第223話 それぞれの戦場
【アークガーディアン内部】
アークガーディアン内部の通路を、ユークたちは全力で駆け抜けていた。
「アン、本当に外のようすは分からないの?」
ユークが息を切らしながら問いかける。
『……ごめんなさい、マスター』
アンの声は、どこか悲しげだった。
「いや、いいんだ。ゴメン、俺もちょっと余裕がなくて……」
ユークは苦笑し、申し訳なさそうに目を伏せる。
外で戦っている仲間たちのことが、どうしても頭を離れなかった。
「ヤツの言ったことが本当かどうかは分からん。だが今は、コアとやらにたどり着くことが先じゃ!」
隣を走るテルルが短く言い放つ。
「……分かってるよ。でも――」
「むっ! 敵じゃ!」
テルルが声を上げる。
前方の通路から、小型のゴーレムが現れた。
アークガーディアン内部を巡回する警備機構――小型の防衛ゴーレムだ。
『またですか!?』
アンが嫌そうに声をあげる。
「《ストーンブレイカー》!」
ユークの詠唱と同時に、圧縮された石弾が放たれ、ゴーレムを粉砕した。
「ずいぶん早く魔法を組み上げられるようになったのう」
テルルが感心したように言う。
「うん。新しく覚えたEXスキルのおかげだよ」
ユークは小さく頷いた。
――EXスキル、《思考分割》。
一つの脳で二人分の思考を同時に行うことができる能力。
つまり、無詠唱魔法の構築速度が二倍になるということだった。
「待っててくれ、みんな……!」
ユークは焦燥を胸に、暗い通路を駆け抜けていった。
【アークガーディアン外部】
外では、セリスとディアンの激しい戦いが続いていた。
二人は暴走したエンシェントゴーレムの上を、飛ぶように駆けながら刃を交えている。
「これでっ!」
セリスが渾身の突きを放つ。
「ちぃっ!」
ディアンの剣が弾かれ、一瞬の隙が生まれた。
「『スラストランス』!」
セリスの槍が光をまとい、疑似EXスキルが発動する。
だが――。
「いいのか? 俺に何かあったら、中のガキがどうなるか分からねぇぜ?」
ディアンの低い声に、セリスの動きが止まる。
「っ……!」
セリスは攻撃の軌道をずらし、ディアンをかすめる形で槍を振り抜く。
その代償に、大きく体勢を崩した。
「ははっ! 次は俺の番だな!」
ディアンの腕が異形に変化し、蠢く筋繊維が露出する。
「その腕……人間のものじゃない!?」
セリスが息を呑む。
「見ろよ、いい腕だろう?」
嘲笑とともに、その腕が振り下ろされる。
衝撃波に吹き飛ばされたセリスは、遠く離れたゴーレムの上に着地した。
「……っ!? アウリン! ヴィヴィアン!」
その先にいたのは、無数のエンシェントゴーレムに囲まれ、防戦一方のアウリンたちだった。
【数分前】
アウリンとヴィヴィアンは、限界に近い戦いを続けていた。
巨大なゴーレムの拳が、半透明の盾を粉砕する。
「きゃあっ!」
アウリンが叫ぶ。
「大丈夫!? アウリンちゃん!」
ヴィヴィアンが盾を構えながら振り返る。
「問題ないわ、盾が一枚壊れただけ!」
アウリンは必死に声を張り上げる。
「よかった……でも、この数は……」
ヴィヴィアンが周囲を見回した。
十体を超えるゴーレムが、赤黒く光る目を輝かせて包囲している。
(とにかく数を減らさないと!)
アウリンは詠唱を続けた。
「《ヴォルカニックランス》!」
灼熱の槍がゴーレムの足を貫き、マグマが急速に冷えて脚を拘束する。
だがその背後から、新たなゴーレムが現れる。
「はぁ……キリがないわ!」
アウリンが額の汗をぬぐう。
再び盾に亀裂が走る。
「アウリンちゃんっ!……このままだと、インヴィンシブルシールドが持たないわ!」
ヴィヴィアンの声が焦りに震えた。
「《ヴォルカニックランス》!」
アウリンの魔法が続けざまに放たれるが、破壊してもすぐに補充される敵の群れ。
「このままだと本当に……!」
アウリンの視線が揺れたその時――。
爆風とともに、ひとりの影がゴーレムの列を貫いて着地した。
「セリス!」
アウリンが声を上げる。
「……っ!? アウリン! ヴィヴィアン!」
二人を見たセリスが驚いた表情を浮かべた
「二人とも! 無事でよかった!」
セリスが笑みを見せるが、すぐに周囲を見て顔をしかめた。
「えっ? なんで、このコ達が敵に……?」
「説明は後よ! 今は生き残ることを考えて!」
アウリンの声が鋭く響く。
「セリスちゃんっ! 後ろっ!」
ヴィヴィアンの叫びと同時に、セリスは反射的に槍を構えた。
「ぐっ!」
ディアンの剣撃を辛うじて受け止める。
「おいおい、てめぇの相手は俺だろうが!」
異形の男が嘲笑しながら迫る。
追い詰められたセリスの耳に、遠くから聞き覚えのある声が届いた。
『セリス! 俺は無事だ! 好きにやれっ!』
ユークの声――アークガーディアンの内部から響く、確かな仲間の声だった。
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ユーク(LV.50)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫
EXスキル2:≪思考分割≫
備考:外の仲間の安否を気にかけながらも、必死に声を届けて皆を奮い立たせた。
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セリス(LV.47)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪タクティカルサイト≫
EXスキル2:≪ブーステッドギア≫
備考:ユークの声を聞いたことで迷いが消え、心の底から本気で戦えるようになった。
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アウリン(LV.48)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫
EXスキル2:≪コンセントレイション≫
備考:攫われたユークといくら倒しても減らない敵に、絶望感を感じていたが、、ユークの声に希望を取り戻し、再び炎を燃やした。
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ヴィヴィアン(LV.47)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫
EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫
備考:減り続ける盾の残量に恐怖を覚えていたが、ユークの声を聞き、心の奥で勇気が再び灯った。
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テルル(LV.44)
性別:男(女)
ジョブ:氷術士
スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)
EXスキル:大鎌の才(大鎌の基本技術を習得する)
EXスキル2:≪ソウルイーター≫
備考:ユークの魔法を信じ、無理に前へ出ず、後方で冷静に状況を見守っていた。
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アン(LV.1)
性別:女(精霊)
ジョブ:霊樹の管理精霊(若芽の腕輪に宿る)
スキル:霊樹の加護(ユークの全能力をわずかに向上させる)
備考:ユークの為に彼の声を外に届けることに努めた。
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ディアン(LV.??)
性別:男
ジョブ:剣士
スキル:剣の才(剣の基本??術を習得し、剣の才??をわずかに向上させる?
EXスキル:≪エアスラッシュ≫
EXスキル:≪ビーストソウル≫
備考:ユークは自分たちの手の内にあると思っていたので、突然の彼の声に冷や水を浴びせられたような衝撃を受けた。
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