いなくコハクへと突き刺さった。


『ま、待ちなさい! わたくしは――あなたごときが……!』

 その言葉は最後まで続かなかった。


 (つる)の一撃が霊体の中心を貫く。


 胸の奥にある“核”が砕け、コハクの身体が霧のように散り始める。


『……マス……ター……』

 かすかな声が空気に溶け、コハクの姿は淡い光の粉となり、静かに消滅した。


 その断末魔の声だけを残し、赤の精霊は完全に消滅する。


「アン、コアのほうは!?」


『掌握開始……! 制御権、移行中……成功です!』

 アンの宣言と同時に、アークガーディアンの動きが完全に停止した。


「やった……!」

 ユークは深く息を吐く。


「ふぅ、危なかったのう。まさかストーンウォールが破壊されるとは」

 テルルが鎌を肩に担ぎながら戻ってくる。


「心臓に悪いよ……本当に死ぬかと思った」

 ユークは苦笑した。


「うむ、ユークが無事で本当によかった」

 テルルが口元を緩める。


『お二人とも、お疲れさまでした。これで、アークガーディアンは私たちのものです』


 ユークは静かにコアを見上げる。先ほどまで紅く輝いていたコアは、今は穏やかな青白い光を放っていた。


「はぁ……ようやく終わったか。みんなを待たせちゃったな、すぐに合流しよう!」


 ユークは、戦いを終えた仲間たちの待つ場所へと、目を向けるのだった。


 ◆◆◆


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ユーク(LV.50)

 性別:男

 ジョブ:強化術士

 スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

 EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

 EXスキル2:≪思考分割≫

 備考:コハクの配下を倒してしまうと、戦わずに逃げられてしまうと考え、必死に倒すのを我慢して逃げ回っていた。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 テルル(LV.44)

 性別:男(女)

 ジョブ:氷術士

 スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

 EXスキル:大鎌の才(大鎌の基本技術を習得する)

 EXスキル2:≪ソウルイーター≫

 備考:わざとユークを庇って倒されるつもりだったが、結果的に本気で庇う形になってしまった。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 アン(LV.1)→(LV.2)

 性別:女(精霊)

 ジョブ:霊樹の管理精霊(若芽の腕輪に宿る)

 スキル:霊樹の加護(ユークの全能力をわずかに向上させる)

 備考:コハクを倒したことで、彼女が持っていた影の塔に関するいくつかの権能を奪い取ることに成功した。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 コハク(LV.??)

 性別:女(精霊)

 ジョブ:影の塔の管理精霊

 スキル:??

 備考:霊樹の精霊の複製体。もともと彼女が失われても《賢者の塔》が機能するよう設計されているため、影の塔にも即時の影響はない。ただし、敵の行動を大きく弱体化させたことは確かである。

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